3-2
ユエの決断を尊重して私たちはこのまま当初の目的地を目指す事にした。
『このまま進んでくれ』
「良いんだな?」
『ああ、この先の金の気は強い。昨日の地に行けば完全な回復まで届くがこの先の金の気も同じ程に強い。同じ地から連日気を分けて貰うのも出来れば避けたいしの。それに昨日の地へと向かうよりはその方が早いのだろ?』
「距離で言えばそうだ。しかし、、」
ユエがこのまま進めと言うなら私に異論はなかった。だが雄真はまだ何か気掛かりがあるようだ。
「何か気になる事があるの?」
「金鶏山に向かっていいものかって思ってな。進行方向には金色堂もあるんだ。強い気って言うのがどこからなのかを定めて進めたら良いんだろうが」
進行方向には金の強い気があるのは間違いない。だが、まさに金の気を纏っていそうな金色堂からという可能性もある。金鶏山の話は伝説でしかなく、金の気がそこに満ちているか定かではない。
「ユエ、金鶏山と金色堂のどちらに行けば良いかは分からない?」
私の問いにユエはまた考えるように黙り込む。気というものを読んでいるのかもしれない。運転をしながらも雄真もミラー越しにその様子を見守っていた。
『山の方に行ってくれ』
やがてユエは決断し口を開くが、ハンドルを握る雄真はその決断を受け入れる事が出来ない様子だ。
「俺が言い出したことだが、そこに金が眠る保証はないんだぞ」
「でもユエには気の発せられる場所がわかるんでしょ?ユエが言うんだから、、」
『いや、その場所を知らぬ我では定められはせん』
私の言葉を遮るようにユエは言った。
『だが、山でいい。我のために二人が行くと決めた地に連れて行ってくれ』
ユエの言葉に私も雄真もやはり決断しきれなかった。私たちのただの考察がユエにとって取り返しがつかない事態を招いてしまいかねない。そんな私たちの様子に硬い表情をユエは少し崩した。
『案ずるな。何があっても千歳達のせいではないんだよ』
「…」
「…」
言葉のない私たちにやれやれと、今度は悪戯っぽい表情で言う。まるでいつも雄真を揶揄う時のように口角を上げて。
『さては金色堂とやらに行って我をさっさと帰して、二人だけで山にも立ち寄るつもりだな?今更仲間はずれにするでない。可能性の低い方に行けば、どちらにも連れて行ってもらえるかもしれんからな。その方が楽しそうだ』
「ったく、心配してやってるのに。分かったよ!山に行ってから文句言ってきても知らんからな!」
雄真はユエの茶化しに乗ってあげて車の進行方向を金鶏山へとしっかりと定めた。ユエはそんな雄真に分かれば良いのだと言って笑っている。私の方にも安心させるように笑ってくれた。その顔を見て不安がよぎったが、雄真も堪えたのだからと私も笑顔で返した。ちゃんと笑えていた自信はない。




