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八話目じゃ

 修学旅行中日、夜。食事後のお風呂場にて。

 心達七人はゆったりと室内風呂につかっている。

 杪は誰がどうやって盗んだかは分からなかったが、兎も角も下着が戻ってきて素直に喜んだ。

 乃野は後ろからゆっくり慰夢に近付く。

「乃野さん、なんです?」

 それをあっさり見破った慰夢は、後ろを振り向かずに聞いた。

「やっぱりバレるのか。一つ、泥棒以外の事で気になる事があって」

 そこで慰夢は振り向いた。そして首を五度程傾ける。

「なんで慰夢ちゃんは指紋を取る道具を持っていたの?」

「その事ですかです。それは、秘密です」

「秘密」

「ですが、乃野さんはどうすればできると思うです?」

「えっと、最初からああなる事が分かってれば」

「そういう事です」

「なるほど。そういう事……って」

 あっさりと種を明かした慰夢に、乃野は危うく納得してしまう所だった。

「それじゃ、何で事前に分かったの」

 慰夢は真顔でじっと乃野の喉を見た。

「乃野さんは知っているはずです。去年噂された七不思議をです」

 言いながらその視線はだんだんと下がり、鎖骨、胸、臍、そして。

「どこ見てるのよ」

 乃野はそれに気付いて両足を共に左に寄せた。

「惜しいです」

 ぼそっと慰夢は呟いた。その後明るく言った。

「まあ、ここまでにしますです。私は上がりますです」

 そして立ち上がり、体を軽くシャワーで流して出ていった。

 美久はそれを目で追っていた乃野の隣にくる。

「何か分かったか?」

 乃野は視線を美久に向けて、首を横に振った。

「あんまり。あの指紋を取る道具を持っていた事なんだけど、前から分かってたんだって。なんか七不思議とか言ってたような。私が知ってるらしいんだけど。でも犯人については聞けなかった」

「そう」

 声のトーンが一段階落ちた美久は続ける。

「乃野はもしかしたら知らないかもしれねーな」

「何を?」

「去年の文化祭が終わった辺りから、妙な噂が流れ始めたんだ。まー、いくつかが確かなんは私も知ってるが。でだ。その中に予知の能力を持った二年生の事があった」

「二年生って」

「いや、去年の二年生だから、今は三年だな」

「そうなんだ」

「もしかしたら、私達の知らない世界が本当にあるのかもしれんな」

 そんな二人の会話を秋見は聞いていたが、内容が他愛もないものになるとそっと音も立てずに風呂を上がっていった。

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