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1.光のある瞳

あらすじを読んでいない方はそちらをはじめに読んでください!


お話の更新は行うつもりでいますが定期ではありません。どうか気長にお待ちください。


それでは、「天使な彼女」第一話、お楽しみください!


…今日は休日だが、頭を使う日になるだろう。


なぜなら、今日は英検の二次試験がある日だからだ。


「・・・」


試験は3時間後くらいには終わって、満足するかがっかりするかのどちらかになっている。


それまで電車内でただひたすら頭を英語脳に変えることに専念する。一次試験を合格したら全部受かったようなもんだと言う人間もいるが、二次試験にも「試験」と呼ばれるだけの空気感がある。


身軽になったような感覚はひとかけらもない。


間食を食べる以外の時間はすべて面接のシミュレーションに費やし、それなりの自信をもって会場の最寄り駅を後にすることができた。


この町は国全体規模で見てもかなりの大都市で、何も通っていない状態を全く想像できないほど人と車が大量に行き来している。


大昔は電動の機械なしで生きていたと言うのだから、現代よりもはるかに多くの汗水を流して学校や仕事をしていたのだろう。


「…って、なんで大都市に来たくらいでいらないこと考えてるんだ俺は」


考えているうちにさっきまでの自信がなかったかのような感覚に陥ってしまった。


建物は想像以上に大きく、試験以外にも買い物客や観光客がうじゃうじゃと歩き回っていて、会場の階に行くまでに体力の一部をそぎ落とされた。




それから会場の建物の中で、練習を重ねた成果を存分に発揮した。


画面に写されている写真からできるだけ多くの行動を言ったり、試験監督の時事問題の質問にスラスラ答えていった。監督には悪いが、内心で合格を確信した。


自分が通っている高校は自国内とあって、世界からすればレベルが低いと見られがちだが、そうは思わない。むしろあの国の人間と同等かそれ以上のレベルだと自負している。


学術都市の役目を持つ国「ウィルシティ」には行ったことがないが、少なくとも自分は負けてないと、この満足した感じを理由に思っていた。


「昼、何にしよう」


お弁当は持ってきていない、だがお金もそう多くはない。いっそのこと帰ってしまおうかとも思ったが、次の電車はもう発車まで10分もなかった。ここから歩いては到底間に合わない。


「…クローバ?君も二次、今日来てたんだ」


後ろから聞き覚えのある声がかかる。友人のセインだった。


「クローバは受けたの二級だよね?やっぱすごいな、こんなに早く二級に挑戦しようだなんて、僕だったら絶対思わないよ~」


「そういうお前は何級受けたんだ?」


「僕は三級。中学校までの復習の意味で、親が取っとけって」


聞くたびに思うのだが、『親がやれって言うから』という理由付けをするのはどういうことなんだろう。やりたくないのならやらなければいい、そう伝えればいい。他にも『学校がめんどい』とかの理由に使う人間もいるが、それらにも全部同じことを聞いてみたい。


どうして人間は言いたいはずのことを口にして言わない?死ぬわけでもないのに。


「そうか」


だが今のセインにはこのことを言わなかった。矛盾しているが、こればかりは言っても無駄だからだ。前にこれを伝えたことがあるのだが、『親には逆らえないから』と最終的に言われて以来、やめた。


「ところで、お前お昼どうする?」


「コンビニで買って駅で食べようかなって」


「じゃ俺もそうするか」


そうして二人でコンビニに寄ってサンドイッチやおにぎり、飲み物やゼリーを買って昼食を駅で済ませ、電車を待った。



その昼食を食べている間、駅の待合室のテレビから流れるニュースを二人で語り合っていた。それは、ツーリス王国とケミカルタウンが共同で行っている『人の心をつなぐための研究』についてだった。


ちなみにケミカルタウンは国名で、一次・二次・三次などのあらゆる産業と科学技術を用いた研究・発明をして、生活を豊かにする役目を担うところだ。その一番と言ってもいい成果が『魔法』だろう。数年前までは想像もつかなかったが、今では正式な授業科目の一つだ。


