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朝を告げる雀のさえずりで、鬼道丸はようやく目を覚ました。
腕を上げてぐいっと伸びをすると、拳がごつりと石にぶち当たる。
目を開けてみると、それは一条戻橋の橋桁を支えている礎石だった。
その傍らには、あの月季という女童が、昨夜のままの無表情な顔で座っている。
ああ、やっぱり夢じゃなかったのか。
鬼道丸は絶望のあまり、思わずまた目を閉じてしまった。
昨夜はあれからすぐに橋の下へ潜り込んで、これからのことを考えようとしたのだが、疲れていたせいかすぐに眠り込んでしまったらしい。
抜き差しならない自分の立場を思い出して、鬼道丸は頭を抱えながら唸り声を上げた。
その声を聞いた月季は、微塵も表情を変えずにこちらを振り向いて言った。
「起きたのか。では、これからどうする?」
おはようとか、よく眠れたかとか、そういう挨拶くらいはないのだろうか。
鬼道丸は恨めしげに月季を睨みつけた。
だが、月季は真っ直ぐな目で鬼道丸を見つめたまま、抑揚のない声で続ける。
「旦那様が、お前の手助けをするようおっしゃった。だから、わたしのできることなら何でもしよう。やって欲しいことを言うがよい」
見た目だけでなく、話す声音もこの上なく可愛らしいが、月季の言葉はまるで生真面目な役人のようにきっぱりはっきりとしていて情がない。
でも、旦那様って。
「お前、あの爺さんの孫じゃないのか」
「あの方はわたしの主人だ」
「そうか、あの爺さんの小間使いでもしているんだな。そんなに幼いのに、ご苦労なことだ。親や兄弟はどうしている?」
「そんなものはいない」
「孤児か。俺と同じだな」
鬼道丸は急に月季が哀れになった。
屋敷奉公なら、こんなところでいんちき辻占なんてやらされている自分よりずっとましだが、それでもこんな年端も行かないうちから働くなんて可哀想だ。
「辛いことはないのか。あの爺さんは良くしてくれるのか」
「旦那様さえいれば、他には何もいらない」
「ほお、よっぽど好かれたもんだな。そんな素敵な爺さんには見えなかったが。それに、お前をこんなところに置き去りにするなんてひどいじゃないか。俺が人攫いだったらどうするつもりだ」
「そんなこと、わたしは構わない。それに、何かあっても旦那様が何とかしてくださる。それより、お前、少しは考えたのか。どうやって病を治すつもりだ」
「それなんだよ」
鬼道丸は再び頭を抱えた。萎烏帽子が曲がるのもお構いなしに髪を掻き毟る。
「一体どうすりゃ良いんだ。相手の名前もわからないのに」




