イディオタ
【イディオタ】
ユィンの放つ炎の矢が、雷水の巨人の体に次々と打ち込まれた。
(おい、奴の炎の矢は貫通力が高いだけでなく、爆発力も備えているぞ。雷水の巨人の中に打ち込まれては核が破壊されのではないか?)
〈アルファ〉の懸念に、イディオタは相変わらず余裕の表情で答えた。
(核を正確に射抜かねば破壊されぬわい。しかし、氷の盾を一度に六枚も操り、同時に炎の矢の連射とは、小僧も無理しよるのう)
イディオタの言葉通り、氷の盾を操りながら炎の矢を何本も放っていたユィンは、疲労の色が濃くなっていた。
やがて、氷の楯も全て打ち砕かれ、疲労により動きの鈍くなったユィンの体に、雷水の巨人の拳が僅かにだが触れた。
ユィンの体に強烈な電撃が走り、その衝撃によって一瞬だがユィンの動きが止まった。
(触ると感電するといったはずじゃ。小僧、詰みじゃな)
イディオタはユィンの隙を見逃さず、雷水の巨人を宙高く飛び上がらせると、ユィンの頭上で逆さにした碗の様な形に広がらせ、ユィンを包み込んでその体内に取り込んだ。
雷水の巨人は水の巨人と違い、その体内で雷が荒れ狂っていた。
その中に取り込まれたユィンの体に、雷水の巨人の拳が触れた時とは比べ物にならぬ強力な電撃が走った。常人ならば瞬時に心の臓が停止し体が黒焦げになる程の電撃だった。
「小僧、意地を張っていては死ぬぞ。お主には成すべき事が、もしくは成したい事がある故、長い年月を放浪しているのであろう」
イディオタの言葉に、電撃で返事をできぬのか、ユィンからの答えはなかった。
(もう死んでいるのじゃないか?)
(〈アルファ〉よ、奴がこんな程度でくたばるものか。お前もよく知っておるじゃろうが)
(そうだが、奴はまだ力も使いこなしていなさそうだしな……)
(ぬう……、なんか心配になってきたのう……)
イディオタは〈アルファ〉の言葉に心配になったのか、大きな声で必死に叫んだ。
「おい! 小僧! 聞いとるか!? 小僧!!」
「ぐう……ぅ……」
イディオタの叫びに、ユィンがかすかに呻いた。
(おお! 生きておったわい。心配させおって!!)
(だが、このままだと本当に死んでしまうぞ?)
(わかっとるわい!)
「小僧、真の力を解放するのじゃ! でなければ無駄に命を落とすぞ。真の力を解放せねば、儂に勝てぬ事は分かっておろう」
イディオタの叫びにも、ユィンの返事はなかった。
(意地を張っておるのか、それとも力を制御出来ぬのか分からぬが、まずいのう……)
(このままでは、いくらあの若いのがそうだとしても、間違いなく死ぬぞ)
〈アルファ〉はイディオタを咎めるように言った。
(残念じゃが致し方ないのう……)
イディオタはそういうと、解呪の術で雷水の巨人を消滅させ様と魔力を集中した時、雷水の巨人の中から、今までとは段違いの魔力と闘気が沸き上がった。
(イディオタ、これは!?)
(奴じゃ! 小僧が変化しおった!)
イディオタが〈アルファ〉にそう言った時、雷水の巨人の核を黒い腕が掴み握り潰した。
核を失った雷水の巨人の体は、大量の水飛沫を飛ばして溶け流れ、その中から凶々しい黒い闘気を纏った黒い巨人が姿を現した。
黒い巨人は尋常ならざる速度でイディオタ目掛けて駆けた。
(イディオタ、くるぞ!)
黒い巨人は一瞬で間境を越え、その腕に生えた巨大な黒い刃がイディオタに迫った。
イディオタはその黒い巨大な刃を避け、右手の〈イオタ〉の剣で黒い巨人の首を狙った。しかし剣は空を切り、イディオタの体勢が大きく崩れた。
(イディオタ、後ろだ!!)
〈アルファ〉の声にイディオタが反応する前に、黒い巨人の腕の巨大な刃が、イディオタの頭上に振り落とされた。
読んで下さって有難うございます!




