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女子会

「ジュリエッタ様、実に痛快でしたわね、私胸がすっとしました。

特に差に後のあのセリフ。」


さも愉快そうにルイ―ザが行った。


「私はそれどころじゃ無かったわ。

とにかく逃げきれてホッとした。」


「でも、ジュリエッタ様はもう追われないで済みそうですね。」


私達は、グレゴリーに向かう馬車の中で話に花を咲かせていた。

おじい様のお屋敷に着くには、少し時間が有るからと、

馬車の中では、中央に小さなテーブルを置き、

そこにお茶とお菓子を広げ、いわゆる女子会の真っ最中だ。


「スティールの見張りはアルフレードさんにお願いしたから、

当分は大丈夫だと思うわ。」


「では、この先どうなさいますか?

ご実家に帰られても、もう大丈夫なんですよね。」


「ルイ―ザ、私はそれほど無責任じゃ無いわ。

自分の都合で生徒を放り投げるつもりは有りません。」


生徒が私を必要とする限り、先生としてあそこに留まるつもりだ。


「エトワール伯爵さまは、

出来れば自分の手元で暮らしてほしいとお思いですよ。

その方が安全だと思っていらっしゃるようです。」


そう、ローナとブレットさんがおじい様の願いで、

私の傍に派遣されたとの報告は、先ほど謝罪と共に受け取った。


「でもローナ、スティール様はもうジュリエッタ様に近づかないだろうし、グレゴリーで暮らさなくても大丈夫じゃない?」


「そうですね、残念です。

でもスティール様は、そう簡単ジュリエッタ様に近づけませんよね。」



「そうよね下手に近づけば、またジュリエッタ様のお叱りが目に見えているもの。」


「ルイ―ザ、私はそんなに狂暴じゃ無いわ。」


私は清く正しい淑女です。猫被ってましたけど。

ただ、不正、不平等、嘘、とにかく悪い事が嫌いなだけです。


「我慢できる時は我慢して来たけど、

今回はさすがに我慢の緒が切れたわ。

自分の希望ばかり並べただけで、

結局私には悪い事をしたって気持ちが無かったって事でしょう?」


「そう言う事ばかりでは無いと思いますが、

さすがに恋焦がれたジュリエッタ様を目の前にして、

テンパったんじゃ無いんですか?」


「そ、そんなのどうでもいいわ。」


恋焦がれたって何よそれ。恥ずかしいわ。


「それより、ローナっておじい様がよこしたんでしょう?

夫婦一緒なんて、良かったわね。」


「あら、私たち夫婦じゃ有りませんよ。」


「「えぇ~~~。」」


「夫婦一緒に仕事しているなんて、そんなに都合よくいませんって。」


「そうなの?」


私は、二人は夫婦だとばっかり思っていたから驚いた。


「だって、二人はとっても仲が良かったから、全然疑う余地が無かったわ。」


ルイ―ザも同意見の様だ。


「演技ですよ。

さり気なくジュリエッタ様の護衛に当たる様にとの依頼でしたから。

悟られないように頑張ったんです。」


「でも、たとえ仕事とはいえ一つ屋根の下に、男女が一緒に住むって……。」


うん、私もその辺興味があるわ。


「仕事ですからね。

そんな事いくらでも有りますよ。

さすがに、もし誰かが家の中を見た時、

怪しまれないように新婚家庭の装いをしてありますけど、

鍵は付いていませんが、寝る部屋も寝室と客間で別々ですし、

そんな事には絶対なりませんから。」


「そんな事って、どんな事?」


「えっ。」


「だーかーら~。

恋愛感情とか、ちょっとでも好意を持っているとか~。」


「そ、そんな事無いですよ。

任務ですから。

そっち方面にうつつを抜かす訳には行けません。」


「でも、本当に仲良く見えたけど、

ローナはブレットさんの事、何とも思っていないの?」


「そ、そりゃぁ、長い付き合いですし、尊敬できる人ですし、

き、嫌いじゃ有りませんけど……。」


おっ、なかなかの反応じゃ有りませんか。


「じゃあさ、もしブレットさんがローナの事が好きだったらどうする?」


「そんな事有りませんよ。

わたしなんてまだまだですし、先輩だって彼女いるし。」


「「いるの~。」」


「あっ、ごめんなさい、いたの間違いでした。」


「いたんだ。でも、ここに来てからはいないんでしょ。」


「そりゃぁ、任務中ですからね。

ナンパするなんて、そんな暇ないですよ。」


「でも、仕事に行っている時……は無理か。

仕事に行く振りして、ジュリエッタ様を見張っていたものね。」


「申し訳ありません。」


「しょうがないわよ、それも仕事だから。」


「でもローナ、ローナはブレットさんの事をどう思っているの。」


「先ほども言いましたが、とても尊敬していますよ。

話も意外と合いますし、結構フェミニストですね。

よく私を見ていてくれるっていうか、気に掛けてくれてるみたいです。

たまにお土産を買ってきてくれたり、食事の支度も私任せにしないで、

自分で料理もしたり、私の好きなメニューも良く作ってくれるんですよ。

それがまた、私の作る物よりおいしかったりして。

それってちょっと悔しいですよね。」


「ルイ―ザ。」


「はい、ジュリエッタ。」


「これは惚気と言うんじゃなくて?」


「はい、完璧に惚気に聞こえます。」


「なっ、何ですかそれ。」


無自覚ですか。


「ローナにアドバイスです。」


「へっ?」


「多分ブレットさんはローナの事が好きだと思います。」


「私もそう思います。」


「そんな馬鹿な。」


「いいえ、間違い無いわ。

見ていれば分かるもの。」


「そうそう。

だってブレットさんがローナを見る目って、本当に優しそうだもの。」


「いえジュリエッタ様、あれは愛しそうと言うんです。

スティール様の目と同じです。」


「止めてルイ―ザ。」


「失礼しました。

でもローナ、あの目は本気の目よ。

今度注意して見てごらんなさい。」


「えっ、えっ、だっていつも見ているから、

何と比較すればいいか分かりません。」


「そうか、いつもあの目でローナを見ていたんだ。

ふ~ん、そうか、そうなんだ……。

ジュリエッタ様、ブレットさんて、

かなり前からローナの事を好きだったんじゃ無いんですか?」


「きっとそうね。」


「そ、そんな事有りえません!

だって、ここに来る直前に、彼女に振られたって言っていたんですよ。」


「そうなんだ。

ジュリエッタ様、これは何か有りますね。」


「きっとそうだわ。」


「ジュリエッタ様~~。」


そうしてコイバナは、エトワール伯爵家に着くまで続くのであった。



(当のブレットは前の御者席で、自然と耳に入って来るその話を、

真っ赤になりながら聞き耳を立てるのであった。)

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