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違っても一緒。

 私の意図を汲むと言うのなら、今の一言も分かってくれる筈。振り返った私を彼はじっ、と見詰めた。

 「私の気持ちだけを話しても変わらない。私はもう一度、友に会わねばならない。あの男がこの世界と住人の間で捻じ曲がった介在を続けていると判断したからな」

「じゃあ……」

 レブはロボの言い分を信じるんだ。フエンテ内の第三勢力が、今の過激派と穏健派に潰されたという話を。

 「それに、あの勝ち方と負け方をしたのだ。生きていたのなら向こうから現れるのも間違いない」

 目を伏せたレブは半ば呆れた様に溜め息を洩らした。あのカドモスというレブの友人であるテーベの竜は私とレブを明らかに侮っていたのに、レブが本気を出した一撃で沈んだ。

 「……誇りを傷付けられた?」

 「それは無いな」

 口に出してから私も思った。あの竜人、カドモスはレブに対して最後は見事と言って倒れた。それに、短い時間だけど話をしていてレブに対してそんな考え方をしそうには見えない。だけど口に出したのは寧ろ……。

 「寧ろ、私達をそんな理由で狙うのは双子の残りだ」

 「うん……」

 以前、フジタカがライさんと模擬戦をしていた時に言っていた。あんなに殺意を向けられたのは初めて、と。私だってそうだったかもしれない。人からあれだけの憎悪を向けられるなんて。

 アルパの時、エルフから向けられたのは行き場の無い昂った感情だ。原因も、私達ではなくフエンテのアマドルとレジェスが作ったもの。だけど今回は私とレブがベルナルドをあの状態にしたんだ。それは決して忘れてはいけない。考えながら私達は歩みを進める。

 「私の考えは既に聞かせた通りだ。さて、次は貴様の方針を聞かせてもらおうか」

 二人で契約の儀式を行った広場まで来て、レブは私に考える時間を用意してくれた。立ち止まって腕を組むレブに私は振り返る。

 「決まってるよ。私はムエルテ峡谷へ向かう」

 「………」

 こちらを見下ろすレブを見て、どこか気まずくて私は頬を掻く。

 「ごめんね、せっかく話してもらったのに」

 「いや」

 レブは首を横に振った。

 「私は先に言ったぞ。話しても変わらない、とな」

 「読まれてたんだ」

 考えている事は違っても、一緒に同じ方向へ進むと言う事は変わらない。

 「あの王子がいなくなったのは貴様の責任ではない。カスコがこんな状態になった事、犬ころの父親を逃がした事、貴様や契約者が理不尽に狙われる事も合わせてな」

 「………」

 こんな風に言ってくれるだけで、どんなに気が楽になるか。きっとそこまで彼は知らないと思う。

 「対して状況は貴様を無視するだろう。あの双子の片割れに狙われ、場合によってはカドモスまでもがけしかけられる」

 「うん」

 降り掛かる火の粉ならレブが払う。私だって黙ってやられるわけじゃないし。

 「だが、貴様は引き返さない。引き返したとしても同じ目に遭うと分かっているのなら前進するのがザナ・セリャドという召喚士だ」

 「レブ……」

 迷いはする。自信や責任感だってまだまだ自分だけでは強がりになってしまう。

 「王子は私達だったら助けられたかもしれない。フエンテはやっぱり怪しいと思うよ?だけど、ロボが自分の召喚士を助けたいって言ったのは嘘じゃないと思う。予防線があったとしても、その召喚士を助ける為に私達にわざと捕まったロボを……フジタカのお父さんを信じてみたいんだ」

 だけど、決して一人じゃなかった。

 「思うままにすれば良い。必ず私が支える」

 「ありがとう、レブ」

 こんな風に無茶を言う私の隣でこんなに頼もしい事を言ってくれるレブがいる。それに、他の皆もいてくれた。だから私は今もボルンタ大陸からガラン大陸なんて遠くまで来られているんだ。

 「まったく、分かり切った話をするのに随分と歩かされたものだ」

 崩れて痛ましい石垣や建物の被害状況を見ているのかレブの目線は時折動いていた。警戒もまだしてくれていたみたい。……私はただぼんやり歩いてしまっていたから、これもレブに余計な負担を背負わせた事になるのかな。

 「ごめん……」

 「謝る事ではない。考えを整理するのにこの空気は頭を冴えさせる」

 確かに、この冷えた空気を吸うと頭の芯まで冷えてくる。絡まっていたあらゆる思考をレブに吐き出しながら纏め直すにはもってこいだったかも。

 「……所長も、少しは落ち着いてくれたかな?」

 「さてな」

 レブはフジタカに掴みかかったチータ所長に頭を冷やせと言い放ってしまった。すぐに私達もあの部屋から出たけど、所長はかなり興奮していた。一人にして大丈夫なのかな……。

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