41話 尊、メイプルとミュートの過去を聞く①
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あれから数ヶ月が経過して、メイプルとミュートはそれぞれの目標に向かって頑張っていた。
メイプルは天才ではなく凡人でも薬師になれる指導の方法を、ミュートは普通の人でもお洒落が出来て安くて丈夫な衣服や装飾品のレシピの開発に力を注いでいた。
そしてそれぞれの作り手達から一人前のお墨付きを頂くと、メイプルとミュートは俺にスキルのLv上げをお願いしてきた。
「尊様。今まで私達の我儘を叶えてくださり、ありがとうございました。」
「俺としても嬉しかったよ。メイプルとミュートが、自分なりに課題を持って納得して成長してくれたことに。」
「ありがとうございます、尊様。メイプルさんとも話し合ったのですが、これからはそれぞれのスキルをMAXまで上げて全てのレシピを知ろうと思います。
メイプルさんは今あるレシピは勿論のことこれから開発していくレシピを含めて、どんな人にでも指導できるようなるために。
私は全てのレシピから尊様や色々な人達の意見を聞いて、皆に喜んで貰えるような新しい衣服や装飾品を作れるようになるために。」
ミュートの言葉を聞き終わってから、メイプルの方を向くと無言だが力強く頷いた。俺はメイプルとミュートをパーティーを組んで、数週間のうちに2人のスキルをMAXにすることが出来た。
メイプル 狼人族 20歳
スキル
植物授業 Lv- ”薬品作成 LvMAX” 短剣術LvMAX アイテム精製Lv9 料理LvMAX 服飾作成Lv1 剣術Lv7
ミュート ♀ 猫人族 18歳
スキル
動物授業 Lv- 弓術 Lv8 短剣術LvMAX ”服飾作成LvMAX” アイテム精製Lv9 料理LvMAX 剣術Lv1
メイプルとミュートのスキルをMAXにした数日後。メイプルとミュートがそれぞれの店に出払ったぐらいに、珍しい集団が酒場で現れた。その集団の代表者はクエストカウンターでティーさんと話をした後、ティーさんは奥にいるハードウッドさんを呼んで来た。
「お初にお目にかかります。私は鉱山都市サウスメタルのキャラバンが代表、ドラッグと申します。」
「これはご丁寧なご挨拶を頂き、ありがとうございます。私はこのクエストカウンターが代表、ハードウッドと申します。」
ドラッグと名乗る商人とハードウッドさんが握手を交わすと、ドラッグはハードウッドさんにこの度の要件を伝えた。
「この度は多くの商人たちから、依頼のご協力を頂きたいのです。」
「失礼かと存じますが、内容をお聞きしても宜しいでしょうか?。」
ハードウッドさんの返答に、ドラッグは”勿論です”と言い依頼の内容を説明する。
「ハードウッド様もご存知と思いますが、この辺に行商人を襲う不届きな盗賊が出ますのでその解決に参りました。
そしてあなた様には、我がキャラバンが滞在する場所と食料などを供給して頂きたいのです。勿論タダとは申しません、我がキャラバンの必要物資をそちらのクエストカウンターへ発注させて頂く予定です。」
「なるほど。内容は理解できますし、こちらとしても出来る限りご協力も致します。ですが、いくつか質問をしても宜しいでしょうか。」
ドラッグは”勿論です”と快諾すると、ハードウッドさんは質問をする。
「その盗賊の問題解決は、どのように解決されるのでしょうか。やはり、行商人が襲われた時点で捕縛されるのでしょうか。」
「いえいえ、そんな悠長なことは致しません。なんでも不届きな盗賊は森に潜んでいるとのこと、後ろに控える傭兵たちを使い一匹残らずに捕まえてみせましょう。」
ハードウッドさんが、”そんな無茶な方法ですと冤罪が出ますぞ”て言うとドラッグがため息をついて話始める。
「ハードウッド様、はっきり申し上げましょう。我々は犯罪者たる獣人を全て捕まえ、犯罪奴隷とする予定です。こちらの考えに異を唱えるのであれば、失礼だが獣人と貴殿が繋がっていると疑わなければならなくなりますよ。」
「疑われるのは仕方ありませんが、罪を犯していない者をどうやって犯罪奴隷に落とすのですか。犯罪奴隷の契約と通常の奴隷契約が違うことはあなたもご存知でしょう。」
そんな言い合いを続けていると、知らない内に人が集まって来ていた。両者ともにこれ以上は醜態になると感じたのか、ドラッグが酒場を去る形で会話は終了した。
俺は2人の会話から気になる単語が聞こえたので、仕事中だがハードウッドさんに話しをしてみた。
「ハードウッド様。先程の会話で気になったので、後で時間を取ってほしいのですが。」
「勿論です、尊様。後でメイプル様とミュート様と一緒に、クエストカウンターの奥にいらしてください。」
俺は酒場での仕事が終わった後、メイプルとミュートと合流してハードウッドさんの部屋にお邪魔した。
