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出会いは外で待っていた。

 寝息とかで寝ては覚めてを繰り返していたのも気付かれていたんじゃないのかな。若しくはレブ自身もよく眠れなかったとか。

 「もう起きるよ。支度するね」

 「急ぐなよ。町は逃げぬ」

 急いでるように見えたんだと思い、私は笑った。

 「果物屋さん、もうやってるかな」

 目当てが何かは言うまい。だけどレブは立ち上がると一人、部屋の扉へ向かう。

 「外で待つ。早急に準備を終えた方が良い予感がする」

 「はいはい」

 どうやらレブの知る果物屋さんは逃げるらしい。レブがいなくなってから私は身支度を終えてウーゴさん達の部屋に向かった。

 「すみません、無理を言って」

 「こちらもカスコを見て回りたいと思っていたところですから」

 外で待っていたレブと合流し、私達は地図を片手に当てもなく歩き出していた。ウーゴさんとライさんを連れ出したのはレアンドロ副所長が言っていた単独行動をしない為。チコとフジタカは昨日出歩いたみたいだったし、ウーゴさんとライさんも私は気になっていた。カスコの召喚士に案内してもらうにしても、なんだかのびのびと召喚術を学んでいると言うよりは、本気で自分の身に付けたい術に没頭している様だった。声を掛けるなら見知った相手の方が良い。

 「ふぁ……あ」

 身支度こそ整然としているがライさんは眠そうに大きな欠伸をした。開いた口は私の頭頂から顎先まですっぽり収まるのではないかと思うくらい無防備に広げている。

 「具合悪い、とか?」

 「違うよ」

 聞こえているにしても、本人よりもまずは召喚士に。名前は出さずに歩きながら尋ねるとウーゴさんは苦笑した。

 「昨日はほとんど丸一日寝ていたんだ。……まだ寝ていたいぐらいらしい」

 「そうですか……」

 久し振りに寝惚けるライさんを見ているんだ。まぁ、今は待機しかできないしね。

 「いつまで待たされるんでしょうね」

 「城に行っているらしいから、あと数日は戻らないらしい」

 誰から聞いたのかウーゴさんが城を見上げて呟いた。向こうは私達と住む世界が違う。でも、このカスコで住む世界の違いってどう影響するのかな。

 契約者の儀式を執り行うにしても急な訪問だったからカスコでは契約者の来訪を告知して回っているらしい。昨日行われたばかりだが、契約者の情報だからか広まるのは早いぞとチコが言っていた。その間に、所長も戻ってくれればいいのだけど。

 「見付けた」

 「思ったよりも遠いね」

 レブの一言に私は硬貨を取り出す。しかし、そこにあったのはレブの好物であるブドウを扱う店ではなかった。

 「あれ……」

 「いやぁ、お目が高い!僕とミゲルの店に……うん?」

 白壁の目立つ建物の前に太った狐の獣人が一人。私達が足を止めた事に気付くと、背後であるにも関わらず素早く聞き付け耳を向け、遅れて体も向き直る。

 私は、と言うかレブも後姿で気付いた。だけど小太りの獣人は私を見て数秒固まる。

 「……ザナ、ちん?」

 「はいっ!」

 特徴的な呼び方をした相手は忘れもしない、私の首飾りも加工してくれたリッチさんだった。

 「う、うぉぉぉお!ザナちん!?なんで!?」

 まさかカスコで再会するとは思っていなかったのだろう、予想外の相手にリッチさんは元々大きな地声を更に張り上げた。

 「リッチ!近所迷惑だろう……がぁぁぁ!?」

 続いて建物から出てきた赤髪の男性も私の姿を見てさっきのライさんの様に大口を開ける。すぐに飛び出して私とレブをまじまじと見た。

 「お久し振りです、ミゲルさん」

 「あ、あぁ……。トロノのザナちん、だよな?カルと一緒にいた」

 リッチさんの召喚士であり、相棒のミゲルさんも髪は若干伸びた様だった。得意先の客は他にたくさんいるだろうに、私の名前を覚えていてくれたのはひとえにレブのおかげ、かな?

 「……アンタ、その……」

 「我が召喚士の首飾りの件では世話になった」

 ミゲルさんは見ているだけだったが、恐る恐るリッチさんがレブに声を掛ける。そう、記憶にあるレブと今のレブの姿がこの数か月で別人に変わっていたからだ。

 「これ、今も大事にしてますよ」

 上着の中から首飾りを取り出して見せる。レブが言っている鱗の首飾りなら今も肌身離さず持っていた。リッチさんも自分の作った装飾品を忘れはしなかったのかすぐに耳をピンと立てる。

 「それ!じゃあやっぱりアンタがザナちんのインヴィタド……?」

 「アラサーテ・レブ・マフシュゴイだ」

 今更自己紹介という仲でもないだろうに、レブは珍しく自分から名前をしっかりと名乗った。リッチさんも半信半疑の表情がどんどんとにこやかに崩れていく。

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