第1話
学生の懐事情に優しい学食のランチを食べ終え、午後の時間をどうするか考えながら歩いていると「健太、お前面接どうだったー?」と俺の首に腕を回しながらニヤニヤ絡んでくる奴が来た。同級生の宮井彰人だ。
「何だよ。分かってんだろ」と鬱陶しそうにその腕を振り払う。
「そうか、やっぱりお前も駄目だったか」と、どこかほっとしたように言う宮井に「うっせぇなぁ」と横を向く。
「何か少子化で就職には困らねぇって話なのに何で、俺らは決まらねえんだろうな」と宮井もどこか寂しそうに話す。
俺の名前は中山健太。大学4年生の22歳。現在就職活動真っ最中。っていうか、まだ決まっていなくて焦っている最中。宮井は別として内定をもらっている友達も増えてきた。決まった友だちは『会社に入ったらこんなことやるんだ』とか『福利厚生がしっかりしてるから休みもたっぷりだぜ』とか一つ先の話をしていて、そのスタートに並べていない俺はとても焦っていた。
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休日でもゴロゴロしてやる気がない俺に「健太。最近顔色が悪いわよ。就職活動そんなに大変?夏休みのバイトも無いんだったら、ちょっと気晴らしにおじいちゃんの所にでも遊びに行ってみたら」と母さん。
「じいちゃんのとこ?」とソファに寝そべったまま、顔だけ向けて聞く。
「そうそう、前に行ったのはいつだったかしら。ずいぶん顔を見せてないから、就職して忙しくなる前に行って来たら?」
(だからその就職が問題なんだって・・・・・)と思いながらも、息が詰まる生活だったのは確かなので、夏休みの期間を利用して行ってみることにした。
じいちゃんとばあちゃんが住んでるのは、本州から瀬戸大橋を渡って瀬戸内海が見える香川県坂出市。四国に渡るには徳島と愛媛にも橋が架かっているが、電車が通っているのは瀬戸大橋だけだ。『世界一長い鉄道道路併用橋』としてギネス世界記録に認定されているらしい。
子どもの時初めて橋を渡った時は、海の上を『ガタンガタン』と電車で走ってる事やキラキラ光る海にすごく感動した記憶がある。
東京から新幹線で岡山に行きそこで乗り継いでマリンライナーに乗る。
『海が見たいなら、こっち側の席だったな』と窓際に座る。夏休みなのもあってか、子ども連れや大きな荷物を持った人が多い。
穏やかな海を見ながらゆっくり過ごしたい方にお勧めです。