「尊様。1つ確認して置きたいのですが、どうして獣人がこの村での評判が悪いかご存知でしょうか。」
「正しくがないかもしれませんが、この村と商売される行商人が獣人に襲われているからでしょうか。」
俺の答えに、ハードウッドさんは”その通りです”と答える。その後メイプルとミュートに向かって”お話してもよろしいでしょうか”と聞くと、メイプルとミュートはハードウッドさんにお礼を言った後で”自分達で話します”と答えた。
「尊様が私達のことを”家族だと思っているか大事にしているんだ”と仰って頂いた時から、私はあなた様に救われています。」
「私もメイプルさんと同じです。ですから私達が奴隷になる前の話は尊様には話しませんでした、尊様は優しい人ですから話せば苦労を掛けてしまいますし。それに私個人としても、あそこへは戻れないし戻りたくもないと思ってましたから・・・。」
俺は無言になってしまったミュートに話かけようとすると、メイプルが話を続ける。
「尊様、お気遣いは無用です。このまま話さなければ、尊様にも迷惑がかかる可能性がありますから。」
「メイプルさんと言う通りです。そしていづれ知られるならば、家族である私達から話させてください。」
ハードウッドさんは、”長くなりそうですし、お座りください”と俺達に椅子を座るように勧めてくれる。俺達はハードウッドさんのお言葉に甘えて、椅子に座るとメイプルとミュートは2人のこれまでの出来事を話し始めた。
「尊様と出会った時にもお話しましたが、私とミュートさんは違う集落に住む獣人でした。ですが住んでいる場所は山の中ででしたので、お互い積極的な交友はなくとも認知し合っているぐらいの関係でした。」
「確か出会った時は、メイプルとミュートは村が貧しいため奴隷として売られたって言ってたな。」
「尊様の言う通りです。ですが、本当は少し事情が違うんです。」
俺がミュートに”どう違うんだ”と疑問に思って首を傾げると続きを話してくれる。
「私達の集落は貧乏でしたけど、いつも飢えていたわけじゃないんです。イーストウッド村みたいにダンジョンはありませんが、山に入って生きて行くのに必要な食べ物は取れましたから。」
「ミュートの話だと贅沢は出来ないが、日々の生活することは問題なかったってことか。」
ミュートは”その通りです”と肯定してくる。メイプルも”こちらも同じです。それに食料の他に薬草も採取できたので、偶に訪れる行商人の方に薬草と必要な物を交換してもらったりもしていました。”と付け加えた。
「ではメイプルとミュートが奴隷になった原因は何だ、話を聞いている限りだと2人が売られる必要性はないだろう。」
「はい、尊様の仰る通りです。ですが、私達が売らなければならない程の問題が起きてしまったんです。それは私の集落だけでなく、ミュートさんの集落にも影響が出ました。」
俺は2人に”何なんだ、メイプルとミュートの集落に起きた問題って”と聞くと、2人から同じ答えが返ってきた。”山火事です”と。
「山に大規模な山火事が発生したために、私達は日々の糧さえ取ることが出来なくなりました。そればかりで収まらず山火事は私達の住処も襲い、私とミュートさんの集落は火が届かない場所へ逃げた結果同じ場所に集まりました。」
「そして私達の獣人達は悪いことだとは分かっていても、飢え死にしないために行商人の荷物を襲うこととになったんです。」
「私も山火事が起きたことは知っておりましたが、獣人達が行商人を襲うとは思っておりませんでした。我々と彼らで長い間問題はありませんでしたし、個人単位では交流があるだけでそこまで追い詰められているとは思ってませんでしたから。」
メイプル、ミュート、ハードウッドさんの言葉を聞いて、俺も何も言えなかった。獣人の行為は許されないものだが、飢え死を強要することなど出来ない。部屋の中が静かになるが、しばらくしてメイプルが続きを話始めた。
「山火事から1週間ぐらい過ぎたぐらいでしょうか、私達の集落に不思議なことが起きました。
今でも信じられませんが、多くの食料を荷台に積みこんだ行商人が私達の集落に現れたんです。」
「メイプル、その話は本当か。話しの流れからして、泥棒に金品を持って行くみたいな事態だぞ。」
「尊様が、驚かれるのは尤もです。私達も最初は、私達を捕まえに来たんだと思いましたから。」
俺が驚いていると、ハードウッドさんが”尊様も、間接的にはお会いしている人ですよ”補足を入れてくれる。俺はメイプルとミュートに出会ったことを思い出していると、”もしかして、亡くなられた商人さんですか”と答えた。
「その通りです。私が荷馬車をお貸しし、メイプル様とミュート様を元主人だった。あの行商人です。」
俺がメイプルとミュートの方を向くと、2人は無言で頷いた。
「商人様が私達の集落に現れると、集落の代表者に会わせてほしいと言ってきました。
