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雨音の余白

作者:一条かおる
最新エピソード掲載日:2026/09/02
雨の日だけ、校舎の最上階にある古い図書館は、誰にも邪魔されない場所になる。

青葉透は、そこで古い詩集を開く。言葉少なく、目立たない日常を送る彼にとって、雨音と紙の匂いだけが支配する時間は、唯一自分を保てる時間だった。

ある雨の日、白崎陽がそこに現れる。
明るくて人懐っこく、学年でもすでに顔の知られた転校生。陸上部に所属し、誰にでも笑顔を向ける彼が、なぜ雨の日の静かな図書館に足を運ぶのか、透には分からなかった。

会話はほとんどない。
ただ、同じ空間に身を置く時間が、静かに重なっていく。

晴れの日になると、陽はいつもの明るい顔に戻り、透はまた影の薄い生徒に戻る。
その落差が、二人の間に小さな痛みを残していく。

雨音の中でだけ成立する、言葉少ない関係。
やがて詩集の余白に、短い言葉が残されるようになり——。

雨の日も、晴れの日も、同じ場所に立っていられるようになるまで。
静かに、丁寧に紡がれる、心の距離の物語。
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