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鬼の武器

概要:ウィルの得物公開

『何で一発で成功しちまうんだよ……』

「嫌な言い方だな。まるで、俺が失敗するのを期待してたみたいじゃないか?」


 落胆の色を隠さないレッドの反応に、解せぬとウィルが文句をたれる。

 目の前には先程まで浮遊していた魔術具が落下した衝撃で破片を散らして、光を失った魔法陣の上に転がっており、ウィルは自分が行った鬼術の効果を実感していたのだが、それに水を向けられた気分だった。


『ああ、いやスマン。別に失敗する事を願っていたわけじゃないんよ? むしろ、できるだけ早く成功して欲しいと思ってたからこそアドバイスしてたわけだし』

「だったらもう少し喜んでくれてもいいんじゃないか? 自分で言うのも何だけど才能があるんじゃない?」

「ウィルに鬼術の才能はあると思う。というか、あり過ぎたというか出来過ぎたっていうのがオイラの本音だな」


 レッドとしては数回の失敗は織り込み済みで、ウィルにはしっかりと鬼術を使っている感覚を持って欲しかったらしい。


『今実際やってもらったように“柏手”は一部を除いて大半の魔法を無効化する事ができる。だから魔物や同じ人間に攻撃魔法を使われた時に使えば有効な防御手段になるんよ』

「魔法陣とか魔術具だけじゃなくてか?」

『むしろメインはこっちだな。魔法陣とかは物によっては無効化しても単体で即座に魔法を待機時間無しで再構築できるからな。生き物だと意識して手順を踏まないと魔法を再発動できないからな』


 だからいざという時に鬼術は役立つのだという。

 例えば魔物に襲われた際に鬼術を使って相手の魔法を一瞬で無効化できれば、逃げるにしても反撃するにしても生まれる時間的余裕は、それがどれだけ短くても命を左右するものになりうる。


『けど、普通はそういった緊急時は落ち着いて対処するのは難しい。だから少しでも練習できる時に回数を重ねて経験を積んで、どんな時にでも備えて冷静に鬼術を使えるようにしておきたいんよ』


 けれど、ウィルはロクに練習する間もなく成功させてしまった。


『たしかに才能があると言えるからこれは喜ばしい事なんだけどさ、今のウィルが安全に練習できる数少ないチャンスをあっさり終わらせちまったのは、少しアテが外れたと思うのが正直なところだな』


 そう言われてしまうとウィルにも不安が出てくる。

 今の成功はなるべくしてなった成功なのか、たまたま成功したマグレなのか、その手応えはたしかに無かった。


「……なんというか、ごめん」

『あ、いや! ウィルが謝る必要はないから! どちらかというとこういうことを想定していなかったオイラの手落ちだから! オイラの方こそ、せっかく一発成功したのに水差してホントスマン……』


 慌ててレッドがよくやったと言ったが、既にウィルの中では鬼術成功の喜びは消えていた。


『そ、そうだ! 武器! 武器を回収しよう! アレさえあればこれからが楽になるはずだ!』

「あー、そういえばソレがあったな」


 取り繕うレッドの言葉に、この部屋に来たもう一つの目的を思い出す。


「鬼の子でも使える魔術具、なんだよな?」

『ああ。一応魔力利用しているから魔術具に分類されるんだが、使い手の魔力を使うわけじゃないからウィルでも問題なく使えるぞ』

「魔術具か…………今まで縁が無くて実際に見るのは初めてだはあ?」


 魔法陣の中心に安置されている物に近付いてその姿を把握した途端、間抜けな声を出してしまうウィル。


「えっ、これが、その、魔術具……なの、か?」

『ああ。さすがに経年劣化していて見た目はボロいが、この魔術具の能力だったら問題ないから、そんな変な声出すほど心配は要らんぞ』

「いや、まあ、たしかに酷い見た目で驚いたというのもあるんだけど……」


 表面上のあちこちに錆と思われる吹き出物がその魔術具のあちこちに付着しており、武器として使うどころか鑑賞用にも耐えられるのか? という見た目も衝撃的だったが、それよりも言いたいことは。


「どう見てもただの棍棒にしか見えないんだが……」


 目の前にあるものは、非常に見慣れていた形状のオンボロ鈍器であった。

 詳細は判別できなかったが、何らかの金属塊とそれに付随する整然と並んだ見るだけで痛々しい突起は、恐らく武器という概念を持たない者でもその使い方を容易に察する事ができるだろう。


