刀鍛冶
【刀鍛冶】
突如現れた黒い闘気を纏った魔人との闘いは、絶望的なものであった。
しかし、その絶望的な闘いこそが、十数年前に師匠であるイディオタと出合った時の闘いの様に、〈刀鍛冶〉の心を真に熱く滾らせた。
(リ……リ……ン……)
闘いが激しさを増す程に、透き通る様に聞こえた〈鈴音〉の音色が、もはや〈刀鍛冶〉の頭の中で満足に聞こえ無くなっていった。
(もう、俺は……駄目みたいだ……。お前の音さえ満足に……聞き取れない)
滾る心とは裏腹に、〈刀鍛冶〉の体は傷つき、立っているのさえやっとの状態であった。
(さっきは、〈鈴音〉の力を……俺に分けて……くれたよな。今度は俺……の……力を、受け取って……くれ……)
〈刀鍛冶〉はそう言うと、残る闘気どころか、生命力さえも全て燃焼させて凝縮し、更にはそれを爆発させて〈鈴音〉に全て注ぎ込んだ。そして、技も策も何もないまま、ただ全てを賭けた最後の一撃に、高く飛翔してその落下する力を乗せ、黒い魔人に向かって振り降ろした。
黒い魔人は、その最後の一撃をよけずに、真正面から受け止めようとした。
(〈片目〉の奴、最後の……勝負を受けて……くれ……るか……)
黒い魔人と化した〈片目〉は、〈刀鍛冶〉の刀を受けるべく、左腕を挙げた。
先程と同じように、〈刀鍛冶〉の全てを注ぎ込まれた〈鈴音〉は、〈片目〉の左腕を切断し、更には鎖骨を断ち、〈片目〉の心の臓まで一気に斬り裂こうとした。その時、〈刀鍛冶〉の頭の中に、女性の声が響いた。
(レンヤ!)
その瞬間、〈鈴音〉が音もなく砕け折れ、その衝撃で〈刀鍛冶〉は後方に跳ね飛ばされた。
黒い闘気を纏った〈片目〉は、肩に刺さった〈鈴音〉の刀身を引き抜くと、よろめきながら立ち上がろうとする〈刀鍛冶〉に狙いを定め、投げ放った。
異形の魔人の膂力で投げられた刀身は猛烈な勢いで〈刀鍛冶〉の心の臓を貫いた。その勢いで〈刀鍛冶〉は吹き飛ばされ、断崖より渓谷の底へ落ちていった。
心の臓を貫かれた〈刀鍛冶〉は、痛みをも感ずる事無く力尽きた。即死であった。落下する屍と化した〈刀鍛冶〉の両眼に光は無く、ただ死した瞳で虚空を見つめるのみであった。
ついにこの話で、刀鍛冶と片目の戦いの決着がつきました。
この後、フランカ王国の王位継承をめぐり、歴史は大きく動き出します。
次の2章は、個人的に主人公が出る章であり、一番気に入っている章です。
ぜひ読んでやってください^^
ただ、2章に移る前に、この戦いの事後がちょっとだけあります。
今後共よろしくお願いします^^
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