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少し不機嫌な私に二人してやれやれと言った表情をつくる。本当、仲良くなっちゃって。
「それで?博識な雄真さんは、よりユエに適した場所をご存知かしら?」
「そう怒るなよ」
私の大人気ない態度に雄真は苦笑いしているが、気を取り直して話を続けた。
「でもまあ、そうだな。いくつか心当たりはある。明後日は月曜だし千歳も休みなんだろ?」
ムカムカが収まらない私は口を引き結んだまま、ただ首肯で答える。
「それなら遠出も出来るな?」
「別に良いけど?何処に行こうって言うの」
不機嫌でいても仕方ないので気持ちを落ち着かせて雄真の考えを聞く姿勢になる。
「平泉」
雄真の言う平泉はお隣の県だが、車なら一時間ちょっとの場所だ。かつては奥州藤原氏が栄え、義経とも縁があり歴史的に有名な地だ。世界遺産にも登録され金色堂や中尊寺といった貴重な建物が自然の中に厳かに佇む様は神秘的である。
「確かに、自然豊かな場所よね。大きな川も近くに流れてるし、金色堂なんて金の属性そのものって感じだし良いかも。…でもちょっと待って。確か藤原四代、いや三代だったかな?そのミイラが安置されてるんじゃなかった?ご供養はもちろんされてるんだろうけど、ユエにとってはどうかしら」
平泉の地に眠り、今もなおその地を見守る存在なのだと思う。でもやはり「死」に近づくのはどうなのだろう。ユエは何も言わずに話の成り行きを見守っているが。
「いや、行くのは寺じゃなくて山だ。金鶏山」
「金鶏山?」
馴染みのない山の名前に頭をひねる。金の鶏って名前はユエにぴったりな山のようにも思うが。
「奥の細道にも出てくる山だぞ?一晩で築いたとか逸話がありそんなに高い山じゃない。それと、黄金の鶏が二体埋まってるとも言われてるんだ」
「鶏を埋めるって、まさか生贄的な!?」
雄真は歴史物を好んで読むから奥の細道だとか、義経だとかにも詳しい。しっかり知識マウントを挟んでくるが、それは気付かぬふりをして衝撃的な逸話の方に私は思わず声を大きくしてしまう。生贄なんか、ますますユエを近づけるのは良くないと思う。
「いや、まさか。かつては平泉は金を朝廷に献上する事もあった金の産地でもあったんだ。平泉の地の守護を願って作った金の鶏を雌雄一対埋めたとの伝説がある。周辺の発掘調査もされているが、その鶏は見つかっていないんだ。土に眠る金、ユエの力になりそうじゃないか?」
「なんだ、そう言う事。それならまあ、確かに」
本当に金の鶏が埋まっているかは分からないが、金脈のあった地と言うだけでユエには良さそうだ。
「ついでに、途中にある川下りにも寄ってさ。昔、夏休みにうちの親父に連れて行ってもらったろ?猊鼻渓の川下り」
「ああ!行った行った!渓谷だけあって夏でも涼しいのよね。船頭さんの地元訛りのガイドがまた良い味出してたわ。あとなんだっけ?何か投げるやつ」
「運玉な。対岸の岩穴に上げたい運の書かれた玉投げるやつだろ?」
「そうそう!入れば運気アップとか、何処にでもあるけどついやっちゃうのよね」
『して、そこは我の力になるのかの?』
思い出話に花を咲かせ始めた私達の思考にユエが割って入る。ユエの力になる場所の相談なのだ、脱線のしすぎは良くなかった。
「ええ、きっとなると思う。自然の力を感じる岩肌にそこを流れる川はとても澄んでいて水中の魚も見えるほど清らかな流れよ」
「そんな水の上を船で進むんだ、「気」とやらも存分に取り込めるんじゃないかな」
『ふむ、それは良さそうだの』
ユエも納得した様子だったため明後日は川下りをしながら平泉を目指す事に決まった。




