32話 尊、酒場で働く②
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なんとも豪快にぷりんを食べた後に、ピノワールさんが話しかけてくる。
「尊君は凄いわね。ワインと食事を合わせるって発想も、デザートを作り出す技術も。ねぇうちのワイン造りか販売を手伝わない?。」
俺は、ハードウッドさんにお世話になっていること伝え丁寧にお断りをする。
「折角のお誘いですが、お断りします。家族のメイプルとミュートがハードウッド様にお世話になってますから。」
「ピノ姉、今回は諦めてください。尊さんに辞められると、酒場の負担が母さんに戻ってしまうので。」
「そう言われると、何も言えないわね。じゃあ時間がある時で構わないから、ワインに合う料理をアドバイスしてよ。」
「アドバイスだけなら構いません。私で役に立つなら協力します。」
そんなことを話していると、メイプルとミュートそしてハードウッドさんが俺達の方にやってくる。
「尊様、お待たせいたしました。」
「尊様。私、服や装飾品を作るお仕事をしてみることにしました。」
「尊様、メイプル様にはポーション等の薬を製薬する店に。ミュート様は服やりぼんを作ってみたいと仰ったので、スキル”服飾作成”を活かせる仕事をお勧めをしてみました。」
「ありがとうございます、ハードウッド様。メイプル、ミュート、取りあえずやってみよう。合わなければ、また考えたらいい。」
”ありがとうございます、尊様”とメイプルとミュートが返事をしてくる。そんな様子を見ていた、ピノワールさんが一言。
「尊君って、本当に20歳?。さっきの対応見ていると、30代ぐらいのそこそこ経験した人のように見えたんだけど。」
俺は”ビーチさんと同い年ですよ”と冷や汗をかきながら、ピノワールさんに返答をした。ハードウッドさんから、明日から昼食の時間が終わったら夕飯時まで2人には各お店で働けばいいと言ってくれる。
「私達はありがたいですが、先方は納得しているのですか?。」
仕事を教えるということはいつもより余計な手間をかけるということだ、そんな遊び半分みたいことが通じるのかと疑問をハードウッドさんに伝える。
「ええ、構いませんよ。作る人と売る人は基本別ですからね、しかもこの村は大きな町と違い人が少ないですから、必要な量はしれています。ですから午前中は忙しくても、午後の時間は手が余っている作り手がいるんです。
むしろ喜んでましたよ、”自分達の仕事に興味を持ってくれた”とね。若い人達が村の外へ出ていくことが多いですから、少しでも若い人達が仕事をしてみたいと言ってくれるのは作り手からしても嬉しいんですよ。」
俺はハードウッドさんに”お世話になります”とお礼を言う、ハードウッドさんは”お礼は言わないでください。ポーションに服と装飾品、急な注文が入っても頼み易くなりましたから”と笑ってくれた。
「ねぇ、ビーチ。」
「なんですか、ピノ姉。」
「尊君ってもしかして、超優良物件じゃない?。ハードウッドさんに認められて、市場では大人気の獣人の主人でしょ。
尊君を旦那に出来たら、この村の名声を独り占め出来ない?。」
「言われてみればそうですね。じゃあ、ピノ姉は尊さん狙いですか。」
「う~ん、それはないかな。競争率高そうだし、尊君の第1夫人になる自信がない。」
ピノ姉の言う通り、尊さん本人は否定してもハーレムが自然に出来そうな気がしてきた。ピノワールさんとビーチさんが俺をそんな評価していることなど知らずに、初めて酒場の仕事は無事終了した。
ハードウッドさんに呼ばれて、メイプルとミュートと俺の3人は食事をした部屋に入った。
「尊様、本日はお疲れ様でした。こちらは少ないですが、本日の給金です。」
ハードウッドさんからお金の履いた袋を貰い中を確認すると、6,000Gも入っていた。
「ハードウッド様。こちらはありがたいですが多過ぎませんか、メイプルとミュートで3等分しても1人2,000Gですよ。」
前世の給料からすれば安過ぎるが、ここのクエスト依頼の報酬を鑑みると高すぎる。俺はビーチさんの分も入ってませんかと尋ねた。
