21話 スーパーパワーの戦士たち
「はぁッ!!」
おまおじは気功波を無茶苦茶に乱射した。高田健志は空を飛び周り、なんとか避け続ける。
「フンッ!」
高田健志は隙を見て、一弾の気功波を放つが、圧倒的な量の気功波にむなしく消滅した。
(さすが……さて、どうやって勝とうか……)
高田健志は崖に隠れ、〇・一秒ほどやり過ごす。崖はもちろんすぐに崩れ、消滅し、更地になってしまうだろう。
それまでに打開策を考えなくては。
(あの尋常じゃない量の神の気だ。まともに戦ってたらコッチが参ってしまう。……一応秘策はあるにはあるが、今のままじゃムリだ……)
高田健志は神の気を手に込める。そして、崖が消滅した瞬間に、おまおじに右手を向けた。
「『ドンモー』ッッ!」
エネルギー量にかなりの差があるとはいえ、スーパー高田健志のドンモーだ。おまおじが無造作に放ったような気功波はドンモーに弾き飛ばされる。
「ッ!」
ドンモーは直撃し、大きな煙が舞う。そしておまおじの視界が奪われた隙に、高田健志はまた少し離れて崖の影に隠れる。
「ちょこざいなマネをするな建志ッ! それでも神かぁアアっっ!!」
おまおじは煙を薙ぎ払い、邪悪な神の気を爆発させた。
そこら中一帯が、爆発によって吹き飛ばされる。高田健志の隠れる予定だった崖も、その爆発によって跡形もなく消し飛び、ついに見渡す限り地平線となってしまった。当然、高田健志が隠れる場所はもうない。
「ば、バケモンかよっ……!」
この爆発によって高田健志もかなりのダメージを負った。肩、腹部、足、多数の部位から流血している。
(くそ……秘策はもう使えないな。)
高田健志の秘策は、ある程度の時間がないとできない。おまおじはそんな隙を与えないだろう。
大人しく戦うしかない。高田健志はやけくその精神で、気を高め、構えた。
「ようやくまともに戦う気になったか、建志。」
「あぁ、思う存分やろうぜッッ!」
高田健志とおまおじは、互いに超スピードで飛ぶ。そして拳がぶつかり合う。その衝撃波で地面が揺れる。
「フッフッフ……」
おまおじは不敵に笑った。対して高田健志は苦悶の表情を浮かべる。おまおじにとっては余裕、対して高田健志は余裕がない。
「ッ、オラァっ!!」
高田健志は無茶苦茶にラッシュを放つ。
おまおじはそのラッシュ攻撃を全て受ける。
「ハァーーーーっっ!!」
高田健志はラッシュの終わりに気弾を放つ。これもおまおじの顔にヒットした。
……しかし、おまおじは真顔のまま動じなかった。ほとんど無傷だ。
「……。」
おまおじは何も喋らない。高田健志はその絶望っぷりに笑うしかなかった。
ヘラヘラと笑っていたら、おまおじが超速の膝蹴りを放つ。それは高田健志の腹に突き刺さり、高田健志は地面に打ち落とされた。
「うぐぅうぅうっ……!」
邪悪な気を纏った膝蹴りは、とても痛い。
地に落ちた高田健志の髪は、黒髪に戻っていた。
高田健志は腹を押さえて、痛みになんとか耐えようとする。
そこに、おまおじが降りてきた。
「……ハハ、ちょっとは手加減しろよ。」
と高田健志が言うと、おまおじは高田健志の脇腹をトゥーキックで蹴飛ばした。当然、高田健志に耐えがたい苦痛が襲いかかる。
「ぐあぁああああぁあアアァァアァアッッ!!」
痛みのあまり、高田健志は無様に叫ぶ。その様子を見て、おまおじは心底がっかりした様子だった。
「……はぁ」
がっかり、という言葉では弱い。
おまおじはこのとき、絶望していたのだ。
勝ち誇ってもいいはずのこの状況で、おまおじは、敗北している高田健志を差し置いて、この世で最も絶望していた。
その理由は、彼の信仰心ゆえだ。
「なあ建志。俺は多分、この勝負で負けたかったんや。」
「……?」
高田健志は必死に痛みを治しながら、おまおじの言葉を聞く。
「俺はこの戦いで絶対に勝つと誓った。高田健志を超えてやるんだと誓った。でも、今、戦いを進めていくうちに分かってしまった。俺は明確に高田健志を超えてしまったんや、と。それで俺は喜べばいいのに。なぜか心がもやもやしてきたんや。」
おまおじの目から、狂気の血の涙が溢れる。
「そこで気がついた。俺は、絶対的な神である『高田健志』を崇拝していたんだ。神話的で、絶対神で、ダーク高田健志や俺みたいなのがいくら頑張っても届かない、そんな完全なる高田健志を崇拝してたんや……!」
血涙は滝のように流れた。ぼとぼとと、グロテスクな音を立てて滴る。
「だけど! お前は完全じゃないッ! 俺なんかに負けるようなゴミだったんだ!」
「ぐはっ!」
おまおじは、ぐったり寝そべる高田健志の胸をかかとで踏み潰した。高田健志に、これまでで一番の苦痛が襲う。
おまおじは、動けない高田健志の胸にかかとを落とし続ける。狂気的な怒りのままに。
「お前は!」
「ただの!」
「ちょっと強いぐらいの!」
「ゴミだった!」
「俺が!」
「信仰してたのは!」
「ゴミだったんや!」
「アハハハハ!」
「こんな!」
「ゴミが!」
「俺の人生を……」
おまおじは最後に、一番の力を込めて、高田健志の胸目掛けてかかとを落とした。
「メチャクチャにしたんやッッ!!」
高田健志の胸はつぶれ、もう動かなくなった。
おまおじは飛び上がり、高田健志を見下して、神の気を込める。
「高田健志……俺にとってお前は生きがいだった。お前を殺して、全てを滅ぼす。そのあとに俺も死のう。」
おまおじは左手から、気功波を放った。
「さようなら、俺の青春……! 『ユニコーン』ッッ!!」
放たれた気功波は槍のように尖って、空を切り裂き、高田健志に向かう。
「……。」
高田健志の身体はもう死亡しているものの、思考はまだ生きていた。高田健志は自分に向かってくる大技、ユニコーンを眺めて、ただ後悔していた。
(……俺にもっと力があればな。神失格だ。)
高田健志の頭に、地球の民たちの顔が浮かんだ。
その中には、おまおじの顔もある。
高田健志は、おまおじを含めた皆を救えない、自分の無力さを恥じた。




