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戦士の宴  作者: 高橋 連
二章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之弐」
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イディオタ

【イディオタ】


 アルベール王の国葬に参加する為、イディオタは事前にシャンピニオン山にある己の居城に保護していたカミーユを伴い、エヴァンジル大聖堂へと向かっていた。そこに、前方からかなりの速度で迫る騎影が見えた。

「前方に注意! カミーユを護れ!」

 イディオタに従い護衛を務めていた〈銀の槍〉が、配下の者達に叫んだ。

「よいよい。あれは儂が用意した物見の者じゃ。思った通り仕掛けてきた様じゃの……」

 イディオタは〈銀の槍〉にそう言うと、護衛の者達を下がらせて、物見の兵が到着するのを待った。

「イディオタ様、火急の知らせ故馬上にて失礼いたします!」

「よい、許す。報告を申せ」

「はっ! では……!? そ、その方は……」

 カミーユの姿を見た監視兵は驚きのあまり、言葉を失った様であった。

「カミーユはこの通り無事じゃ。〈刀鍛冶〉が護衛していたのは影武者よ。さあ、報告を申せ」

「ははっ! では報告いたします」

「うむ」

 カミーユが無事と聞いた監視兵は気を取り直し、報告を始めた。

「カミーユ様の一行がヴィンセント殿下麾下の〈片目〉とその配下に襲撃され、カミーユ様護衛の任に就いていた〈刀鍛冶〉様は討ち死に。その配下も全滅いたしました。護衛していたカミーユ様、いえ影武者も殺され、その死体は近衛が王都へと移送いたしました」

「なにっ! 〈刀鍛冶〉が討たれたと!?」

「はっ! 刀が砕けるまで闘い、最後は心の臓を貫かれ討ち死になさいました……」

(〈片目〉がそれ程とは……。抜かったわ。〈刀鍛冶〉よ、すまぬ……。しかし、〈鈴音〉が砕けるとは一体……)

(イディオタ、もし〈鈴音〉を砕いたとなれば、〈片目〉はお前と同類かもしれんぞ)

 イディオタと融合している〈賢者の石〉の〈アルファ〉の言葉に、イディオタは頷いた。

(ああ、そうなら厄介だな……)

「お主、その闘いを一部始終みたのか?」

 イディオタの問いに、物見兵は畏まって答えた。

「はい。イディオタ様のご命令通り、遠方より気配を消して、遠目の術にて一部始終確認致しました」

「そうか。では詳しい話は後で聞こう。済まぬがお主はこのまま山に帰り、〈竜殺し〉にこの事を伝え、急ぎ備える様に伝えてくれ。儂等も急ぎ戻る故な」

「ははっ!」

 物見兵は馬上でそう答えると、馬を飛ばし駆けていった。

 物見兵が走り去った後、イディオタはカミーユに向かって言った。

「済まぬが策が裏目にでたわい。ここに居ては飛んで火に入るなんとやらじゃ。急ぎ山に戻るぞ」

「はい。私は老師の仰せのままに従います」

 カミーユはイディオタにそう言うと、己の為に討たれた〈刀鍛冶〉とその配下の事を忍んで、黙祷した。

「じじぃ! 〈刀鍛冶〉の敵討ちはどうすんだよ!」

 〈銀の槍〉がその眼に燃え上がる炎の如き光を宿し、吠える様に叫んだ。

「馬鹿者!! 今はカミーユの安全を確保するのが先じゃ。焦らずとも、この後うんざりする程の敵が押し寄せてくるわい」

(〈銀の槍〉はいつまで経っても馬鹿だな。お前の弟子だから仕方ないか……)

(うるさいわい! 〈アルファ〉、お前も少し黙っておれ!)

(はいはい)

「わかったよ。だが、〈刀鍛冶〉を殺った奴は俺の獲物だぜ! あの〈刀鍛冶〉を倒す程の奴なら、ちょっとは楽しめそうだからな」

(〈刀鍛冶〉が討たれるのも驚きだが、〈鈴音〉が砕けるとは信じられん。もし奴が〈アルファ〉の想像通りなら、〈銀の槍〉では手に余るじゃろうな。儂が出ばるしかあるまいな……)

「無駄口は後にせい。行くぞっ!」

 イディオタは〈銀の槍〉を相手にせず、己の居城を目指して馬を急がせた。

(ヴィンセントよ、お主は良くも悪くも王の器じゃな……。それ故アルベールは危惧し、儂はお主を評価したのじゃが。世の中上手く行かぬなぁ……)

 イディオタは走る馬の背で、己の思惑通りには運ばぬ人の世の理を恨めしく思った。


2章後編「シャンピニオン山の戦い 其之弐」の開始です!!


本編ともいえるシャンピニオン山の戦いを描いた物語の、第2部です。


宜しくお願いします^-^



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