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捕縛。

 「すみません、私とレブで……」

 「こちらで追い掛けます!お嬢さんはカスコ支所へお戻りください!」

 私の肩を強引にカスコの召喚士が掴む。その姿を睨む様にしてレブが尾を振り石畳を叩き割った。

 「我が召喚士に気安く触れるな……!」

 「なに……!?」

 レブの態度に召喚士達が眉をひそめた。話をしている場合でもないのに!

 「私達にも行かせてください!」

 「……不要です。そのインヴィタドを連れてすぐにお戻りを」

 チータ所長と同じ事を言われた。しかも、言葉遣いこそ丁寧にしているが今度はもっと敵意を露わにした上で。

 「お前らの実力では捕縛できない。だからこちらで行く」

 サラマンデルやオンディーナを数だけ用意してもベルナルドは止められない。勿論、もっと強力なインヴィタドを彼らも持っているかも。

 「姿なら確かにこの目で見ました。私達で必ず捕まえて見せます!」

 見誤っているのはどちらなのか。召喚士の男性もベルナルドの姿を見たと言っている。だからって……。

 「この騒ぎ……持ち込んだのは私達かもしれないんです。だとしたら、やっぱりお任せするのは……無理です!」

 私が言い切ると同時にレブが翼を広げた。召喚士三人がその羽音を聞いてこちらから目を外した隙に、私は三人の横を通り抜けて彼の腕に飛び込む。レブが高く飛び上がっても三人は呆然とこちらを見上げているだけ。下りろと命令もなければ、追ってくる様子も見せない。

 「勝手な真似は慎めっ!」

 しかし、代わりに真正面から不意に声が張る。風圧に細めた目を開けると、目の前に二頭のペガソが翼をはためかせていた。

 「ザナ!なんでお前がここにいるんだ!」

 声を張った主、チータ所長の腰に抱き着いていたチコが顔を覗かせる。チコの顔を一瞥してチータ所長はこちらを剣よりも鋭く、冬の凍て付く寒気をもしのぐ冷たさを宿した目で射貫いた。レブは気にした様子も見せずに彼女達から顔を背ける。

 「話は聞こえた。それ以上進むのなら武力を以て止める」

 チータ所長からの脅しにレブは鼻を鳴らす。

 「できるとは思えぬな。肉塊になりたくなければ退け」

 「……それが君の意志か」

 レブではない、私にチータ所長が声を掛ける。

 「言った筈だな。契約者を守りたいのなら留まれと。それに、カスコの召喚士だけでこの事態は対処できる、と」

それを無視した上で、何をしている。言われている事が何かは分かっているつもりだ。話している間に、目下に居た筈の召喚士三人は整列していた。

 「主犯は、ロボだけじゃない!それ、で……」

 口を開きかけた私の視界にもう一頭のペガソが目に入る。そう、最初は一頭だけだった筈のペガソがもう一頭増えていたのだ。

 しかも新たなペガソの手綱を握っていたのは、フジタカ。

 「あ……」

 フジタカは黙って何も言わずに横で俯いている。その彼の後ろに何かが乗っていた。

 ぐったりとした人型で微動だにせずペガソの背中に横たわっている。人型とは言うが、尻の部分からはふさふさの毛に包まれた尾が垂れていた。どうやら獣人、らしい。

 「フジタカ……それ……。その人……」

 コクン、と頷いてフジタカが顔を上げた。

 「気を失っているけど……親父だ」

 見えたフジタカの顔は、今にも泣き出しそうだった。

 「……君とその竜人は私の力を見くびっていたという事かな」

 フジタカを余所に、勝ち誇った顔でチータ所長が動かないロボを親指で差す。どうやら、倒したのはフジタカじゃない……?

 でも、ロボにはフジタカと同じ力があった筈だ。それに対抗できるのは、やはりフジタカだけ。それを所長はいとも簡単に、この短時間で攻略して倒した……。

 「………」

 レブは口を開こうとせず、静かにチータ所長を見ている。ベルナルドに対してかなり気を荒くしていた筈だけど……。

 「私ならば。いや、私達ならばこの通りだ。君達が手こずってきた召喚士の集団……フエンテとやらも容易く下せる。向こうは力量を知っていたから今までは私達の前に姿を見せなかったが、今回は愚かしい行いでその力を勘違いした」

 だから、とチータ所長は続けた。

 「おかげで炙り出せた」

 「そんな……。だったら、イサク王子の件はどうするんですか!」

 王子の名前を出すとさすがにチータ所長の口元から笑みも消えて、逆に下を向く。

 「人質、か……。本当にどこまでも手間を掛けさせられる」

 仮にも仕える主に対してもその物言いは容赦が無い。無論、本人に直接は言っていまい。だって、言って通じていたのならあんな事にはならないだろうし。

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