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下心を覗かせて。

 「そこまでする程のもんじゃないよ。ニクスさんの羽も挟んでるし、痛みはほとんど無いんだ」

 そうは言うけど、剣を握れないとか簡単に弾かれたりはしないのかな。本人が平気と言うならこっちもこれ以上は強く言えない。

 「ニクス様の羽って便利だよね。便利なんて、本人には言えないけどさ」

 いつか効果が切れると思いきや、フジタカの貰った羽は船酔いの時からずっと持っているものだ。私はウーゴさんに一度あげて、新しいのをもらったにしても何日経っても効果は衰えていない。

 「竜の回復力にニクス様の羽を合わせたら怪我をしても万全じゃない?」

 「ふむ……」

 って、レブを傷付けられる存在なんて……。

 「悪くない考えだ」

 「え……」

 考え無しに振った話だったがレブは受け入れてしまう。繋がっている私はともかく、頼れるのは自分の力のみ!なんて言いそうだったのに。

 「明日はお前らが何をしていたのか教えてくれよ」

 チコも私達が何をしていたか興味はあるみたい。

 「だったら、今から見る?」

 だけどそんな悠長は話をせずとも、私達の一日はまだ終わっていない。

 「面白い一室を見付けたのでな」

 レブと目が合い笑う。見るだけなら、と二人は私達に続いてカスコ支所の中を歩いた。

 夜になると廊下も当然暗くなる。しかし歩きにくいとは感じない。他の部屋から怪しい光が漏れ出ているからだ。

 「桃色のライトってなんかいかがわしいよな」

 「なんで?緑とか白の方がやらしいだろ」

 通り過ぎた部屋の隙間から桃色の光が漏れていた。それを見たフジタカは妙ににやにやしていたが、内容にチコは首を傾げる。返答にフジタカも食い付いた。

 「おいおい?白がエロいって……。陽の光も?」

 「いや、そうじゃないけど……なぁ?」

 こっちに話を振らないでよ。……でも。

 「レブの世界ではどうだったの?」

 興味はちょっとあるかも。住んでいる世界や国で色の捉え方も違うのなら、レブにだってあるでしょう。

 「………」

 答えない。そこでフジタカが足を止めた。

 「……紫なんだろ」

 「へ?」

 フジタカのレブに対する読み取りは、ある意味私よりも鋭敏だ。答えてくれない理由がまさか……。

 「だからティラドルさん……」

 「奴はただの変態だ」

 苛立ち気味にレブが切り捨てる。でも、もう答えを言ったも同然だ。

 「スケベの塊なのか、デブ……」

 「色味で判断するな」

 だけど昨日まさぐりたいとか言ってたじゃん。……いや、まさぐり“合い”って言ってたから私もやらなきゃいけないんだっけ。

 「これはしばらくネタにできるな」

 「飽きないよね……」

 懲りないというか。フジタカはそういう知識を積極的にレブに伝えてるみたいだし。もう止めても無駄かな……。余計な知識ばっかり増やされている気がする。

 「あ、着いたよ」

 そのまま一階下りて、角を曲がって一つ目の部屋。私達が案内したかった場所に着いた。案内してくれた召喚士もカスコ支所内全ての中身まで把握できていないらしい。一覧も随時作成しているそうだが、あまりにも変化が日常的過ぎて処理も大変だと言っていた。

 「なんだここ……」

 建物の中に居た筈の私達は、扉を開けると夜の平原に立っていた。カスコもまた季節が冬に入っているのだが、この平原に吹いている風は生温い。夜なのに上着を脱がないと暑いくらいだった。

 「名も無き平原とカスコの召喚士は呼んでいるみたい。ずっと昔から使っている場所なんだって」

 名も無き平原が名前、ってのも妙だけど。召喚士の訓練場の一つとしてずっと使われているらしい。カスコ支所にはこうしただだっ広い空間に繋がった場所が他にも幾つかある。

 「これさ……勝手に壊しちゃまずい場所じゃないのか?」

 恐る恐る部屋の中に入ったフジタカが辺りを見ながらナイフだけ取り出す。振り返れば、原理は分からないが平原の真ん中に扉が一枚立っている。しかも、その扉の横は景色が広がっているのに決して移動する事ができない。見えない壁に阻まれ、一度レブが拳を叩き付けても無駄だった。

 「カスコの召喚士が長年使って、誰とも遭遇しなかった地で何を言っている。……地と呼んで良いのかも怪しいが」

 まだ来たばかりで試していないのだけど、直進しても果てがあると案内人にも教えてもらった。他の部屋も建物の構造を無視した広さの場所は珍しくないとも聞いている。

 「この部屋なら、思いっきり暴れさせられるから来たんだ」

 ティラドルさんの様な相手はいないけど、町から離れずに体を動かせる場所に転移できるのはありがたい。他の召喚士は自分のインヴィタドに最適な場所へ繋がる部屋を使っているみたいだし、人がいない時は私達で使わせてもらおうと思っていた。

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