7話 インドを守るのは、この俺だ
「聞いてくれ駆動丸! 俺は世界の破壊者じゃない! 偽物の高田健志を倒しにきただけなんだ!」
「フン……どちらも同じこと。偽物も本物も、両方殺してしまえば同じことだッ! ハァッ!」
駆動丸は日本刀を振り下ろす。高田健志の手首を斬りつける。
「ぐっ……!」
高田健志の手首から血が滴り落ちる。高田健志は一旦距離を取るため、ガンジス川を飛び越えた。川の向こうから、駆動丸が歩いてくる。
「流石は神だな。今ので手を切断できないとは。」
高田健志の皮膚は鋼鉄よりも硬い。そんじょそこらの刃では傷をつけることもできない。切断するなんて不可能だ。
だが、彼の刃はいとも簡単に高田健志の皮膚を傷つけた。絶対に切断できないとは言い切れないのが恐ろしい。
「まさか、こんなに強い人間がいるとはな……。」
高田健志は人間の底力に驚嘆した。しかし、人間の可能性を喜んでいる時間など高田健志にはない。
「タァッ!」
駆動丸も、ガンジス川を一歩で飛び越え、また高田健志に刃を突き立ててきた。
高田健志は腕でガードする。そのたびに、手には生傷がつく。高田健志は防戦一方だ。
「どうしたどうした! 一発でも攻撃してこい!」
「……っ!」
高田健志は、人間に攻撃をするわけにはいかなかった。たとえ自分に脅威として迫る人間でも、罪もない者に攻撃をすることは、高田健志の心が許さなかった。
「死ねぇッ!」
高田健志に隙ができた。駆動丸はその隙をつき、高田健志に向かって刀を刺し込んだ。
「ぐはッ……!」
高田健志の脇腹に、深く、日本刀が突き刺さる。
高田健志はその場にひざまずく。吐血する。駆動丸は高らかに笑った。
「ハッハッハッハ! 高田健志といえど、所詮は胡座をかいた神か! 人間様の前に散れっ!」
駆動丸はトドメを刺そうと、高田健志の脇腹から刀を引き抜こうとする。
「……何?」
だが、駆動丸の刀は抜けない。
高田健志の脇腹から、全くびくとも動かないのだ。
「バカな……、どこにそんな力が!」
「……俺は神だぞ。こんなので、死ぬかっ!」
高田健志は、腹に刺さった駆動丸の刃を、握りつぶした。刃は根本から粉々になる。
「くっ……!」
駆動丸は距離を取る。高田健志は腹に刺さったものを無造作に引き抜いて、投げ捨てる。高田健志はこの程度では死なないと言っていたが、重症であることには変わりない。高田健志は依然、苦しそうだ。
「……仕方ない。」
高田健志は決心した。
このままでは、この駆動丸という人間に殺される。それではダーク高田健志を倒すことができなくなってしまう。かと言って、駆動丸を傷つけることもしたくない。
この葛藤の末、決心した。
人間相手に、『神の気』を使うこと。
できるなら説得したかった。神の気を人間界で使うと、体力の消耗が激しいのだ。だが、駆動丸は説得できる相手じゃない。そう分かった今、使うしかない。
「はぁああぁあっ……!」
高田健志は力を全身に込める。地面が揺れ、ガンジス川が荒ぶる。
「な、なんだこの力は! もしやこれが、神話に語られる『神の気』か……!?」
駆動丸は、高田健志を警戒する。
「ハァーーーーー!」
ついに高田健志は、神の気を解放した。