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入学してから早くも8ヶ月が経ちましたが、相変わらずわたくしにはお友達がおりません。
男子生徒からは蛇蝎の如く嫌われており、女子生徒からは遠巻きにされています。
いつも元気にピーチクパーチクと纏わり付いていた取り巻きAとBも今ではミリヨンの取り巻きとなりましたから、わたくしの周りはとーっても静かで快適快適。
そしてこの度、わたくしは無事に3年分の単位を全て取り終え卒業資格を取得しましたの!
入学してたったの8ヶ月で卒業資格を取得するというのは、この学園始まって以来の事らしいのですが。
そんなわたくしを褒めてくれたのはフルールとファスグリーだけでしたわ。
今やこの学園の生徒達も教師達もみーんなミリヨンの魅了魔法に掛かっていますからね。
しかも先日気づいたのですが、どうやらお父様もミリヨンの魅了魔法にやられているようですの。
まぁ、父は元々家族のことには興味がない方ですから。
母が儚くなった時でさえ仕事先から戻って来ませんでしたのよ。
親子とはいえ、これまでも殆ど交流はありませんでしたから特に生活に支障はありません。
この世界でわたくしの味方はフルールとファスグリーの二人だけ。
(デメルフリード様もきっと味方だと信じてはおりますが!!!)
ええ、充分ですわ。
わたくしの信条は『狭く深く』
わたくしの愛情は空よりも高く、海よりも深いのです。
ミリヨンのように広く浅くというのは無理ですわね。
わたくし、大切なものは死んでも守り抜く主義ですの。
数が多いと守りきれないでしょう?
五年前のあの日、わたくしがミリヨンを見に訪れた孤児院から引き取ったフルールとファスグリー兄妹。
彼らはこの世界で不細工として生まれ、親から名前を付けて貰うこともなく棄てられたらしい。
孤児院では54番、55番、と番号で呼ばれ、差別され、虐められて、蔑まれて生きていた。
こんなに可愛らしい兄妹になんたる仕打ち!!
だから、始めは同情だった。
だって自分の容姿は自分では選べない。
この世界には整形手術なんてモノもない。
自分のせいではないのに、この二人は辛い人生を歩んできた。
そしてこれからも辛いことが沢山あるだろう。
だからわたくしが可哀想なこの兄妹を大切にしてあげなければ。
アマガエルの化け物のくせに薔薇の妖精などと褒め称えられるわたくしの、せめてもの罪滅ぼし、そう思った。
だけどそんな同情心など、この二人といるとすぐに霧散した。
素直で、努力家で、芯が強くて諦めない。
そして、その心の美しさはまるで心が洗われるようだった。
わたくしを心の底から尊敬し、信頼して、その全てで以て仕えてくれる。
今やあの二人はわたくしの腹心。
彼らが命を掛けてわたくしを守ってくれると言うのなら、わたくしもまた、同じだけの想いを返すのみ。
だからわたくしはこの二人に打ち明けましたの。
まぁ、色々ボカしてではありますけれどね。
幼い頃に先見の夢を見たということにした。
その未来で、わたくしは婚約者であるモラーハルト殿下に婚約破棄をされて処刑されるのだ、と。
そしてわたくしが想いを寄せているのはモラーハルト殿下ではなく、第一王子のデメルフリード様だ、と。
フルールとファスグリーは、わたくしの話を1ミリも疑うことなく信じ、涙を流し憤怒してくれた。
そして、デメルフリード様との恋を応援してくれる。
わたくしはそんな二人に向かって声高に宣言した。
『わたくしは運命なんて蹴散らして必ずデメルフリード様と幸せになりますわ!!フルール!ファスグリー!絶対にみんなで幸せになりますわよ!わたくしを信じてついてらっしゃい!!』
その時の高揚感は忘れられない。
それまでのわたくしは強がってはいても、常に心の中は不安と恐れでいっぱいだった。
化け物だらけの世界は恐ろしい。
断罪も処刑も恐ろしい。
この世界の主人公であるヒロインにはきっと敵わない。
魅了の魔法に勝つ自信なんてない。
何故私が悪役令嬢に?
前世でそんなに悪いことをした覚えはない!
怖い、怖い、怖い
このクソゲーの世界が私を殺すのだ。
前世の世界に帰りたい。
何処か遠くに逃げてしまいたい。
そんな思考に囚われて引きずり込まれそうになるのを何とか踏ん張って耐えていたのだ。
しかし、二人の腹心の前で堂々と『幸せになる宣言』をしたことで強くなれた。
それはきっと言霊。
それはきっと愛する人との幸せな未来。
それはきっと守るべき存在。
そして絶対に叶えて見せるという強い念。
恐れと不安は吹き飛んだ。
わたくしはこのクソゲーの世界で幸せになると宣言したのだ。
フルールとファスグリーを幸せにすると宣言したのだ。
そのためにはいかなる努力も惜しまない。
なんの努力もせずにわたくし妬み、嫉み、傷つけて貶めてやろうと躍起になっている化け物ども。
そんなあなたたちにわたくしが自ら手を下す必要などありませんわ。
いつか自滅なさる日が来るでしょうからね。
そして最後に笑うのは、このわたくしですわ。