まあそれは置いといて、『人の心をつなぐための研究』だ。ニュースにこそなってはいるが、世界はその詳しい内容について知らない。もちろん自分たちもわからない。


だからこそ、時々二人で仮説を立てては違うだろうと笑いながら語り合えるのだ。なんならセインとの会話のなかでトップクラスのテーマになっている。


「人の心をつなぐって言うぐらいだし、他人の脳や心拍数、神経の活動とかを直接読み取れる機械を自分の脳に埋め込んだり、そういうことができる新しい魔法を使って、考えていることがわかるようになる説が僕の中で一番なんだけど」


「そんな都合よく他人の思考を読むなんて今の技術だとしても限界じゃないか?俺はやっぱり、より住みやすく工夫して改良されたマンションか公共施設の建設だと思うけどなぁ」


こんな感じで。面白くないだろ?


「もしそうなら、どうしてケミカルタウンが関わることになるの。魔法とかいらなくない?」


「風魔法を使ったエレベーターってあるだろ?半永久的に安定した活動ができるものを取り入れたとか、音魔法を使ったデフォルトの無線固定電話をついに実装したとか」


しかし、この話題は次の一言で必ず打ち切られることが確定している。


「じゃあ、なんで詳しい内容を世界に教えようとしないんだろう?」


お互いに黙り込んだ。これが終了の合図だ。


「あ~…今日はこれでお開きだな」


このくだり、一周回って面白く感じてきた。


「それにしても、クローバって現実的だよね。研究が進んでも、君使いこなせないんじゃない?」


「…どういう意味だよ。それに夢みたいなこと考えるのは違う気がすんだよなぁ」


『まもなく、次の列車が、四番線から、発車いたします』


アナウンスが流れたため電車に乗り込む。




家の最寄り駅に着いたとき、いつも以上の疲労感がたまっているような気がした。セインは一つ前の駅で降りている。互いに近い場所に住んでいるわけではないと初めて知ったときは驚いた記憶がある。


駅から家までそれなりに距離があり、自転車でも15分はかかる。スーパーが立ち並んでいるところがあったり、国が援助している町中の研究施設があったり、住宅街ももちろんある。


いつものように自転車で帰っていたが、なぜか心がモヤモヤしている。無意識に今日のセインとの話が引っかかっているのだろうか?


「あっ、親帰り遅いんだった」


そうだそうだ。両親はそれぞれ違う職業をしているが、帰りが遅くなることはまずない。ましてや二人同時に告げられることは年に三回あるかぐらいなのに。そうか、モヤモヤの原因はこれか。


昼も見たような建物に入って、今度は弁当のコーナーを中心に回った。


「あった」


でもお弁当で買うものはたいていこの『照り焼きチキン弁当』と決まっている。必要最低限の品を手に持つと、特急レベルでレジのお兄さんの前に立った。


「これお願いします」


「お弁当、温めますか?」


「はい、お願いします」



(…あれ?)



まだ三時なのに。…好きなもの食えるからって口が滑ったか?


お弁当を温める時間があったとはいえ、自身が店に入る前の客全員よりも早いスピードでコンビニを後にした。


当たり前だが、このまま自転車で家まで行けば弁当の温度は下がる。でも家で冷めたものを夕食時にもう一度温め直すのはなんとなく嫌だった。なんか、またモヤモヤしてきた。


仕方なく、そこら辺にあった公園で早めの夕食をとることにした。


屋根つきのテーブル付きベンチに座ろうと目を向けると、片方のベンチが埋まっていた。ひとりの女の子が全体を使って寝転んでいる。お昼寝中だったかな?起こすと悪いし、別の場所に座ろうとしたが、


(この公園広いわりに座るところが少ないんだなぁ)


