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  作者: ひじきとコロッケ
街に来たけれど、自由にさせてもらえません
12/283

2-4

 リリィさんは構わずにスタスタと、礼拝堂を進み、一番奥へ。


 奥の壁には立派な美しい女神像が架かっています。綺麗な色で塗られているのはそう言う宗教なんだろうね。


「マリアンナ」

「はい、こちらに」


 大きな鏡をマリアンナさんが持って来ました。


「レオナさ……レオナ、その仮面を外して鏡を見てくれ」

「わかりました」


 仮面を外すと、リリィさんとマリアンナさんが視線を逸らします。一体どういうこと?まあ鏡を見てみようか。




 我ながら絶句してしまいました。

 茶色だと思っていた髪は、薄く桜色がかった金髪でした。そして透き通るような緑の瞳、スッと通った鼻筋に桜色の小さな唇。


 どこかで見たような……って、あの女神像だよ!


 鏡の中の私と女神像を何度も見比べる。上の方にあるから少し見づらいけど。違いと言えば、私の髪がぼさぼさショートカットに対して、女神像の方は腰よりも長いというくらい。顔立ちは……輪郭もほとんど同じなんじゃ無いかと言うくらいに酷似。

 この国の宗教はこの女神を信仰する宗教だけらしいから、そこそこ信仰心があったら、私の顔を見ただけで五体投地もあり得るかも……神様、何やらかしたんですか?


「その仮面、着けてみるといい」

「はあ」


 着けてから鏡を見た。

 崩れ落ちた。失意体前屈って言うんだっけ?あんな感じで。


 なんで仮面を着けるだけで、髪の色が濃い茶色になって腰まで伸びて、仮面の下、頬のあたりまでなんかアザみたいのが出てくるんですか?ぱっと見、顔の上半分に大きなアザがあるから仮面で隠してます、みたいな自然な感じ(・・・・・)になってる。これ、容姿を変える魔法の道具とかそう言う感じの物なの?


「女神の姿を体現した少女との邂逅(かいこう)に感謝の祈りを」


 リリィさんとマリアンナさんが女神像に祈りを捧げ始めました。

 私は……あ、困ったら教会で祈れって、神様が言ってたよね?祈ってみるか。




 何もない空間にあのモヤモヤがいます。


「いやあ、やっと話が出来ますね」

「いろいろ積もる話というか、言いたいことが山ほどあるんですけど」


 苦情とか苦情とか苦情とか。


「んー、ご期待に添えなくて申し訳ない。あまり長い時間は取れないんだよ」

「とりあえず、言い分だけ聞きましょうか」

「転生先、間違えちゃった♪」

「てへぺろ、でごまかされるとでも?」

「うん、だから追加でいろいろと力を。アイテムボックスとか」

「追加……他には?」

「全属性の魔法レベル最大」

「魔法、使えるんだ」

「もちろん使えますよ」

「知らなかった」

「あ……」

「どうやって使えば?」

「えーと……」

「使い方を伝えるのを忘れていたと?」

「……あはははは」


 冷や汗ダラダラって感じが伝わってきた。


「はあ……まあいいです。なんとか生き延びてるので」

「結果オーライですね」

「あなたが言いますか。まあいいです。とりあえず質問が」

「何でしょうか」

「魔王とかどうなったんです?」

「今のところは何も。ただ、準備は進めてる感じですね。でも、もうそれほど時間は残されていないかなと言ったところです」

「一応、先日成人できたので、これから頑張ればなんとか間に合う感じですか?」

「そうですね。一気にいろいろな力が使えるようになってくるので、少しずつ慣らしていってください」


 ま、この辺の質問はこんな所か。


「で、私のこの容姿は?」

「……」

「答えてください」

「成長に合わせて変わるように作り替えました」

「それはだいたい想像してました。それはそれとして、なぜあの女神像とそっくりそのままの(うり)二つなんです?」

「それは、その……ある程度見目麗しい方がいいかなと思ったんですけどね。人間の見た目というか美的感覚ってよくわからないので、祈りとかそう言うのと一緒に伝わってくるイメージを当てはめたらこうなりました」