 何故見慣れているのかと言えば、ウィルが遭遇する賊の類がよく使ってきたからであり、また時折それを奪い取って逆にお世話になっていたからである。


 たしかに棍棒を代表とする鈍器の類の武器は、刃付きの物と違い入手難易度や手入れの面において非常に容易で優れている。また、槍等の長物と違って扱いに特殊な技術が必要ない為、古来より廃れる事の無い優秀な武器である。

 潤沢な魔力と資金を持つ国や貴族が抱える正規軍人が扱う事はあまり少ないものの、逆にそのいずれか或いはその両方に恵まれないような人間が手に取る事が多い。


 ウィルが義父に最初に渡され扱い方を教え込まれた武器もシンプルな戦棍であった。

 が、本来耐久性が高い筈であったその得物も、ウィルが使うとすぐに曲がったり、柄の部分が折れたりしてしまってすぐに使い物にならなくなってしまった。そのせいで義父に頭を抱えさせたりやはりウィルが武器の携帯を諦めたりといった話があったりする。

 これはウィルが呪い子、つまり鬼の子が持つ特性をウィル自身が無自覚であったことによる一種の弊害であったのだが、今となってはどうでも良い話である。


 閑話休題。


「いやまあ、たしかに鈍器の類の利点はよく知っているんだけどさ? こんな単純すぎる武器を魔術具にしたところで何になるんだとか、そもそもどう見ても魔術具に見えないんだけどとか……」

『まあまあ。とりあえず実際に使ってみなって。オイラとしてはこの“鬼の金棒(オーガ・メイス)”は鬼の子なら一生どころか代を重ねても使っていけるものだと思うぞ?』


 オーガメイス……初めて聞く語感であったが、何故だかウィルにはその名前が野蛮な物にしか聞こえない。

 手に取ってみると鈍器にしてはやけに頼りない重さであり、まだ山賊が使っていたものの方が良い品なのでは? と不安しか感じられなかった。


『さて、じゃあぼちぼちここから出るとするか』


 一応の武器の調達が済み、鬼術という力が使えることを確認し、食事とそれに伴った弊害、つまるところゴブリン肉の毒の影響も時間経過によって既に消えている。

 お互いに他に思いつく事も無い為、いよいよここから脱出しようという提案に、ウィルも同意した。


「ああ。俺も早く外に出てもう少しまともな飯を食べたいからな……」


 未だゴブリン肉の爪痕が残るウィルとしては、早く食べ物らしい食べ物を食べて悪夢を忘れたかった。


『さしあたって問題になりそうなのがゴブリンの巣を抜ける時だと思うんだが……』

「それなんだよな……」


 どれだけ居るか分からない闇に紛れた無数の敵は、ウィルにしてみれば遭遇した事が無いドラゴンよりも遥かに恐ろしい物である。


 一応は武器? と呼べるものと、不安が残ってはいるものの鬼術という魔法への対抗手段を手に入れてはいるものの、数に押されて袋叩きにされる可能性は十分にある。


 そして、現状一番の問題としてはこれら懸念事項に対して全くといって良策が思いつかない、ということである。


『オイラは正面からの強行突破しかないと思うんだが、ウィルはどうだ?』

「……できるだけ隠れながら、という言葉を付け加えるなら俺もそれで良いと思う」


 天才的な頭脳の持ち主ならともかく、凡庸な人間では少し考えても思いつかない時は、いくら考えてもしょうもないものだ。

 どれだけ時間を掛けたところ状況は変わらない。否、むしろ悪化するばかりだ。


 短期的に見れば、このままではウィルはゴブリン肉の世話になり続ければならない。それだけでも十分問題なのに、いずれは仲間が消えている事で異変に気付くかもしれない。いや、もしかしたら既に手遅れであるかもしれない。


 長期的に見ても、ゴブリンの繁殖速度を考えるといずれウィルは今の群れから一回りも二回りも膨れ上がった規模を相手にしなければならなくなる。

 そう考えると、多少強引にでも早急にここからの脱出を始めた方が良いのだ。


『お? また、もう少し考えたいとか言い出すのかと思ったぞ?』

「何か企みたくても、相手の規模を考えると今回はちょっとやそっとの思いつきじゃ俺には無理だ。それと、考え無しに突っ込むのは自殺志願でしかないから嫌なんだけど、今は時間を掛ければ掛ける程首が絞まっていくのが目に見えて分かるから、腹をくくるよ」