「いえ、こちらからお願いしているため、元々その金額で支払うつもりでした。最悪酒場の収益と費用が同じになれば問題ないと思い、ナツメが働いていた時の売上を参考に計算をしていました。
そして今日の結果ですが、売上と利益共々増加するという嬉しい誤算となりました。特に利益はナツメが営業していた時より8倍を上回る金額が出ています。」
ハードウッドさんに詳しく聞いて見ると、セットメニューのおかげで肉料理の売上が増加したのが大きかったらしい。材料費も料理する手間もかかるため肉料理は高い値段と高い利益をのせていた、その結果大きな売上と利益の上昇に繋がったと言う。
「本日の利益を考えたらもっと給金を出すべきなのですが、今後この売上や利益が維持される保証が出来ないため安易に給金を上げたり出来ないのです。」
ハードウッドさんは申し訳ない顔でこちらを見ていたが、俺としては不満はなかった。前世でもお金を扱う部署にいたため、ハードウッドさんの悩みは痛い程分かったからだ。
給金は性質上、売上の増加と共に増える変動費ではなく、変化しない固定費に分類される。そして固定費は、売上が少なくなっても同じ金額が必要になる。売上が高い場合は問題はないが低くなり収益<費用の構図になった場合、店自体の維持はすぐに難しくなってしまう。
「いえ、給金としては充分頂きました。ビーチさんも同じぐらい貰っているんですよね?。」
「そこは大丈夫です、ビーチにも2,000Gで納得して貰っていますから。」
俺はその話を聞いて安心すると、メイプルとミュートに2,000Gづつ渡す。
「メイプル、ミュートお疲れ様。2人の取り分だ貰ってくれ。今後も同じだけ渡すつもりだが、意見あるなら言ってくれ。」
「尊様、それでは私達の分が多過ぎます。私達は明日から午後から夕食までは酒場にはいないのですよ。」
「メイプルさんの言う通りです、この前だって1万Gものお金を頂いているんですよ。」
「メイプルもミュートもこれからは俺以外との人付き合いがあるんだ、だったら少なくてもお金は持っているべきだ。2人が奴隷だと知っている人ばかりだと思うが、それでもお金を出して貰ってばかりだと心苦しいだろうしな。」
メイプルとミュートは申し訳なさそうだが、2,000Gは受け取ってくれた。俺達のやり取りを、ハードウッドさんが優しそうな目で見ている。
「前回も思いましたが、尊様の行動は面白いですな。奴隷に金銭を躊躇わずに譲渡することも驚きますが、1番驚くのは奴隷を独り立ちさようとするところです。
尊様の場合は経緯が変わっておりますが、それでも自分の奴隷を進んで手放そうとする主人は尊様ぐらいですよ。」
「そうですね。ハードウッド様がおっしゃる通り、私は変わっているのでしょう。ですが、毎日怯えた目で見られたり悲しい顔をしている人と過ごすより、喧嘩したり笑ったする人と暮らした方が楽しいと私は思いますから。」
「そうかもしれませんな。」
ハードウッドさんとの用事も終わって、酒場出ようとするとティーさんが困った顔をしていた。
「ティーさん、お疲れ様です。どうかされたんですか?。」
「あっ、尊様。本日はお疲れ様でした。いえ、その、そう、鶏肉の納品が足りないのでどうしようかと思っていたんです。」
ティーさんには珍しく取り乱していたが、追及するのも野暮なので考えないようにする。
「鶏肉ですか・・・。やっぱり酒場で使い過ぎたのが不味かったですか、行商人の方にも販売されているんですよね。」
「はい。クエスト依頼では受け付けておりませんが、販売してほしいと言う声はありますから。」
ティーさんがそう言ってくるので、メイプルとミュートに聞いて見た。
「メイプル、ミュート。明日は、午前中イーストダンジョンに入って鶏肉を調達しようと思うが大丈夫か?。」
「はい、構いません。ティー様にはお世話になっておりますから。」
「私も大丈夫です。それに尊様から買って頂いた弓を早速使ってみたいです。」
ティーさんに”ありがとうございます”と言われて、俺達は酒場を出て家に帰ることにした。
ティーさんの悩みがこれから始める事件に関連することを、俺達は誰一人として気づいていなかった。
申し訳ありません、ストックが無くなりました。
2~3日ぐらいの間隔で書いて参りますので、引き続きよろしくお願い致します。




