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龍の生まれる国  作者: るるる
第一部 王城の龍 王城
16/128

王城-003 アヤノ皇子の屋敷はどこだ?

ララルーアは続ける。

「夜会を見たでしょう? 毒にも薬にもならない者達は、この林の中に屋敷を賜るのよ。本当に国を動かす者は、森の向こうに住んでいるわ。この森の向こうへ行かない限り、命令一つで権益を取り上げられても、文句ひとつ言えないのよ。わかる? あなたの村はもちろん、どの土地に住んでいるものでも、彼らの気まぐれに抗うには、あの中に行くしかないのよ」

「アヤノ皇子の屋敷はどこだ?」

「権力には興味がないの?」

「あるように見えたのか?」

「見えないわ。でも、村から連れ出されて命令に従わなければいけないのは悔しいくないの? 山猪の運ぶ病だって、薬草一つで防げたはずだわ。薬草を買う資金さえあれば、山猪を高く買わせることさえできれば、誰も、あなたのように村から引っ張り出されなくてもよかったはずだわ」

「来たくなければ来ない。私に命令できるものはない」

「命令に従ってやっているだけだ、と言いたいのね。山の男の誇りと言うことかしら」

ララルーアはそう言って鼻で笑った。それからとたんに、温かみのある色が目に浮かんだ。

「第五皇子の屋敷はあそこよ。幸い、森のこちら側にあるわ。カエランラよりもわたくし達に近いわ。彼らはいちいち、森を超えてこちらにこなければならないのだから」

ララルーアは、森の入口にこじんまりと立つ灰色がかった宮殿を指差した。寝静まっているのか真っ暗で、月明かりに蔦と共に浮かびあがる。


「信じられる? あんな隅へ追いやられて、生きているだけ。それ以上のことが何もないのよ。一生、森の隅で、王宮の噂を聞くだけで生きるのよ? 皇子だっていうのに。哀れすぎて言葉もないわ」

半ば怒っているようだった。

「同情して声をかけたのか?」

「いいえ。陛下が気にしてらっしゃるからよ。わたくしが何を思っても、ここでは何の意味もないわ。だいたい、なんでわたくしが、落ちぶれていく皇子に手を貸さなければいけないの? 自分のことで手いっぱいなのよ。引きずられて一緒に落ちていくだなんてごめんだわ」

ララルーアは声を荒げて言いきった。そして、再び歩き出す。


「いやならここを出ればいいのよ。陛下が生きていらっしゃる間に。わがままが言える立場なんですもの。いくらでも言えるのよ。それこそ、外国へ勉強をしに行きたいとでも言えば、国外で、自分の勢力を作ることだってできるわ。それをしないのなら、しない方が悪いのよ」


イライラした声だった。もしかしたら、妬んでいるのかもしれない、とサテンは思った。立場があるのに使わないのは、ララルーアには、許せないほどの失態に映るのかもしれない。

「静かに生きたいと思っている者もいるだろう」

「なら、人間が近づくたびに悲鳴を上げたりしないことね。誰も近づかないどころか、生きていくことさえできなくなるわ」

「子供と言うのは嘘なのだろう」

「自分の国の皇子の年くらい知っていてあたりまえでしょう?」

つまりは小さな子供ではないと言うことだ。知らないサテンが悪いのよ、と言う意味だ。


「お気に入りの付き人のいる人間嫌いに近づいて、何をさせたい?」

「何度も言っているでしょう? 王にさせたいのよ。王に! だから、野望を植え付けてちょうだい。あんな森の隅っこで満足しているような子供には興味がないの。王になる、わたくしの駒が欲しいの」

ララルーアは振り返って嫣然と微笑んだ。

「それが、陛下の望みでもあるのよ。だって、一番のお気に入りだった息子の子供ですもの。愛しているのよ、陛下は。死んでしまった息子の代わりに、その子供に、できることなら何でもしてやりたいと思っておいでなのよ。わたくしが代わりに、手を貸して差し上げなくてわね」

ララルーアは、下から盗み見るような目で見上げ、微笑をさらに深くした。

「わたくしは陛下の為にいるのですもの。陛下の手足とならなくては」

ララルーアの声には毒がこもっていた。憎悪のようなものが見えた気がした。サテンは無表情になって、

「野望とは。難題だな」

とつぶやいた。

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