 確実に死が待つ未来と、死ぬ可能性が高い今の決断ならば、後者を取るべきなのは自明だろう。


「それに、お前は俺の身体を使ってゴブリンの位置が分かるんだろう? 完全に手探りで進むよりかはずっとマシだし、勝算は十分あると思うんだ」


 未だに思うところが色々無くはないが、レッドとの出会いはウィルにとって僥倖であった。自分だけでならとうの昔に野垂れ死んでいた事を考えるならば、今更、多少分の悪い賭け程度ならばいくらでも乗るというものだ。


「お前も俺が死んだら困るんだろ? 使えるものなら何でも使わせてもらう」

『おう。望むところだ。しっかり助けてやるから、オイラを外に連れ出してくれよな?』

 互いに意思を確認したところで、ウィルは悪臭と敵意が渦巻く暗闇へと歩き出した。




 遺跡部分からゴブリンの巣へ戻った事で始まったウィルの脱出劇だったが、その滑り出しは順調と言えた。


『この先に二、いや三体いるな』


 索敵と地形探査をしてくれるレッドの案内のおかげで、ゴブリン達の接触を避けつつ行動できていた。


(回り道はあるか?)


 頭で考えるだけで会話するというこの意思疎通方法も、最初こそ戸惑ったものの、慣れてしまえば声を出さずに情報をやり取りできるというのは非常に便利だった。

 もっとも、気を抜くとつい声に出して会話しそうになるので、常に集中力が必要であるのが難点ではあったが。


『うーん……ねえな。探そうにも下手に戻ると他の奴とぶつかりそうだから、さっさと不意打ちで黙らせて進もう』

(分かった。合図を頼む)


 狩りをした時と違って得物が、それも比較的扱いに慣れているものを所持した事もあってか、ウィルは渋ることなく了解の意を返す。

 程なくしてレッドが『今!』と合図を皮切りに物陰から飛び出した。


 索敵はかなり正確であるらしく、ウィルは自分に背を向けた三体のゴブリン達の姿を把握した。

 物音に反応される前に一気に背後から近付くと、手にした凶器を直上から力任せに振り下ろす。

 頭蓋骨を砕く鈍い音と共にギッ、と短い悲鳴を上げて一体のゴブリンが倒れる。


 それに反応して振り返った残りの二体のうちの片割れの顎を、一体目の時に振り下ろした動作の返しで捉えてかち上げる。

 グリンと白目を剥きながら意識を失った二体目を尻目に、振り上げた金属塊を残った三体目に再び振り下ろす。


 しかし三体目ともなると流石にすんなりとはいかず、残ったゴブリンは腰に佩いていた錆び付いた蛮刀を振り上げ、ウィルの一撃を受ける。

 頼りない印象であった鬼の金棒であったが、さすがに質量差があったらしく、ゴブリンが握っていた錆だらけの刃が軽い硬質音を立ててあっけなく折れる。

 仲間の助けを呼ぼうと大口を開けようとするゴブリン。

 それを察したウィルは手にしている得物を振り上げる余裕は無いと判断してその手を離し、先刻の狩りの時と同じように相手の顔面に摑みかかる。


 ウィルとしては前回偶発的に行ってしまった頭の握り砕きを再現する気持ちでいたが、どうやらあの時は本当に異常だったらしく、ゴブリンの叫びを阻止する事だけに留まる。

 放った武器を拾うのは少し都合が悪い体勢であった為、トドメとして洞窟の岩壁に掴んだ頭をそのまま何度も叩きつけて、脱力して四肢がダランと垂れた所で解放した。


「ふう……ん?」


 一息ついたところで、二番目に倒したと思っていたゴブリンが腕をついて立ち上がろうとしていたので、その背中を踏み抜くと、ゴブリンの肺から口へ空気がひゅっと漏れる音が聞こえた。

 そして、そのまま首筋目掛けて全体重を乗せた踵で何度か踏みつけていると、五、六回目くらいでその頭があらぬ方向へ向いた事で絶命した事を確認した。


(よし、終わった)

『お、おう……いや、よし、じゃなくてな』


 一仕事終えたところのウィルに恐る恐るといった様子でレッドが訊ねる。


『あ、あのさウィル。何というか、今更こんな事言われるのは変かもしれないが、ちょっとやり過ぎじゃないか?』

(? やり過ぎって?)

