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「毛玉さんのいるべき世界について聞いてもいい?」
『構わんよ。話さねば、我について語る事にならぬしな。そこはここと良く似ておる。手本にしたからな。だが、まるで違う。生まれたての赤子ゆえ、仕方のない事だが』
「生まれたて?出来て間もない世界という事?」
手本にしたって、地球が他にも存在するような感じだろうか。太陽を挟んだ対極にこの地球の周回軌道を進むもう一つの地球が存在するかもしれないという話を思い出した。けして交わらず、見る事が出来ないから無いと証明する事も出来ない。これを聞いた時は子供だったがとてもワクワクしたものだ。
『ああ。命が進化をし、やっと文明が出来た。我は命達の歩みを見守り、助け、導く者だ。その果てに、我らはここと同じ領域に達すると信じている』
「あなた、神様なの?」
『そうであるがそうでは無い。我は小さき命達そのもので、その世界そのものだ』
うーん、分かるような分からないような。人の体には多くの細胞が生まれ消えている。それぞれの役割を果たすその様子は、地球を生きる私たちのようで、細胞からしたら私の体が地球であり世界と言える。では毛玉さんは世界であり、そこに生きる命の全てであるという事だろうか。無い頭でごちゃごちゃ考える私を毛玉さんは楽しそうに眺めていた。
『本に複雑な物の考え方をしよる。そのように思考する者がはよ我がうちに生まれて欲しいものだ』
「ちょっと!私の考えている事が分かるの!?」
なにそれ、恥ずかしい!今までの宇宙にあるもう一つの地球の事とか、正義だ悪だとかも聞いていたのだろうか!?私には毛玉さんの意思なんて何も分からないのに不公平じゃない!
『くく、すまぬな。我の羨望する世と対峙出来たものだから我慢ならなんだ。もう勝手に思考を読むのはやめると誓おう』
「そうしてちょうだい!」
出来た人間じゃないと自覚してる。残念ながら私の脳は素晴らしいことばかりを思考する脳ではないのだ。善い人でありたいとは思うが、世の理不尽に嫌悪し悪態をつくことだってある。自分の弱さに打ちのめされそうになる事だってある。とても人に覗かれてはたまらない思考に陥ることなんてざらなんだから。
「それで、毛玉さんが力を失うって何があったの?これまでも水の世界に行かなきゃならない程力を使う事があったてどう言う事?毛玉さんの世界は滅亡する危機にでもあるの?」
毛玉さんが世界そのものであるなら、ここにいる間や水の世界にいる間、その世界はどうなってしまうのか。
『今回ばかりはそうなってしまうかもしれなかった。人が生まれ、文明が出来たは良いが未熟すぎるがゆえ争いが絶えぬ。未熟な命は何者よりも優位になろうとする。憎しみ、怒りが増え、世は不浄に飲まれ、多くの命が弱る。闇に支配され他の命を奪う。その度に我が不浄を纏いその時空を離れ世の回復を待つのだ。そうなれば我の抑えが効かず大地は暴れ多くの命がまた失われる。辛い事だが、それがまた命を成長させるのだ。我の浄化が済めば再び我と我の命が共に歩みだすのだ』
何者かが毛玉さんを攻撃したのだと思ったが、それは毛玉さんの愛する世界の人々だったのか。それでも毛玉さんは彼らを守るため、魂のような存在になって不浄を一身に纏い水の世界で一人になる。それを思うと言葉が出なかった。
『我を憐んでくれるのか、優しい子よ。思考を読んだ訳ではないぞ?その顔を見れば分かるというもの』
言葉の出ない私に優しく言ってくれたが、毛玉さんはすぐに辛そうで自嘲するような表情になる。
『だが、そのような憐れみを受ける資格はないのだよ』
「え?」
『何度も何度も過ちを繰り返し、野が焼け地が割れてもまた過ちを繰り返す。もう、見放してしまおうかと不浄の広がるままにし、此度はもう、ただ眺めていたのだよ』