「それで女神……?」

「私、現世の人たちには女神という認識をされてるんですよ。神に性別なんて無いのに」

「で、あの仮面」

「目立たないようにすることも必要だろうからと思って」

「私のヴィジョンが持ってた理由は?」

「渡そうと思ったら、方法がそれしか無くて」


 なんかもう聞くのが面倒になってきたな。


「私のヴィジョンについては?」

「あなたに力を与えたのは確かなんだけど、どういうヴィジョンになるかはいじってないから、元々だね。いや、生物タイプで良かったよ。物タイプだったら仮面を渡す方法が無くなるところだった」

「アイテムボックス経由は?」

「魔力を持った物は渡せないんだよね」

「はあ……」

「おっと、そろそろ時間が」

「わかりました……あ、私に与えた力の一覧とか、欲しいんだけど」

「はい、これ」


 分厚い本を数冊渡された。


「これ、持って帰れるの?」

「アイテムボックスに入るはずだよ。魔道具とかは渡せないけど、これは普通の本だからね。あ、秘密が一杯だから日本語で書かれてる」

「わかった」

「じゃ、頑張って」

「……多分また来ると思います」

「う……」




 たっぷり話し込んだが、実際には数秒だったようだ。その辺は神様がいろいろとやってるんだろうけど……何でまたリリィさんとマリアンナさんが五体投地を。って、遠くで教会の人たちも?!


「あ、あの……起きてください」

「すまない、つい」


 つい(・・)って何だ、ついって。


 聞くと、私が祈り始めたら体が金色に輝き始めたのだという。


 そりゃ五体投地しますわ!




 これ以上ここにいると、次に何が起きるかわからないので、リリィさんに抱っこされて教会を出る。自分で歩けるのに……と思うがそこは何も言わない。リリィさんもスタイル良いから……くっ、何という包容力。思わずこちらからぎゅっと抱きついてしまう。役得役得。


「はうっ」という声が聞こえるが、聞こえないフリ。

 この声、男性が聞いたら大変なことになるのは間違いない。聞いたのが私だけで良かった。


 マリアンナさんが教会のちょっと偉そうな、立派な服を着た人にまた袋を渡している。「このことは内密に……」とかいう声が聞こえた。何のことかは敢えて言うまい。




「聞きたいことが山ほどある」


 馬車の中でそう言われ、マリアンナさんに抱き上げられてリリィさんの執務室へ。逃げたいけど逃げられない。


「何があった?」

「えっと……私にも何が何だか……」


 言えるわけ無いでしょ。教会で祈ったら神様と連絡が取れて、その間中光っていたみたいですね、なんて。思わず目をそらす。


「ちゃんとこっちを見て話しなさい」

「はい、すみません」


 ちゃんと正面を向くと、リリィさんがこちらをじっと見つめてくる。

 こんな美人さんにじっと見つめられたら、男性じゃ無くても色々勘違いすること間違い無し。

 でも、なんて答えたらいいのか……あ、そうか。

 ちょっと身を乗り出すと、リリィさんもつられて少し距離をつめてくる。

 で、唐突に仮面を外し、にっこり微笑む。ちょっと首をかしげて、頬に指を添えたりしながら。


「はうっ」


 こうかはばつぐんだ、です。


 耳まで真っ赤になってモジモジしています。部屋の隅でマリアンナさんもプルプル震えています。


 しばらくニコニコしてから仮面を戻す。話が進まないし。


「……反応を楽しんでないか?」

「まさか」


 楽しんでるなんてとんでもない。ただの眼福です。


「はあ……まあ、何が何だかわからない、と言うことなんだな?」

「はい」

「わかった」


 マリアンナさんに目配せし、抱っこされて退室。だから歩けるんですけど?




 一応、今日の残りの予定を聞いたのですが、特に何も無いとのこと。

 読みやすそうな本があったら読みたいと言ったら、子供向けの教本みたいなのを持ってきてくれたので、読書タイム。こういうところから、こっちの世界の常識とか知っておきたいと思いまして。ほら、今後一人で生活する上で必要でしょう?

 それにしても、いろいろやらかして欲しいと言われてたはずだけど、一番やらかしてるの、神様じゃん。私まだ何もしてないよ?この先どうするの?


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