『オイラ達がここから生きて出るにはゴブリン達との衝突は避けられないし、こっちも余裕が無いからできるだけ殺さない方が良いとか綺麗事を言うつもりはないんだけどさ? お前はその、ちょっと撲殺するのに手慣れ過ぎというか、追い打ちするのも躊躇いなさすぎというか…………そんなに強いんなら、狩りの時あそこまで慎重にならなくても良かったんじゃないか?』

(あー……まあ、言いたいことは分かったけどさ、単にさっきとは色々と状況が違うっていうだけだよ?)


 心情的に大きいのは、武器を持って少なからず余裕が出た事と、現状こういった強行手段の他に取れる手法・行動がないくらいに追い込まれているからである。端的に言えば開き直りである。


 理性的な理由としては、自分の身体が異常である事、特に単純な筋力が思っている以上に強い事を知った為だ。

 いくら強くても自分で把握できていないものは実力ではない。

 自由にその力をうまく引き出せなければそんな不確定要素に頼るわけにはいかず、本当に追い詰められた時に期待していた効果が発揮できないと取り返しがつかない。


(レッドだって言ってたろ? 鬼術に少しでも慣れて欲しかったって。要はそれと同じだよ)

『それで自分の身体に少しでも慣れようとしてこんな惨状を生み出したと?』

(ゴブリンの息の根をきっちり止めたのはそれだけじゃないけどな)


 一つは私怨。過ぎた事はできるだけ気にしない方が良い事を知っているウィルであったが、かと言ってこういった後顧の憂い無く復讐を遂げられるお膳立てが整っていたら、それを我慢できる程聖人君子でもない。


 二つ目は万が一にでも息を吹き返したゴブリンが仲間たちにウィル達の事を知らされてはたまったものではないからだ。より念入りに息の根を止める必要があった。


(あと躊躇いがなくて強く見えたのは、殺すときに一瞬でも迷うとどんな相手でも殺せなくなるっていうのを実体験で知っているってだけ)


 これも義父に教えられた事だった。

 が、その時はただ狩猟で得た野鳥を解体する際、獲物を締める直前になって怖くなってできなくなってしまっただけだった。

 よもや数年後には賊の類とはいえ同種族に実践する羽目になり、こうして今ゴブリン達の相手をする際に役立つとは、恐らくあの世の義父も想像していなかっただろうが。


『なるほど……いや、ウィルの昔話は一通り聞いてたけどさ、本当に殺し合いの経験があったんだなと……』

(そんな自慢にもならない事で嘘つくわけないだろ?)


 本当に自慢にもならない。


 どんな相手であろうと命を奪うという行為をする際には、精神的にも身体的にも酷い疲労をウィルは感じている。

 素手は当然の事だが何かしら武器を使って相手の肉を切り、潰し、骨を折って、砕くといった感触はどれだけ経験を積み、殺しに慣れても不快だ。


 だからこそ、ウィルはその行いが本当に必要な時は躊躇わないように心掛けている。できるだけ何も考えず、不快を感じる時間を少しでも短くする為に。


 少しでも迷って手間取ってしまえば、自分が苦しむから。


 そんな面倒で嫌な事、隠したいとは思っても、自慢なんか嘘でも言いたくないのだ。


『いや、ウィルが嘘ついたとは思ってはいなかったぞ? ただ、なんというか、オイラが改めて実感しただけっつーか……』


 何故かレッドが唸りながら悩み始める。

 今更自分の過去を無遠慮に聞いた事に罪悪感を覚えたのだろうか? それなら別に気にしなくても良いのにとウィルは思う。なんだかんだ言ってこういった事はもう慣れていた。

 むしろ気にされて優しい言葉を掛けられてもどんな反応をすればいいか分からず、困るだけであった。


(あ、そうだ)


 そろそろ移動しないとと思い、先程放った鬼の金棒を回収しようとする。


(……あれ?)


 手にした得物に何やら違和感を覚える。

 何だろうと思い、暗がりで見えにくい中その正体を探る。


(さっきより綺麗になってる……?)


 先程まで表面に付着していた錆が心なしか減っているような気がして、握ったまま手首を捻って全体を観察しようとしてまた別の変化に気づく。


(捻りづらい……大きく、いや、重くなってる?)

『……ん? ああ、気付いたのか』


 先程まで手にしていた得物の変化に戸惑っていると、レッドがその変化について説明を始めた。


『それが鬼の金棒が持っている“自己修復”と“自己強化”の機能だな。簡単に言うとその武器は使えば使う程勝手に綺麗に修理されて、勝手に重く大きくなっていくんだ』

(何その便利なんだか使い辛いのか分からない武器は!?)


