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おじ様の日課

前以上におじ様は、まめに私のパン屋に通って来た。

まあ、私も毎日パンを焼くって約束したからいいんだけどさ。

べ、別におじ様の来店を心待ちにしている訳じゃ…無いんだからね。


おじ様に買っていただいた材料で試作したパンは大成功。

勿論、それを使ったパンのお客様第一号はおじ様です。

私の作ったパンをとても美味しそうに食べてもらって、

私もとっても嬉しかった。

やはり材料がいいせいか、

パンが今迄より、とても美味しくなったと常連さんも喜んでくれました。

常連さんからの口コミからか、お客さんも随分と増えました。

つまり私もかなり忙しくなってしまったのです。

でも、必ずおじさまへのパンは朝一番に焼きます。


そして、いつの間にか店の片隅に、小さいけどとても趣味のいい

素朴なイスとテーブルのセットが置かれた。

当然おじさまが持ち込んだものです。


「だって私が店の中に突っ立ってパンを食べていると、

他の人の邪魔をしている気がするんだ。」


「そうですね。実際邪魔でしたもの。」


おじさまは私の不敬も慣れっこになってしまったようだ。


「だから邪魔にならないよう、店の隅で食べれるように持ってきたんだ。」


「持ってこさせた……ですよね。

でも、パンは持ち帰って、お城でゆっくり召し上がったらいかがですか?」


「だって君は私の家に来てくれないじゃないか。

少しでも長く君の傍に居て、君を見ていたいんだよ。」


「家ではなくお城でしょう?

それよりも、こんな所で無駄に時間を潰してないで、

少しでもお仕事をなさって下さい。

さもなくば……。」


「さもなくば……?」


いい年のおじさまが、また可愛く首をかしげて~~!

キュンキュンするからやめて下さい。


「お仕事しない人は、嫌いになります。」


瞬時におじさまの顔色が変わる。

ただ、真っ青になるのではなく、何故真っ赤になるの。


「嫌いになるって事は、今は私の事は嫌いではないって事だよね。」


「え…っ。」


「ねっ。」


そんなに嬉しそうな顔をして。

こっちの顔まで赤くなってしまう。


「まあ、……好きですよ……。」


仕方がない。

これは事実なのだから。

そう言えば、今まで生きていく為に一生懸命で、

異性を好きになったのは、おじ様が初めてかもしれない……。


それからのおじさまの日課は、(流石に側近の方も考えたのか)

普通のお客様の為にお店を開ける頃、護衛らしき人と共にお店にいらして、

店の隅に置いたテーブルで、私の焼き立てのパンを食べる。

(まあ、お茶ぐらい付けさせてもらいます。)

それから大人しくお城に帰って行く。

どうやら仕事の方も、真面目に取り組んでいるみたいだ。

それから時々、夜になる頃ひょっこり顔を出す日も有る。


「だって顔を見たくなってしまったんだ。」


この平凡な顔のどこがいいんだか。


「こんな顔でよければ、いくらでもどーぞ。」


そう言って顔を差し出すと、チュッとキスをされた。

えっ!?

何の違和感も無いまま終えた私のファーストキス。

何てさりげなく、手慣れたキスなんでしょう。

私にテレなど感じさせないサラッとしたキス。

でも、やっぱり感動してしまう。


「嫌だった?」


おじさまが私の顔を覗き込み、そう問います。

私は静かに首を左右に振り、おじさまを見つめた。


それからはもう、なし崩しと言うか何というか、

いつの間にか私の部屋のベッドがWサイズの物に変わっていた。

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