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身を寄せ合って。

 目を見て言っても、レブは口を曲げて見下ろしている。

 「まるで私がまともに休めていないような言い方だ」

 そのつもりで言っているんですが。

 「……休めていないとしたら、貴様の方だろうな」

 魔法を使って、自分が私を起こしてしまった事も知っている。レブだって自覚していたんだ、やっぱり。

 「……止めよう?私達の間でも隠し事をしていても、意味ないよ」

 「それは……」

 こちらの提案にレブは乗り気ではない。話すつもりがあるのなら、彼なら最初から話してくれているからだ。だけど。

 「こんな探り合い……したくないよ。レブだってそうでしょ?」

 「………」

 後ろめたい気持ちがあるからそんな言い方をしたんだろうし。でも、本音を聞きたい。やや沈黙を保ってから、レブは頷いて口を開く。

 「あぁ、どうせならまさぐり合いたい」

 そうじゃなくて。

 「ふん、分かっている。もはや伏せてはいられまいな。貴様とはとうに繋がっているのだから」

 「そうだよ」

 こうしてずっと、魔力線を通して直接繋がっているんだ。魔力は正直で、私達の間に誤魔化しは通じないよ。

 「……自分を」

 レブが私の隣で遠い目をしながら口を開く。

 「自分を、強化したかった。カドモスの事もあったが、決定的だったのはあの犬ころの親が現れたからだ」

 胸の痛みに私が起こされる様になった時期と符合するとはすぐに気付いた。

 「そんなの……」

 今だってレブは十分に強い。その二回は相手がたまたま悪かったんだ。

 ……でも、その相手の悪さを気にしているんだ。そしてその相手とは再び会って、今度は勝たねばならない。

 「いいよ、レブ。……まさぐる方じゃなくて」

 言葉足らずだったかと思って言うと、レブは閉口して私を睨む。

 「貴様は私をなんだと思っている。そこまで餓えてはおらんぞ」

 餓えてないって言うけど、何もできない私しかいないのなら溜まっているんじゃないかな。仕組みはちょっと分からないけど。

 「魔力の事だな」

 「うん」

 私ができる事と言ったらこれくらい。魔力の調節だったら前よりもできる様になった自覚は持っている。

 「レブが満足するまで、搾り取っていいよ。……私じゃ、上手くはできないかもしれないけど」

 自覚と自信は違う。自信がないわけではないが、本気のレブを支えられないのは事実。知っておいてもらわねばならない。

 「……その一言だけで十分だ」

 しかしレブは何故かもう既に表情を緩ませていた。始めてもいないのに何を勝手に納得してしまっているのか。

 「それじゃ訓練にならないでしょ。言ったじゃない、二人で強くなろうって」

 口に出してからちょっと懐かしい響きだったな、と思う。最近は実戦続きで鍛錬や訓練なんて言っていられなかったし。

 「……そうだったな。口にしたからには付き合ってもらうぞ」

 分かってる、と言って私はレブに頷いてやる。

 「いいよ。好きで言っているんだし」

 私達の方針は決まった。二人で笑い合うとその日はそのまま眠ってしまった。レブにはもちろん、大きなベッドを使ってもらった。


 翌日、チコはフジタカを連れて朝からどこかへ出かけてしまった。設備の利用は許可したが単独行動は控える様に、とレアンドロ副所長に釘を刺された矢先の夕方にフジタカは怪我をして帰ってきた。

 「フジタカ……その手、どうしたの?」

 白い包帯をぐるぐると回して左手を覆っている。手を押さえてカスコ支所に戻って来たフジタカは明らかに嘘を吐いていた。

 「なんでもないって。ちょっと怪我しただけだからさ。あ、フエンテじゃねーぞ!本当だからな!」

 チコとフジタカの部屋に押し入って聞いてみたけど、レブだって簡単に見抜いている。声を大きくしてみても無駄だ。

 「話したくないのならこちらも聞こうとは思わない。だが」

 「戦いの時に使い者にならないのは許さぬぞ犬ころよ……。とかって言うんだろ?分かってる」

 完全に先読みされてレブは顔を背けた。フジタカの読みは的確だなぁ。

 「寧ろ、逆だと思ってる。戦う為に得た傷ってのは勲章なんて言えないが、糧にはなってくれるだろ?」

 お前だからこそ分かるだろ、と言いたげにベッドに座ったフジタカがレブを見上げている。その視線を無視できるレブではない。

 「お前の行く末を切り拓くのであれば、無意味ではあるまい」

 チコが隣にいながら何があったのか。彼もまた胸を押さえるだけで答えを教えてくれるつもりは無さそうだった。

 「フジタカ、ナイフで治そうとは思わないの?」

 見たところ、怪我をしているのは左手だけだ。大きさから言えば子犬の足の怪我よりも少し大きい程度だと思う。それならなんとか治せるんじゃないのかな。

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