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ある日の日常

生徒の数は30名、それ以上は断ってもらった。

男子生徒のクラスをまず1クラス。

人数は10人も集まった。


女子クラスは2クラス。

同じく10人ずつだ。


男子のみの勉強は、ダールさんにお願いした。

ただし、自前のアシスタント付きだ。

女子クラスの担当は私だけど、ルイ―ザにアシスタントをお願いした。

これで何とかなるだろう。


ダンスのレッスンなどは男女合同で行うけれど、

どうしても男子の方が出席が多くなってしまう。

だが、それは難なく男子には受け入れられた。

やっぱり女の子との出会いは嬉しいんだと見たぞ。


クラスの組み合わせも時間その他を考慮し、

午前のクラス、午後のクラスに分けたりして、何とか調整をした。

スカーレットは突貫工事で、ホールの拡張をしてくれた。


で、本格的に教室始動だ。

ちなみに教室名は、

マーガレットのマナー講座と、何とも中途半端な名前となった。


「よろしくお願い致します。」


10人の女子と共に、カーテシーをとる。


「では今日はテーブルマナーでしたね。」


出張のボーイさんがスタンバっている。

同じく出張のシェフは、既に調理に取り掛かっている。


一人一人、ボーイさんの助けられながら席に着く。


「では、まずテーブルをご覧下さい。

一般的な会食の形式をとらせていただきました。

自分の前に並べられた食器類は、すべて使われます。

まず、一番外側に並べられたカトラリーは………。」


余り説明が長くなっても、せっかくの料理が冷めてしまう。

シェフとの連絡係のボーイのサインを見ながら、必要な説明をしていく。


途中色々な問題も発生したけれど、何とかその授業を終わることが出来た。



「終わった~~~。」


私は控室のテーブルに突っ伏して、肩の力を抜いた。


「ご苦労様でした。マーガレット様。」


説明ばかりでろくに食事ができませんでしたでしょう。

そう言い、ルイ―ザは気を利かせ、

サンドイッチとお茶をテーブルに並べてくれた。


「ありがとう、嬉しいわ。」


そう言って、さっそく手を伸ばす。


「知らないとはいえ、フィンガーボールの水を飲まれたのにはびっくりしたわ。

最初に説明をしなかった私のミスね。」


「この講座は始められたばかりです。

マーガレット様にとっては当たり前の事だったので、

失念されていたのでしょう。

あなたに取ってもよい経験でしたね。」


慰められたのか、諭されたのか。どちらとも取れる言葉だ。


テーブルマナーは昼にかけての教室だったから、

今日はこれでお終い。

この後は明日の予習でもしようと思っていたところに、

スカーレットがひょっこり姿を現した。


「マーガレット、時間ある?」


「ええ、大丈夫よ。」


最近では、よっぽどの事が無い限り、皆が私の事をマーガレットと呼ぶ。


「実は新たな情報が入ったんだけど、聞きたい?止めておく?」


多分王都、私の身近な人の動向だろう。

今までに何回か報告は有ったけれど、最近は変わった動きは無く、

同じ情報の繰り返しだった。


「何か異変が有ったなら聞くけど、今までと同じなら遠慮しておくわ。」


ジュリエッタ様の事を探す為に、グレゴリーに密偵を送ったようだ。

両親やマリーベル様も、独自に人を雇い探させている。

スティール様自身もあちこちを探し回っている。

王からもジュリエッタ様の捜索命令が出ているようだ。

屋敷には、隠密が張り付いている。


そんな報告の繰り返し。

あちこち探し回っているようだから、いずれここにも捜索の手が届くだろうけど、

その時はその時、こちらの情報が早ければ打つ手は有る。


「スティール様が城に戻り、部屋に閉じこもりっぱなしだと言ったかしら。」


「ええ、一月ほど前の話だったかしら。」


「そうね、で、彼また出奔したらしいわ。」


え、確かこの週末はスティールの誕生日の筈。

それを迎えれば、彼は王様の下で国政に乗り出す予定だったよね。

一体何をやっているの!

あなたにはもっと責任感が有ったでしょう。

どうか私に、あなたの事を幻滅させないで。


「皆あなたの事を、死に物狂いに探しているわね。

それで、あなたは戻る気は無いの?」


「探していると言っても、きっとまた自分の為の体裁で探しているのでしょう?

自分の為に私がいなくなった。人目が気になるから探している。

あわよくば、それで見つけた私をまた利用する気なんだわ。」


ずいぶんひねくれた言い方をする。

自分でもそう思うが、100%その考えが間違っていると言えないだろう。


「それにね、私は今の生活をかなり気に入っているの。」


「あら、忙しすぎると不平を言っていたくせに。」


「それはそれ、これはこれ。」


実際今の私は、自由そのものだ。

教師としての自分も気に入っている。

自分の知識が子供たちの役に立っているのだから。


  


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