魔王の妻になる!!(3)
3話目です。
よろしくお願いします。
私の誕生祭が終わり家族でディナー中。
今日は豪華だ。とにかく豪華な食事だ。
トリュフが乗ったフォアグラのステーキ。たくさんのキノコが入ったクリームパスタ、スモークサーモンが入っているサラダ。
そして、少し焼いたフランスパンとコーンスープ。
そしてそして、デザートは沢山のフルーツが入った金箔乗せのパフェ。
最後にもういっちょ!ということで、大きなケーキだ。
二段重ねになっており、生クリームとイチゴのシンプルなケーキだ。
流石にもうムリっ!と思ったのだが、なかなかフォークが止まらない。
でも例えばここで・・・
「はい、リリー あーんして。」
(黒髪完璧イケメンの妄想の中のエルオル様)
「はいっ、エリオル様っ あ~~ん」
なんちゃって~~~、と顔を両手で覆いながらいつもの妄想劇を繰り広げる。
「このままでは食べ過ぎて太りそうだわぁ~」
とか私が言っていると、姉であるローズが毒づいてきた
「貴方、このままでは豚になってしまうわよ?」
フンッと腕を組ながら上から目線で呟いてくる。正直言って余計なお世話だ。
しょうがないじゃない!だって、おいしんだもん!(エルオル様がしてくれればもっと完璧だった。)と内心で呟く。
声に出すと余計に突っかかって来るのが姉だ。
この歳での姉の扱いの面倒くささといったらありゃしない。
父と母は、仲が良いわねぇ。と微笑ましそうに見ている。
フィオレロはケーキ夢中だ。見向きもしない。
(まぁいいけどね)
そう思っているときに、両開きのドアがドンドンと激しく叩かれ、ドアが開くと同時にジュリーが慌てて入ってきた。
一大事だと言わんばかりの慌てように、いつもはポワワンとしている私も流石に気が引き締まる。
はぁはぁとジュリーの背中を母が擦る。
フィオレロは泣きそうな顔をみせており、姉は何か見てはいけないものを見てしまった時のような顔だ。
父は慌てた様子でジュリーに説明を求めた。
*
しばらくして、ジュリーがあるものを見せた。
黒の封筒だ。表には、レナートゥス国の紋様が金色で縁取られている。
そこには、『エストワール家へ』と書かれていた。
「裏を見てください」、とジュリーが言うので父が裏をみた。
すると、父はなにやら驚愕していたのだ。目を見張った様子で手紙を凝視していた。
しばらく騒然と立ち尽くしていたため、母が本当にどうしたのかと声をかけた。
「あなた、どうなさったんです?」
母から声をかけた父は、はっとしてから私たちにあるものを見せた。
黒の封筒と共に私たちが見たのは、差出人の名前。その名は、
『アルファス・ディア・レナトゥ-ス』
と書かれていたのだ。
ペーパーナイフで切ったあと、封筒の中を開けて見ようとしたが、中はなんと空っぽだったのだ。
皆そう思ったのだが、突如ポンッと音がし空中には白い煙の中になんと綺麗な便箋が現れた。
(すごいっ!まるで魔法みたいだ)
ゆっくりと空中から降りた便箋は父が受け取り、手紙の内容を確認したあと私たちにも教えてくれた。
『あなた達の娘である
リリアーナ・エルモア・エストワールを私の妻に欲しい。
期限は3日以内。決まったら荷造りの後にこの紙に娘の名前を書かせろ』
と言うものだった。
アルファス・ディア・レナトゥ-ス。
彼は魔王として人々に恐れられている存在だ。
私はちらっと父と母の顔を見たが、顔色は悪く絶望に満ちていた。
そりゃそうだ。魔王と呼ばれている人に私が差し出されるのだから。
ある噂では、悪魔や魔神を使いこの大陸を自分のものにしようと企んでいるとか何とか。
実際、真実がどうなのかは分からないが。
*
つい先ほどまであった、沢山のディナーは片付けられている。
ジュリーが淹れてくれた紅茶を前に話し合いが繰り広げられている。いわば家族会議だ。
父と母は私を嫁がせるかとても悩んでいた。
もし逆らえば何をされるか分からない。
父と母は一国の王として、決断しなければならない。
(私は、どうすればいいのだろう。でも、でも私はある可能性にかけてみようかなー!)
シーンと静まるなか
私は頭をフル必死にフル回転させているのだ。
そ・れ・は
魔王の所に嫁いだ後のエンドフラグだ。
皆様にとってはどうでもいいことなのかも知れないが、私にとっては最重要。
この世界で一生を終えるのだ。どうせなら、ハッピーエンドフラグにしたい。
嫁いだ場合のエンドフラグはいくつかある。
私の中のエンドフラグをいくつかピックアップしてみようではないか!
まずは、1.普通に嫁いで子供を作り老いて死ぬ。
2.魔王と波乱万丈の人生の末に結婚し一生を終える。
最後に、3.魔王に心を開かず部屋に閉じ籠り一生を終える。
以上だ。どれが良いのだろう。
1番は普通に過ごせる気がしない。何らかありそうだ。
よくファンタジー系統の中では、2番系統が多い気がする。
3番はよっぽどのことない限りそんなことはないだろう。
でも実際は、その国には行ってみたいとも思っている。
私としては個人的に少し気になることもあるからだ。
私がそんなこんなで、なんやかんや考えていると
「いいんじゃないかしら。嫁がせても」
「何てことを言うんですかっ!!お姉さま!
相手は魔王ですのよ!!」
素っ気ない感じの姉と泣き叫ぶ妹がいつの間にか見事に対立していた。
それを見かねたのか父が、「まだ期限まで3日もある。今日はもう休もう」
いつもは元気ハツラツ!の父も顔も今日ばかりは生気が失われているような感じだった。
父の言葉に従い皆がそれぞれ部屋を後にする。
読んで下さりありがとうございます。