Ep.11 小話集2 ヒロインの受難
過去に書いた拍手ボタンを押すと出るお礼画面の小話のひとつです。
(随分前に書いたので温度差があります)
第一師団に入って、リディアには耐えられないものがあった。
それは団長崇拝者たちよる熱意あふれる男たちの熱い扱きだった。
別に訓練は、いいんだけどさ。
十二歳の夏。
混沌の地下迷宮という古代遺跡地下深層の訓練後のこと。
「よく乗り越えられたな、これからはお前も俺たちと同じこの魔法衣を纏うことを認めてやる」
一応、上級メンバーになるための試練だったらしい。
地上に穴蔵から泥まみれで上がってきたリディアに、その時のリーダーが仁王立ちで告げる。
結構な側近でディアン崇拝者としてはかなり暑苦しい。
リディアは、膝に手をついて呼吸を整えた後、顔を上げる。
「別にいらない」
彼が示すのは黒ずくめの衣装。第一師団のディアン側近メンバーのシンボル的なもの。
「わたしの魔法衣は翠色でいいし。黒、好きじゃない」
「は!?」
「ディアン先輩とお揃いとか。キモいんだけど」
彼のゴツい顔が真っ黒になる。そして、彼の額に青筋がたった。
***
「しんっじられません!!!! あの小娘っ よりにもよって、キ、キモイとか」
青筋を立てて怒るゴツい男に、ディアンは迷惑そうに顔をあげた。
匙でまぜていた鹿肉のシチューを自分の手元に引き寄せる。
「唾が入る、叫ぶな。それにちけーよ」
「は!申し訳ありません、ですがあの娘――教育が必要では」
「ほっとけよ」
「は?」
一層迷惑げにディアンは、眉をしかめる。
味が濃い。古くて硬い肉を、塩でごまかしたな。
保存用の肉なのはわかるが、塩抜きも不十分だ。ワインもケチったな。
「あいつのことはほっとけよ」
ていうか、とディアンは続けた。
「なんでお前ら、黒ずくめなの? キモいんだけど」
血の色も汚れも目立たなくていいし、色の組み合わせを考える手間もない。いつのまにか黒ばかり着ていたら、周りも黒ばかりで統一してきて、正直キモいしウザい。
「――真似すんなよ」
顎がカクンと開くその顔に、なんなんだとディアンはしょっぱいシチューを飲みほして、皿をおいた。
――あとでディックから、そいつのリディアへのしごきがひどくなった。崇拝者の人心をちゃんと掌握しろと文句がきた。
結局、崇拝者の要望をディアンが聞き入れたため、黒ずくめ衣装が第一師団の正式戦闘服になりました。けど、最後まで従わなかったヒロインです。




