第504話 倉庫内にて、女王様と話そう配信
――数日後。私とアレイスターは、ウミヅリ王国にやって来ていた。
ここでギジエ王子の方から、しっかりと対面で説明を受けてから、宝島へと向かう手筈になっているのだが。
「まさか、リイル王女が直接来てくれるとは……」
「久しぶりですね、ススリアさん。いつも兄、それに妹がお世話になっております」
港にある国営第八倉庫という待ち合わせ場所に行くと、そこにはギジエ王子の代わりに、リイル王女――このウミヅリ王国の現国王様が待っていてくれたのであった。いや、まさかリイル王女が来るだなんて、思いもしなかったよ、うん。
全身真っ白な肌のエビの魚人族である彼女の姿を見て、「なんで居るの?」とドッキリを疑ったくらいである。なにせ、護衛の騎士の姿もなく、たった1人で倉庫の中に居たからね。一介の王様がする対応ではないでしょう、これ。
「王宮で報告を待っていた方が良かったんじゃないの? ほら、こういう倉庫よりも、王宮の方が警備がしっかりしているでしょう?」
「いえ、それが宝島のせいで、精鋭達もいつの間にか人数が増えているので、そうとは言えませんので」
あぁ、そうだった。確か一般人だけではなく、その宝島を調査するために精鋭の騎士達がおよそ50名ほど行っているんだった。
帰った人数が100名以上増えているのならば、精鋭達の人数もそりゃあ増えているのも普通の事か。
「人手が足りていない所もあったので、優秀な人材が増えているのは正直ありがたい話ではありますが、だからといって30名近く、送った人数よりも増えているのですから……。正直、怖いというのが本音ですね」
「誰が増えたのかというのは、全く分からないと?」
「えぇ。きちんと名前を記入して記録していたのですが、いつの間にか、誰がやったかも分からない改ざんを受けておりまして」
結果として、帰って来たのはおよそ80名近くの優秀な精鋭達。
それぞれ王宮という、常に優秀な人材を欲する現場では重宝されつつも、誰が増えたのか分からないというのは、国王様としては心配だよなぁ。誰を信頼して良いか、分からないんだから。
今は普通にしていても、もしかすると悪魔がなんらかの行動をすると、敵としていきなり攻撃して来る可能性もあるし、信頼する事は難しい。かといって、追い出そうにも優秀な人材である事は確かなので、追い出すのも難しい、と。
「善人が増えているのなら良い。善良な人間として、こちらも接する事が出来ますので。
悪人が増えていても良い。何かしらの処罰と称して、こちらから離れさす事が出来ますので。
――問題は、善人でもあり、悪人でもある『ごく普通の人』が増えている場合ですね。為政者としては、一番対応に困りますよ」
そのため、明らかに宝島行く前で、悪魔の力の影響を受けていない事が確認されているこの私、錬金術師のススリアが一番安全だと判断。そのため、ウミヅリ王国の問題を他国の人間であるこの私に解決を求めた事、そして一番安全な人間の所で安堵したいという理由で、ギジエ王子ではなく、自分がこの場所へとやって来た。そういう事なのだとか。
「それは、信用して良いか困るって、難しいですね。でしたら、お兄さんも一緒に来ればよかったのでは?」
そう、そんなに心配なのだったら、ギジエ王子も一緒に来れば良かったのだ。少なくとも、国営とはいえ、倉庫に1人で来るよりかは、兄であるギジエ王子も着た方がマシと言える。
「……それは」
「それは?」
なんか言い淀む感じで、唇をごにょごにょさせるリイル王女。何を言うんだろうかと思っていると、「信頼が……出来なくて……」と彼女はそう答えた。
「兄は、ギジエ王子はススリアさんに助けを求めたんですよね?」
「――? あぁ、そうだからこそこうやって来た訳だけど」
こっちだって忙しいのに、こちらの同情を誘うように、通信で呼びかけて来るギジエ王子に、一言文句を言ってやろうかと思って来ていたのもあるからね。いや、実際にイスウッドからこのウミヅリ王国に来ている私が行っても、なんだけど。
「その兄が……実は"偽者"という可能性はないでしょうか?」
「なぬ? つまり、宝島に行って、いつの間にか増えていた人だと?」
私がそう確認するように言い、彼女はそれで合っていると応えた。
「兄は、ギジエ王子は海に行く事があります。配信のためと言って、海の生態調査など週に何回も行っています。そして、宝島は元々、兄が生態調査をするために用意しておいた道具が、いくつか置いてあったのです」
「……なるほど。そういう訳ね」
つまり、リイル王女は、ギジエ・ウミヅリ王子もまた、宝島に行って、その際に増えて来て、いつの間にか家族の一員として振舞っている偽者かもしれない。その可能性を疑っているのだ。
「私には、兄と暮らして来た記憶があります。『お魚ハート・いっちゃん』という名前で、昔から配信をして来たという、記録もあります。
しかしながら――相手は魔王ユギーの五本槍という悪魔。それくらいの改ざんも出来て不思議ではない。私はそう思ってしまうのです」
……いや、そう言われると私としても対処に困るんだけど。
「ともかく、これではウミヅリ王国内が混乱し続けてしまいます。
お願いします――どうか、私達をお助けくださいませ」
ぺこりと、リイル王女は、一国を預かる王様として、私にそう依頼するのであった。
ウミヅリ王国の現在の国王、リイル王女様
そんな彼女が、直々にお声がけするのは
それくらい大きな問題として考えている
ウミヅリ王国近くの島
そこに、五本槍の1人が居るって
怖いですよね
魔王の幹部が近くに居るって、
考えただけでもゾッとします(*´Д`)




