第88話 思い出
夢中になってかぶりつきあっという間に食べてしまった。
「・・・・はぁ・・・・」と口の周りの脂を拭く。
「いい食べっぷりでしたよ」と笑いながら言う美琴さん。
「本当に美味しかったです。今まで食べた鳥肉メニューの中で一番ですね」と感想を言うと、
「そんなに喜んでもらえて良かったです。家で焼こうとしてもなかなかこんな風にならないんですよね。私もここの鳥は大好きです」
感想を言い合っていると「おまたせしました」と鳥飯が来た。
「締めのご飯ですね」と茶碗を手に取るといい匂いがする。錦糸卵が乗って、薄く色が付いたご飯は肉を食べた後でも食欲をそそる。箸で食べるとフワッと鳥の香りがして優しい炊き込みご飯。
「旨い!」どこか懐かしい感じがありながらも絶品。久しぶりに美味しい炊き込みご飯を食べた。
お吸い物もいただき、「はぁ・・・・・」と息をつく。
美琴さんも「さすがにお腹がいっぱいです」と箸を置く。
「「ごちそうさまでした」」と店を出て車に乗る。
「美琴さんに連れて行ってもらったお店はどれも美味しかったです。ありがとうございました」と言うと、
「地元にずっといると当たり前になっちゃうんですけど、そう言ってもらえて良かったです」と美琴さん。
家の近くまで送ってもらい、週末の花火の約束をする。
「じゃあまた、日曜日に。おやすみなさい」と挨拶をして別れる。
美琴さんと花火を観て、短い夏休みが終わり東京に戻った。
まだまだ暑い東京でも変わらず朝から蝉が鳴いている。
スーツに着替えて部屋の扉を開けると、扉につけているカンカン石のチャイムがチリリと鳴った。
音を聴いて石に目をやり、そのまま扉を閉める。
「行ってきます」と母親に声をかけ、玄関を出るとじめっとした空気に包まれる。
気持ちで負けないように上を向き、青い空の向こうを見つめる。
「美琴さん、俺、頑張ります。次にまた会える時を楽しみに・・・・」
一歩踏み出すその背中に迷いはもう見えなかった。
これで完結となります。
香川にはたくさん美味しいものがありますので、
ぜひ皆さんいらしてください。




