ユィン
(ぐうおおぉぉぉ!)
雷水の巨人の体内に取り込まれたユィンは、凄まじい電撃をその身に受け続けていた。
(これ……は……やばい……な……)
ユィンが電撃によって意識を失いかけようとした時、イディオタの声が聞こえた。
「小僧、意地を張っていては死ぬぞ。お主には成すべき事が、もしくは成したい事があるゆえ、長い年月を放浪しているのであろう」
(成すべき事……そう……だ。俺は……まだ死ねない……。だが、あの……力を使う……のは……)
ユィンは躊躇っていた。多くの罪なき命を奪い、更には父であり恩師でもあったコンジュエを死に追いやった、忌まわしき力。その力を使う事を、己が人間で無くなる事を、心が拒んでいたのだ。
「おい! 小僧! 聞いとるか!?」
意識が薄れる中、感覚が研ぎすまされているのか、イディオタの声がユィンの耳に響いた。
「ぐう……ぅ……」
ユィンの耳に、イディオタの言葉が更に聞こえた。
「小僧、真の力を解放するのじゃ! でなければ無駄に命を落とすぞ。真の力を解放せねば、儂に勝てぬ事は分かっておろう」
イディオタの力は、ユィンには痛いほど分かっていた。その力の差さえも。しかし、過去の忌まわしき記憶が力の解放を拒んでいた。
その時、イディオタから魔力の流れを感じた。
(最後の止めに……来る気か!?)
ユィンはイディオタが最後の止めを刺そうとしていると感じた時、やっと決意した。
(俺はまだタオジンさんやコンジュエ様の命を生きてはいない。ここで死ぬわけにはいかない!!)
忌まわしき力を解き放つ決意をしたユィンは、全身の魔力と闘気を集中して高め、全身に巡らせながら凝縮し、爆発させた。
ユィンの全身を黒い闘気が巡り溢れ、細胞一つ一つを変成させ、骨格はさらなる強化を遂げ、ユィンを新たなる者へと、別の生命体へと変化させていった。
そしてユィンは、黒い禍々しい闘気を全身に纏い、その姿を視る者に恐怖と絶望を与える黒い巨人へ変化していた。
黒い巨人と化したユィンは、研ぎ澄まされた感覚と、段違いに膨れあがった魔力とで、雷水の巨人の核を容易く見つけると、その手を伸ばして握り潰した。
核を失った雷水の巨人の体は大量の水飛沫を飛ばして溶け流れ、その水溜まりの中に、夜の闇をも呑み込む様な黒い闘気を纏った巨人が立っていた。
ユィンは心の奥底から沸き上がる破壊衝動を抑えながら、イディオタを見つめ、駆けた。
初速から尋常ならざる速度で駆け、一瞬でイディオタの間合いへと踏み込むと、より巨大で、より凶々しくなった右腕の黒い刃でイディオタの心の臓を狙った。
そのユィンの刃を、身を沈めながら捻ってかわしたイディオタは、右手の剣でユィンの首を狙ってきた。
(遅い!)
ユィンは心の中でそう呟くと、残像を残してイディオタの後背へと回り込んだ。ユィンの残像に切りつけたイディオタの剣は空を斬り、大きく体勢を崩した。
ユィンはその隙を見逃さず、イディオタの頭上から腕の刃を振り降ろした。
ユィンの腕の刃は、イディオタの頭の先から股の付け根まで一気に斬り下げ、イディオタの体を真っ二つにした。しかし、真っ二つにしたイディオタの死体を見た瞬間、視界からその死体は掻き消え、背後から声が聞こえた。
「恐ろしい速さじゃな。危ないところじゃったわい」
ユィンの後方に、イディオタが剣を握り立っていた。
(幻術か!?)
ユィンが後方に立つイディオタへ追い打ちを掛けるべく闘気を高めた瞬間、イディオタから闘気の刃が放たれた。
ユィンがそれを避ける為に後ろに退がると、イディオタが先ほど迄の闘いとは比べ物にならぬ速度で、呪文を詠唱して印を結び、足下に魔法陣を描いた。
(速い! 先ほどまでも尋常ならざる速度だったが、あれが老師の本気の速度か)
「すまぬが一人では荷が重そうなのでな。多勢で闘わせてもらうわい」
イディオタがそう言うや否や、イディオタの周囲に描かれていた三つの魔法陣から魔力が沸き起こり、イディオタの体が大きく膨らんだかと思うと、弾けた。その瞬間、イディオタが四人に増えていた。
何回やっても投稿が上手く行かない><
このお話投稿するの三回目です><




