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月季はそんな鬼道丸をしばらく見ていたが、やがてぽつりと言った。
「お前はいつもどうやって人を占うのだ」
「どうって、俺は占いの技なんて知らないから、大概はでたらめさ。口からでまかせを言って、何とか客を丸め込む」
「それでよく客が納得するな」
「するわけないよ。だから、よく文句を言われたり殴られたりもする。でも、そんなことには慣れっこだ。とにかく、銭が稼げりゃいいんだから。でも……時には当たることもあるんだぜ」
鬼道丸はちょっと鼻をうごめかせて付け加えた。
月季は不審げに眉をひそめる。
「でも、どうやって?」
「たいていの連中の悩みってのは、恋しい相手の気持ちがわからないとか、結婚したいけど相手が見つからないとか、どうやったら楽して金が稼げるかとか、そういうことだ。そんなの俺の知ったことか。でも、時々こんな奴がいる」
鬼道丸はふいに声を落として囁いた。
「最近どうも肩が凝って堪らないとか、頭痛や眩暈がひどくて辛いとか。そう言う奴らの後ろには、死人がくっついていることがあるんだよ」
「死人?」
「そうだ。俺にはそれが見えるんだ。それだけが、俺の持ってる唯一の特別な力さ。そういう奴らをよく見てみると、たいがい肩の辺りに恨みがましい目つきをした死人が負ぶさっていたり、頭にしがみついていたりする」
鬼道丸がおどろおどろしい口調をわざと作って言っているのに、月季はまるで怖がりもせず、逆に頭を捻りながら難しい顔で問うた。
「その者たちは、一体何をしているのだ?」
拍子抜けした鬼道丸は、はあっと溜め息をつきながら答えた。
「何かその人間に恨みでもがあるんだろうよ。それで、その気持ちが執着となって、死んでも憎い相手から離れられないのさ。多くの人間は死ねばあの世へ昇って行けるってのに、この世の想いに縛り付けられて成仏できないなんて哀れなものだ」
「でも、それでどうして病になる」
「生きている人間に見えなくても、そんなものが重々しく上に乗っかっているんだ。肩が凝ったり、頭が痛くなったりしても当然だろ」
「そんなものか」
「まあ、それだけじゃない。例えば、以前こんな話があった。ある男がやってきてね。自分の家では子供が生まれても育たないって言うんだ。男の子も女の子も、みんな三歳になる前に死んでしまう。で、その男を見ると、後ろには男や女の死人がそれこそ何十人もぞろぞろついて歩いてた。それで聞いて見たんだよ。たくさん人を殺したりしてないかって」