 ただでさえ取り回しが容易な鈍器の最低限の手入れすら不要なのはとても楽である。

 けれど、得物のサイズと重量が変化するというのは一見強力そうではあるが、慣れるのにはとても難しい武器なのではないだろうか?


『一応、重量とサイズの限界は設定はされてるから無限に重くなるって事はない。そうじゃなくても重くなりすぎたと思ったらしばらく放置するか、何かしらの衝撃を与えて傷つけると自己修復を始めて軽くなるからそれで使いやすいように調整する感じだな』

(いや、それってつまり下手に相手の攻撃を受けたりしたらこちらが意図しない程に軽くなるかもしれないって事だよな?)


 鈍器が武器として成立しうる破壊力の根幹は重量にある。重くなりすぎて扱いづらくなるのも問題だが、軽くなり過ぎては武器として役に立たないのだ。


(というか、自分で殴った時も鬼の金棒に衝撃が掛かるよな? なのにどうして使えば使う程重くなるんだ?)

『正確には殴った相手の血に含まれた鉄分を材料に補修強化がされるからな。表面に突起が付けられているのはそういう事だな』

(なにそのエグイ材料!?)


 差別偏見事実無根で呪い子呼ばわりされているウィルであったが、そんな武器を使っていたら本当に呪われてしまうのではないだろうかと思ってしまう。


『鬼の金棒は壊れないこと、つまり継戦能力を重視にした魔導武器でな。魔力を持たない鬼の子が戦場で手っ取り早く魔力を補給するにはどうしたら良いと思う?』

(い、いや……)

『魔力っていうのは極一部の特殊なものを除いて、基本的には生物由来の素材と非常に相性が良いんよ。特に血液は親和性が最高に良い物質で魔力を帯びているんだ』


 あっ。と、ウィルはレッドが説明しようとしている事を察した。


(つまり……この魔術具に必要な魔力も材料も全部敵から調達してしまえばいい、と?)

『そういうことだな』


 たしかに非常に合理的な武器かもしれない。

 癖が強く扱いづらい気もするが、一度手にしてさえしまえば魔法使いに全く依存する事なく鬼の子だけでずっと使い続ける事ができるのだから。

 ただ、この武器を考えた人物は中々に狂っているんじゃないんだろうかと思わずにはいられなかったが。


(…………俺、ここから無事に出られた後も生きていけるか不安になってきたんだけど)


 ただでさえ何もしていなくても呪い子は気味悪がられていたのだ。

 それがこんなおどろおどろしい武器を使っている事が知られたら、本当に化け物認定されて本格的に討伐隊が組まれるような気がしてならない。


『心配すんなって。そうなったとしてもちゃんと生き残れるようにオイラが鍛えてやるからさ!』


 そうレッドは生活を保障してくれたが、平穏な日常は夢のまた夢になりそうだとウィルは悟ったのだった。

鬼の武器といえばやっぱり金棒だよねって、やりたかったネタを一つ消化できました。


作者も時折忘れますが、ウィル君これでも十三です。現実世界なら中一なんですよ、彼。

レッドが度々お前おかしいと指摘していますが、実際ウィル君は理性的な行動が取れるだけで精神的には十分狂っています。Coc的に言えば不定の狂気真っ最中です。

狂気名は・・・なんでしょう? あえて付けるなら『自信喪失』でしょうか? ちょっと違う気もしますが


あと、今回でリード連載十話目投稿となりました。これを機にこんなド新人が書いた作品に対してブクマ及び評価して下さった方に対して、この場にて厚く御礼申し上げます。

最低でも半年くらいは0ポイントを覚悟していた身としては、これほど早く燃料をもらえるとは思ってもみませんでした。初めてポイントがついた事に気付いた時は思わず声を出してしまって、PC横で寝ていた飼い猫を起こしてしまいました。ごめんよ?


リードはもうすぐ一章として区切ろうと思っています。その際には記念に活動報告辺りに記事を投稿しようかなと思っていますが、内容をなにも思いつかなかったらそのまま二章を始めるので、もしそうなったらこの事はお忘れください。(作家活動知ってるリア友からはしきりに活動報告を書いた方が良いと言われるんですが・・・思いつかないものはしょうがないよね?)


2018年1月18日 文章を少し簡素化しました。

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