第20話 大岩が蛇になる
こういう演出あるよね。
千鳥はシュヴァルと一緒に右のルートへと進んだ。
二人で並んで歩くのは大変で、シュヴァルを先頭にして千鳥がその後ろを続いた。
とりあえずカメラドローンがギリギリ通る広さはあった。
そのおかげで傷付けずに進んで行くと、だんだん道の幅が広がっていく不思議な構造が続いた。
千鳥は首を捻った。
ここではモンスターは出ないんだなと、ダンジョンが配慮してくれているかもと想像した。
だけどそもそもこの道がハズレで、延々に彷徨っているのではと恐怖を覚えた。
「シュヴァル……」
「ん? 如何したの千鳥」
「この道で合ってるのかな? 私、不安になってきた」
情けない一言をポツリと吐いた。
するとシュヴァルは「うーん」と唸るものの、すぐに切り替えた。
「なんとかなるよー」
アバウトな返だった。千鳥は(今はそんなことを言われたいわけじゃないのに……)と不服そうな表情になった。
けれどシュヴァルには流石にそこまでは伝わらず、ニヤニヤしながらとにかく右ルートを突き進むことにした。
「あれ?」
「如何したのシュヴァル……って、光ってる?」
すると目の前が少し開けてきた。
ただ道が広くなったわけじゃなくて、明らかに先が見えたのだ。
何で判ったのかは正直一発で、目の前が光っていて目立っていたからだ。
「目の前が明るくなってきたけど、何かあるのかな?」
「行ってみよ!」
「ま、待ってよシュヴァル! そんなに腕引っ張らないで!」
千鳥が疑問を抱くと、シュヴァルは行動あるのみだった。完全にブレーキはなく、アクセル全開の行動に目を見開いた。
千鳥は腕を掴まれた。ギュッと握り込まれると、ほぼ全力疾走で走り抜けた。腕がブンブン振り回されて、千鳥は肩が外れるんじゃないかと思ったけれど、千鳥の体は思った以上に丈夫なので、肩が外れることも筋肉の筋が引き伸ばされることもなかった。
「はぁはぁ。シュヴァル、えっ?」
「千鳥、何だか凄い所に出たよ」
千鳥とシュヴァルは固まった。目の前に広がる巨大な空間に圧巻してしまった。
まさかこんなに広い空間に出るとは思わなかったのだ。
天井はとっても高い。大きな岩もなければクリスタルも吊るされていないので、落石などは心配要らない。
周りには大きめの岩がポツンポツンと置かれていた。
まさかしたら何か出てくるのかもと、明らかに怪しい。
「シュヴァル、これってボス戦だよね?」
「うん。私も同じこと思ってたー」
千鳥とシュヴァルは警戒した。
もしかしたら一歩動くだけで敵が出てくるかもしれないのだ。
緊張感が全身を駆け抜け、ピリリと静電気が音を立てた。
「とりあえず調べてみよっか。千鳥も万が一に備えて武器を構えておいてよねー」
「う、うん」
ようやく竹刀袋の中から剣を取り出した。
革ベルトに納めると、キョロキョロ不安になりながら周囲を見回した。
とりあえずモンスターの気配はなかった。
大岩に近づいてみるものの、何も起きてはくれなかった。もしかしたら不安を撒いているのは自分だけ? 千鳥は考えすぎかなと思った。
「特に変な所はないね」
「うん。変なものは目の前にあるけどね」
シュヴァルは大岩を触っていた。
けれど何も起きないのはさっきも確認したから安心できるけど、何でこんなものが置いてあるかは違和感でしかない。
だってこんなに広い空間にモンスターが一匹もいないし、宝箱的なものも何もない。明らかにゲームだと容量オーバーで没になった空間にしか見えなかった。
「絶対に何かあるよ!」
根拠はないけれど嫌な予感がプンプンした。
しかしシュヴァルは首を捻ると、「うーん」と唸り声を上げた。流石にまだ何も起きていないのに、軽率に判断を下すのは良くないと思ったのかもしれない。
「千鳥は心配しすぎだよー」
「心配になるよ。だって、怖いもん」
千鳥は膝がまだ震えていた。
本当は早く帰りたかったけれど、シュヴァルは全く気にせずに周囲を見回した。何か手掛かりみたいなものがないか探したいると、大岩に変な絡みを見つけた。
「何これ?」
三角形の形をした明らかに自然生成ではない窪み方をしていた。
まるで生き物の模様のようだけど、指先で軽くなぞると不気味に滑らかで質があった。
シュヴァルは目を細めると怪しみ、強く押し込むとブヨンと脂身のような感触がガントレットのしなやかな金属の鎧に伝わった。
「ちょっと待って!」
「如何したの! うわぁ!」
シュヴァルが叫んだ。
千鳥は慌てて駆け寄ろうとしたが、その瞬間大岩が動き出した。
ガタガタと大きく揺れる。
するとシュヴァルは千鳥を抱えて急いで距離を取ると、大岩の形が変形した。
何故か縦に伸び始め、見上げる程になる。
千鳥とシュヴァルは距離を取ったはいいものの風圧を感じ、変形したその姿を一言で例えた。
「へ、蛇?」
「何これー。でっかい蛇」
そこに現れたのは巨大な蛇。
大岩が何と大蛇に変貌し、千鳥達の目の前に現れたのだった。
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