エピローグ
我は一心不乱に光の道を進んだ。憧れの地で良き友を得られ名残惜しさはあったが、我を待つ命の声に早よ帰ってやらねばと気持ちも焦った。まだ間に合う、また共にあれると思うとこの上なく幸せで見捨てようなどと思った自分が一瞬でもいた事が信じられない。だが、それも必要な事であったと友が教えてくれた。
ゴルトアウルムクリューソスに着くとあまりの状況に胸が痛んだ。地が荒れ、大水が襲い、人の立てるところはほんの僅か。我を補い増やそうとこの星がした事と思うと、不浄を祓うためとは言えこの地を離れる選択が正しかったのか、、。
だがこの繰り返しも此度で終わりだ。我が導き、共に不浄を克服する時が来たのだ。きっと命達は我を恐れるだろう。だが地球の友とは出来たのだ、言葉を交わしその思いを知り我の思いを伝える事が。我の命達とも出来るはずだ。
僅かに残る大地に着地するとそこには手を取り合い弱きものを支えて立つ人々があった。我を恐れるように後ずさったり腰を抜かしたりしているが、その者達を守るように我との間に立つ者もあった。何と、他者を知った者達がおったのか。いや、この危機がそうさせたのか。
「何者だ!?」
先頭に立つ金色の瞳を持つ男が勇ましく声を上げよる。我を再び呼んだのはこの者であったか。つい嬉しくなり目を細めてしまう。
「わ、笑って、るのか?」
『ゴルトアウルムクリューソスの皆、此度は良く耐えた。他者を思い尊ぶ事を学んでくれた事、嬉しく思う』
我の声に驚き中には怯えて悲鳴を上げる者もあった。だが我と対峙する男は恐怖心を抑え堂々と目の前に立っておる。なかなかの度胸と責任感の持ち主だ。この男ならと思えた。
『この者を王とし、この地に国を造るように。他者を敬い弱きを助け、共に歩む国だ。他者を踏み躙り私欲に溺れる者が溢れれば再び我は此処より去ろう。さすれば大地は荒れ水が襲う世を迎えることとなる』
「あんたは、いや、あなた様は一体…」
『我はユエ。この世界であり、この世界を見守り照らし導く者』
そう言うと人々から「神だ」「神様?」という声が上がる。
『我の言葉に従うのならこの震える地と襲いくる水を鎮めよう』
「おお、お願いします!」
「どうかお助けください!」
我の言葉に縋るように人々は頭を下げ懇願する。我は今もなお対峙する男を見据える。
『どうするのだ?』
「俺が、王って、そんな、、」
力強い眼差しを持つのに少したじろぐ様子は好ましかった。己の事を良く分かっている証拠だ。私欲ではなく、皆を思って悩んでいる。我はただその男の目を見つめ決断を待った。
「ザガンさん!」
「ザガン様!我らをお救い下さい!」
「ザガン!頼むよ!」
自分勝手に叫ぶ者達もおるが我こそが王だなどと愚かな事を言う者はこの中にはなかった。更には、共に建国を支えると誓いを立てる者も多々おった。これまでには見ることのなかった光景だ。
男は再び我と対峙すると片膝を着き跪き首を垂れ宣言した。
「このザガン、神命を拝し王となりましょう。他者を重んじる国となると誓います。ユエ神様、どうか地の怒りをお鎮め下さいませ」
ザガンの後に続き人々も地に平伏した。
『良かろう、期待しておるよザガンよ。迷う時もあろうがその時はいつでも我の名を呼べ。皆もな』
それだけ告げて空へと舞い上がり荒れる大地や大水の上を飛び金の気を与え鎮めて回った。他者の存在を知った命達は手を取り合い、建国へと向けて歩み出した。建った城内には我との親交の証に我を祀る神殿を造り日々そこで祈る声が聞こえる。我もその神殿にて時折羽を休めておる。
「そう、それは良かったわね」
「めでたし、めでたしだな。しかし何でまたこうやって此処に来てるんだ?」
「そうよ、此処は繋げるのが難しいって言ってたじゃない」
『言ったであろう?我は忘れん、何もと。この地への繋ぎ方もしっかりと覚えて帰ったからの』
「ふっ、そうかよ」
雄真は相変わらず小憎たらしく笑いよる。
「ユエが此処へ来ている間はあちらは大丈夫なの?」
『嵐くらいは起きてるだろうが、ちとお痛が過ぎたでの、仕置き中じゃ』
「おお、怖っ!」
「本当。私達も神様を怒らせないように気をつけなきゃね」
その時、元気な赤子の鳴き声が響き千歳がそちらへ飛んで行く。つられるように重なる鳴き声に雄真も足を向けた。
「悪いなユエ、ちょっと俺も行ってくる」
『構わんよ』
ゴルトアウルムクリューソスが落ち着き再びこの地を訪れてみたら、二人が赤子を抱えているのには驚いたが、どれ、我もあやすのを手伝ってやるとするかの。赤子にはこの方が良かろうと思い、幼な子の姿から千歳の言う毛玉の姿となり二人の後を追った。
End
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