近所でも知らないことってよくあるのもだ。小学生の記憶なんて薄いし、加えて高校生になって、公園で遊ぼうなんて思ったこともなかったし。


これまた仕方なく、起こさないように反対側のベンチに座り、テーブルに弁当を広げた。


照り焼きソースのいい匂いがする。箸でチキンをつかんでくちに入れて、目を閉じてじっくり肉を噛む。一口サイズで入りきらないチキンのために、大きめの具を歯で砕いていく。やっぱりうまいと、自分でもわかるくらい顔がほころんでいた。


ふと、マイバッグの先の女の子に目がいった。


(この子、なんか可愛いな…)


いつの間にか手が止まっていた。すると、何かが靴に当たった気がしたので目をそこにやると、箸でつかんでいたはずの次のチキンが落ちていた。


「あっ!」 (あっ…)


チキンを落としたショックと大きな声を出したショックが同時に流れて変な冷や汗をかいてしまった。


目を正面に向けると、女の子はまだ眠っていた。女の子というより、クローバと同じくらいの年齢に見える。ということは彼女も高校生なのだろうか?制服姿ではないので、今日の試験帰りではないようだ。


クローバは小さく安堵のため息をついた


「…?」


「!」


…のもつかの間。彼女が起きてしまったようだ。クローバはすぐに謝罪の言葉を述べようとする。


「あぁ、悪いな起こしちゃって。弁当の具が…」


彼女は何も言わずにこっちを見続けてきた。


(なっ、なんだ…?)


ちょっと怖かった。でも可愛かった。なにより、自分を見つめる赤色の目がとてつもなく愛らしく、印象的で、輝いていた。


「・・・」

「・・・」


しばらく二人はお互いを見つめ合っていたが、クローバは勇気を出して声をかける。


「えっと…君の名前、聞いてもいい?」


「・・・」


こりゃだめだ、冷めてもいいから早いとこ家に帰ろうと荷物をまとめようとしたが、突然心のモヤモヤが強くなった。


(まさかさっきからのモヤモヤ、この女のこと…?いやいやいやいや、いくら何でも考えすぎだろ!)


「アハハ、お昼寝の邪魔してごめんな!すぐに帰るから…」

「…ゥ…ァ」

「…え、なんて言った?」

「…ク…ラ」


う~ん、聞こえそうで聞こえない。俺の耳が悪いのかと疑ったが、それにしても小さく聞こえるのだから聞き直さざるを得なくなってしまった。恥ずかしい気持ちを押し殺して聞いてみる。


「ごめん、もう一度よく聞かせてくれないかな?俺、耳の調子悪いみたいなんだ」


「サ…ク…ラ」


サクラ、どうやら彼女の名前はそうらしい。一つ疑問に思うのが、しゃべり方があまりにもぎこちなさすぎる。名前の響き的にウィルシティの人間だろうか?


「サクラちゃんって言うんだ。この近くに住んでるの?」


俺、今何やってるんだろう。同い年くらいの女性に対して子供みたいに接して、変態が口説いてるみたいになってんじゃん。そう思うとさっきの試験よりも緊張してきた。


「あ…」


何かの病気でしゃべれないのか?こういう時はどうすればいい?交番には行きたくないし、病院に行くお金もないし、だからって一人公園に置いていくのは申し訳ない。


(さてどうする、俺?)


午前の英文以上に悩んだ末、いつもの自分なら絶対ありえないことを思いついてしまった。

でも、これ以外にモヤモヤを消せそうなアイデアが思い浮かばない。



…今日は、思った以上に頭を使うことになりそうだ。


「君、親や友人を待っているとかだったら断っていいんだけどさ。このまま公園にひとりでいるつもりならさ…俺の家に…来ない?」

いかがだったでしょうか?作品を投稿することはこれが初めてなので、詰めの甘い部分もあったかもしれませんがご容赦ください。初話の今回はカットしますが、次からここでは作中の世界観や設定など、よりお話に入り込めるようなことを書こうと思っています。


それでは、また!

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