六話目なの
修学旅行中日、午前。今日は五、六人のグループで観光する。
「はっちーーーー!」
前橋源は、今まさに抱きつこうとしてくる大阪千賀を軽くよける。
三上香美佳と国柳聡美、そして井田峰治の三人は、その様を離れた所から見て見ぬふりをしていた。
避けられた千賀は勢い余って顔から地面に突っ込んだ。そしてすぐに立て直る。
「何でよけるのよ」
千賀に聞かれた源は、しばらく考えてから答える。
「よけてほしくない、と」
それを聞いた千賀は首を縦にグルングルン振る。
「分かった。こい」
身構えた源に、もう一度飛び付く千賀。
だが源はそれをもよけた。
さっきと同じように地面に突っ込んだ千賀を差し置いて、香美佳は全員にタクシーに乗るように促した。
「調べておくです」
慰夢がそう言ったのを聞いて、心達六人はタクシーに乗り込んだ。
下着泥棒の犯人が分かったと言う慰夢は、今日の夕食の時に教えてくれるそうだ。
「何で今教えてくれんのや」
バンのタクシーに杪の溜め息が広がる。
「ほんと、何でだろーな」
美久がそれに同調し、乃野や心や玲も頷いた。
秋見はただじっと考え込んでいたが、顔を上げ呟いた。
「彼女なり、の気遣い、かもだ、ろう」
どういう事か分からない五人は、秋見に聞こうとして、しかし秋見が続きを話出そうとするのに気付いて口を閉じた。
秋見は続ける。
「犯人、は私も分、かった。同窓、生だから、言い難い」
その言葉に、一同は唖然とする。
「犯人が、同じ学校の、生徒?」
乃野の言葉に頷く秋見は、珍しく更に続ける。
「名前は、言えない。けど、慰夢に任せ、て。大丈夫、だから。慰夢が、言わないのに、も理由が、あるから」
「はい、それじゃあ、この話はここまで。折角の最後の修学旅行なんだから、楽しまなくちゃ」
暗くなりかけた車内は、心の言葉で随分と明るくなった。
「でも、行き場所がK市っていうのはどうでしょう」
玲は折角明るくなりかけた雰囲気をあっさりと崩しかける。
「まあまあ、二度目だからこその通な場所に行くんだから。良いじゃない」
取り繕うように乃野がそう言い、続けるように運転手が助け舟をした甲斐もあって、六人は充実した一日を楽しく過ごした。