強引に荷馬車を襲うことを考えた者もいましたが、多く者が罪悪感を持っていたため商人様の言う通り族長の所へ案内しました。」
「そして2つの集落の代表である、メイプルさんのお父様である狼人族の族長様と猫人族の族長である私の父様が商人様とお会いになりました。」
「そこで商人様は私達の父である族長に取引を持ちかけられ、内容は商人様の持ってきた食料と私達の持っている物との物々交換でした。
ここからは父から聞いた話なのですが、商人様はこれ以上の被害が出る様だと私達を犯罪者として捕まえなければならない。だが私達の立場も理解できるので、穏便に解決するためにも物々交換で解決してほしいと言われたそうです。」
俺は”なるほど”と言うと、ふと疑問に思ったことをメイプルとミュートに聞いてみた。
「メイプルの話だと、集落の物と食料を交換すれば問題ないはずだ。なぜ、メイプルとミュートは奴隷として売られたんだ?。」
俺のそんな質問に今度はミュートが答えてくれる。
「尊様。私達は日々の食べ物は山から取っていましたから、余分に取ることはしなかったんです。それに山火事が起きた時に急いで避難したんで、私達の集落にはほとんど何もない状態だったんです。
一応商人様にメイプルさんの集落からは出せるだけの薬草を、私の集落からは出さるだけの革を出しました。ですが全然足りないと言われ、仕方なくそれぞれの集落から1人づつ奴隷を出すことにしたんです。」
俺が”それがメイプルとミュートだったんだな”と聞くと、2人は”はい”と答えた。
「それから私とメイプルさんは、商人様の・・、前で・・奴隷契約をさせられてから・・・。」
「尊様、この続きは私がお話します。」
ミュートの目に涙が溜まり声が嗚咽混じりなった所で、メイプルが話を引き継いでくれる。ハードウッドさんはティーさんを呼んで、ミュートを別の部屋へと連れて行ってくれた。
「私とミュートさんが商人様の奴隷になった瞬間、商人様は私達に裸になるように命令をしてきました。そこで私とミュートさんは奴隷というものを教えられました。
当初私達は裸になることを拒否しました。ですが商人様が再度同じことを言うと胸の奴隷紋が光って、自分の胸に激しい痛みが出て私達は立っていられなくなりました。
それから商人様は私達を見下ろしながら奴隷の説明を始めました、内容は尊様と初めて会った時に申し上げたことと同じです。」
その後のメイプルから語られた商人から行動には、耳を抑えたくなるよう胸糞悪い話だった。
「裸にされただけでなく、生娘の証拠まで調べるとは・・・。しかも強烈な事実を突きつけ自分の都合の悪い部分は嘘を教えて、逃げられないようにするとは・・・。外道の所業ですな。」
ハードウッドさんの話では逃亡奴隷が罰を受けるのは主人を殺した場合のみで、仮に事故で亡くなった場合でも奴隷の無実が証明されれば問題はないらしい。しかも奴隷が主人の物であるのは事実だが、主人がいなければ村に入れないのは真っ赤な嘘らしい。
「もし奴隷が物であるため1人で村などに入れないとすれば、主人が外でトラブルに起きても村に助けを呼べないということになります。仮に村の中に主人がいたとしても、物ならば買い物すら出来ずお使いすら出来ず不便で仕方ありませんよ。」
「商人様から古い布で作られた服を投げられ、着た後はミュートさんと馬車の荷台で寝るように言われました。そして次の日の朝には集落を出発し、街道を出て暫くした後に尊様と出会いました。」
俺はメイプルの話を聞き終わった後、1つの疑問が生まれた。それは、なぜ俺の奴隷になったのかと言うことである。メイプルとミュートは俺と奴隷契約せずに、集落に戻ることも出来たはずである。
「メイプル。俺と奴隷契約する前に元の集落に戻れる機会はあったはずだ、どうして俺といることを選んでくれたんだ。」
俺の質問に、メイプルは優しい笑顔で答えた。
「それは尊様が、余りにも優し過ぎたからです。
見ず知らずの私達の我儘を聞いてくれて、同じ立場で私達と食卓を囲んでくれた時点で、私はこの人と一緒にいたいと思いました。
私やミュートさんを始めとして、獣人の社会は男尊女卑が普通です。同じ食卓を囲んでも食べる物に差があるのは当然で、奴隷に選ばれる時も私が女性だからという理由もありましたから。」
するとメイプルは椅子から立ち上ると、俺の前で膝をついた。
「ありがとうございます、尊様。私はあなた様と出会って沢山の幸福を頂きました、私は尊様が主人であることに心より感謝しております。」
メイプルのそんな行動を見て、ハードウッドさんが感想を漏らす。
「全く、尊様に出会ってから驚きの連続ですな。私が知る限り、尊様程の獣人との絆を結んだ人は知りませんよ。」
ハードウッドさんのそんな一言でメイプルの過去の話は終わった。
本日書けた分を投稿しました。
2~3日ぐらいの間隔で書いて参りますので、引き続きよろしくお願い致します。




