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戦士の宴  作者: 高橋 連
一章 後編 「シャンピニオン山の戦い 其之壱」
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片目

【片目】


 疾風の槍と邪眼の幻影を用いた術で、〈刀鍛冶〉をあと一歩という所まで追い詰めながら、〈片目〉の仕掛けは悉く潰された。

(まさか……、全て潰されるとは……)

 長きに渡って代々の〈片目〉の一族の棟梁の中に宿り、数々の闘いを見てきたバソキヤさえも信じられぬといった様子であった。

(まだだ!)

 最後の止めを刺しに、〈刀鍛冶〉が光り輝く殺気の刃に乗って迫ってきた。それを〈片目〉は最後の気力を振り絞って迎え討った。

 〈片目〉は右眼の邪眼から血の涙を流しながら、残った魔力を集中させて凝縮し、最後の力を放った。鍛え抜かれた強者であろうと、見る者に等しく死を与える邪悪な視線を放ったのだ。

 しかし、それさえも〈刀鍛冶〉の左手に握られた殺気の刃に受け止められ、相殺消滅した。そして、己の生涯を断つであろう最後の一撃が撃ち降ろされた。

 〈片目〉が刀を防ごうと、咄嗟に上げた左腕は易々と切断され、〈刀鍛冶〉の剣は〈片目〉の肩に迫った。

(俺の負けだ……)

 〈片目〉は最後に、己の力が〈刀鍛冶〉に及ばなかった事を認め、バソキヤに詫びた。

(わがままに付きあわせたな。今更だが、頼む……)

(承知!)

 バソキヤの言葉と共に、急速に〈片目〉の体内の闘気が、魔力が、肉体全てが変化していった。〈刀鍛冶〉の剣が鎖骨を断った時には、外見は変わらずとも、もう今までの〈片目〉はこの世に存在してはいなかった。

 傷口から流れ出る血でさえも、赤色から深く全てを呑み込むような青色に変化していた……。

 大きな音を響かせて倒れ伏した〈片目〉の体より、凶々しく邪悪な、闇をも飲み込むような黒い闘気が溢れだした。

 その闘気は〈片目〉の体全て包み込んだ。そして、その暗黒の雲はすぐに消失し、代わりにこの世の者とは思えぬ、漆黒の闘気を纏った異形の巨人、いや魔人へとその身を変えた〈片目〉が出現した。

黒い闘気を纏った〈片目〉は、斬り落とされた左腕を再生すると、その体より尋常ならざる力を発しながら〈刀鍛冶〉に襲い掛かった。


邪眼の力まで通じず、全てを破られ、敗北を悟ったた片目に残された最後の力……。


片目と刀鍛冶、二人の戦士の宴の終幕を、今しばらくお楽しみください!

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