42話 尊、メイプルとミュートの過去を聞く②
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メイプルの話が終わると、違う部屋にいたミュートとティーさんが部屋に入って来る。俺はミュートにも俺の奴隷になった理由を聞いて見ると、メイプルと内容はほとんど同じだった。ミュート曰く。
「商人様から酷いことされてから、尊様を含めて人族の男性が怖くて仕方ありませんでした。
でも集落に帰れると言われても私を売った両親に会いたいとは思いませんし、また売られちゃうのかなと思うと悲しくてなって帰りたくありませんでした。
だからどこにも帰る場所がないなら、メイプルさんと一緒にいようって決めたんです。
ごめんなさい、尊様。初めて会った時から優しくしてくれたのに、疑ってしまって。」
「ミュートは何も悪くはないし、むしろ立派だと思うぞ。
酷い目に会ったのに絶望せずに今まで頑張ってきたんだろ、しかも怖いと思っていた俺とずっと一緒だったんだ。俺は、ミュートを強くて立派な人だと尊敬していぞ。」
「尊様、それは少し違います。言葉が足りませんでしたけど、怖かったのは始めだけです。尊様が市場で全てのお店に頭をを下げてくれた時から、この人なら怖くないって思えましたから。」
俺はミュートに”そうなのか?”と聞くと、ミュートは。
「尊様は私達より偉いのに、私達のために頭を下げてくれました。集落の人も商人様も立場の低い私達に、偉そうにしても守ってはくれませんでしたから。」
ミュートは俺の前に来ると、メイプルと同じく膝をつく。
「尊様、ありがとうございます。いつも私達のために頑張ってくれるから、私は毎日が楽しくて幸せです。
でも困った時は相談してください、頼りにならないけど私は尊様のために頑張りますから。」
ミュートの話しが終わると、今更ながらメイプルとミュートの行動の意味をハードウッドさん聞いてみた。
「尊様、獣人の社会は基本上下関係がしっかりしています。しかも、相手に膝をつくことは獣人の最大の敬意であり、場合によっては服従の意味もあります。」
俺はメイプルとミュートの方を向くと、”ハードウッド様の言う通りです”と答えが返ってきた。
「尊様は私達を家族として平等に扱ってくださいます。そのためで好まれないかもしれませんが、私が尊様に敬意を持っていることは知ってほしかったからです。」
「私もメイプルさんと同じです。私達は家族ですが、尊様はその中でも一番偉いって私は思ってます。」
ハードウッドさんが”いや~、若いとはいいですな。”と言っていた。俺は多少強引だが昼間の話をすることにした。
「ハードウッド様、先程の集団の件についてお話をお願いできますでしょうか。」
「そうでしたね、メイプル様とミュート様にも関係ございますのでお聞きください。」
俺の一言で雰囲気は変わり、メイプルとミュートも無言で頷いた。
「まず確認ですが。俺達がイーストウッド村に来て以降も行商人の襲撃は続いていて、今回の集団はその襲撃者を捕まえに来たということで合ってますでしょう。」
「はい、仰る通りです。補足するならば、鉱山都市サウスメタルのクエストカウンターから出され可能性が高いです。
この村から全国へ食料を輸出しておりますが、主に被害の報告が出ているのはサウスメタルの行商人からでしたから。」
今から思い出してみると、クエストカウンターに来た商人も”鉱山都市サウスメタルのキャラバンが代表ドラッグ”と言ったのを思い出した。
ハードウッドさんの話が終わると、メイプルとミュートが質問をしてきた。
「ハードウッド様、私達の集落の者が捕まった場合どうなるのでしょうか。」
「もしかして・・・、殺されちゃたりするんですか。」
「殺されることはないしょうが、犯罪奴隷になる可能性があります。」
俺はハードウッドさんに通常奴隷と犯罪奴隷の違いを聞いて見た。
「ハードウッド様。キャラバンの代表の方とお話されていた時に”犯罪奴隷の契約と通常の奴隷契約が違う”とも仰っていましたが、通常奴隷と犯罪奴隷は何が異なるのでしょうか。」
「人が奴隷になる理由は千差万別ですが、奴隷の種類としては大きく通常奴隷と犯罪奴隷の2つに分けられます。
1つ目の通常奴隷は、主人と従者というのが基本になります。こちらは主人の血を使い奴隷紋を刻むため、私が奴隷契約の儀式を行いますが奴隷の自由を縛ることは出来ません。
2つ目の犯罪奴隷は、一方的に複数の者たちを奴隷にすることが可能です。こちらは主人の血の代わりに、罪状を持って縛ります、そのため奴隷になる者が自らの罪を認識していないと縛ることが出来ません。」
俺はハードウッドさんの説明を聞き終わって、いくつか質問をしてみた。
「何点が疑問があるのですが。まずは通常奴隷の場合主人が亡くなれば主人と従者の関係が無くなるので、奴隷では無くなるのではないのですか?。」
「いいえ、それは違います。少し異なるかもしれませんが、奴隷というのは一種の職業と同じ扱いになります。ですから奴隷から解放されたければ、私のような奴隷契約出来る者が奴隷から無職の状態にしなければ解放されません。
仮に奴隷であることを黙って働いて給金を稼いでも、奴隷であることが発覚した時点で全て返却しなければなりません。」
「では、主人のいない奴隷は自らを解放することが不可能なのでしょうか。」
「難しいですね。基本的に奴隷は人ではなく物として扱われるため、主人が解放するという遺言を残さない限り解放されないと思います。」
俺は”わかりました”と言うと、今度は犯罪奴隷について聞いてみた。
「犯罪奴隷についてなのですが。先程罪状を持って縛ると言っておりましたが、犯罪者が自らの罪状を肯定するとは思えないため機能しないのではと思うのですが。」
「仰る通りです、その者が奴隷の場合は”嘘、偽りなく話せ”の命令で罪状を知り縛ることが可能です。それ以外では被害者が加害者に対して、被害を被ったという事実を自覚させれば縛ることが可能ではあります。」
ハードウッドさんは補足としてだが。被害者が存在している様にに見せかける程度では奴隷契約は発動しないため、傭兵を使い獣人達を問答無用で捕まえる行為は冤罪しか生まないと言っていた。
「獣人の全てを犯罪奴隷とすることは不可能だと思いますが、一定数は犯罪奴隷に落ちると思われます。このようなことを、メイプル様とミュート様の前で言うのは心苦しいですが・・・。」
「お気遣いありがとうございます、ハードウッド様。集落の者が犯罪を犯し、捕まることは仕方ないことです。既に山から日々の糧を得られるはずです、それなのに現在も行商人を襲っているのですから。」
「そうですね、悲しいことですけど・・・。私も獣人達が捕まるのは、自業自得だと思います。」
俺達はハードウッドさんにお礼を言って、家に帰ることにした。家に帰るまでの間に、昼間のことを思い出してしまう。
”ハードウッド様、はっきり申し上げましょう。我々は犯罪者たる獣人を全て捕まえ、犯罪奴隷とする予定です。”
キャラバンの代表であるドラッグという商人は、獣人の全てを犯罪奴隷にすると明言していた。
「あのドラッグという商人の言うことが、ハッタリであればいいのだが」
そんな独り言を言って、今日という1日が終了した。
それから数週間後、俺達の耳に集落に住む獣人が全て犯罪奴隷になったというニュースが聞こえてきた。
申し訳ありません、ストックが無くなりました。
2~3日ぐらいの間隔で書いて参りますので、引き続きよろしくお願い致します。




