レンヤ
【レンヤ】
レンヤは驚喜した。
今一度老人と戦い、己の技を試せるからではない。ましてや、万が一にも命を拾える望みを見いだせたからでもなかった。
初めて己の死力を尽くした一撃を放てるであろう剣に出会えた事に驚喜したのだった。
イディオタがレンヤに渡した剣は、七色の虹の様に輝き、レンヤがかつて見た事も無いほどの名剣であった。形はレンヤが今まで使っていた故国の刀とは違い、この大陸周辺でよく使われている両刃の直剣だった。
「老師、お借りします……」
だが、そう言ってレンヤがその剣を掴むと、今までは異国風の造りの剣だったのが、レンヤが今まで使っていた刀と同様の、極東の島国造りの片刃で反身のある形状に変わった。
(不可思議な……。しかも、まるで腕の一部かの様にしっくりと馴染む……)
レンヤは精神を研ぎすました。命の灯火が消え掛かっている己の体とは裏腹にその精神は燃えたぎり、それを殺気と練り合わせ、体中から溢れ出るほどの闘気へと変えた。
それをなんの躊躇いもなく、宝剣に込めて振り降ろすと、空を斬り裂き、大地が割れ砕けた。
ここに、レンヤは己の命の定めを知った。この剣との出逢いが己の定めなのだと……。
「老師、推して参る……」
レンヤはそう呟くと、イディオタに向かい一気に駆けた。




