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第33話「王宮と騎士団」

「エンチャントは済ませたし、ご飯も食べたし、どうしましょうか?」

「そうだね……」


どうしようか。この街は大きいし、綺麗で見ていて飽きないので

このままブラブラと散歩してみるのも悪くは無いかな?

そう思っていると、ちらりと王宮が視界に入る。


「……あの王宮に行ってみたいな」

「王宮ですか?王宮は一般の人は入れてもらえませんよ?」

「そりゃそうだろうなぁ……でも、近くで見るぐらいなら大丈夫だよね?」

「門の前から見るぐらいなら大丈夫だと思いますよ」

「じゃあ、そこまで行ってみない?」

「わかりました、行ってみましょう!」


私達は、ちょっと遠くにある王宮を目指して歩き始めた。






「……凄い……大きい」

「本当ですね……私もこれだけ王宮の近くに来たのは初めてです」


しばらく歩き続け、王宮の門の前までたどり着いた。

いざ近くまで来てみると、本当に大きい王宮だ。

そして、その宮殿の周りに建てられた城壁も高く、近くの2階建ての建物よりも更に高い。

唯一城壁を通れる門の前には白銀の鎧を身に着けた2人の門番が立っていた。

やはり入る事は無理だろう。元々入れるとも思ってないけれど。

とは言え、城壁だけでも私にとっては十分物珍しく、見ていて楽しい。

ただ、あまりウロウロと王宮の近くを歩いていると門番の迷惑になりかねないので

そろそろ引き返すとしようかな。


そう思っていると、後ろから何人かの足音が聞こえてきた。

振り向くと、何人かの人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

老若男女、体形も持っている武器もバラバラだけど

その人達はみんな同じ白銀の鎧や白銀のローブを身に着けていた。

鎧に関しては門番と同じだ。と言う事は彼らも兵士なんだろうか?

門番は彼らを見ると、王宮の大きな門を開け、キッチリと敬礼の姿勢を取る。

その様子から、彼らはただ兵士では無い事がわかる。

特に先頭を歩いているナイスミドルな男性からは

歴戦の英雄かと思うような雰囲気を醸し出していた。

少し彼の強さが知りたくなったので、集中して彼を見てみる。


……うわっ、なんだあれは。


彼からは想像を遥かに超える、物凄い強さの魔力を感じ取れた。

私の軽く数倍はあるだろう。

私の魔力が焚き火の明るさだとするのなら、彼の魔力は蛍光灯の明るさだ。

その凄さにエンチャントのおかげで寒さを感じなくなったにも拘わらず

鳥肌が立ってしまった。

彼は、いや、彼らは一体何者なんだろうか?


「ねぇリーナ、あの人達は一体何者なんだろう」


私はリーナに尋ねるが、返事がない。

気になってリーナの方を向いていると、リーナも目を輝かせ、

その兵士達に心を奪われていた所だった。


「……リーナ?」

「ひゃいっ!?な、なんでしょうか!」

「……あの人達って、一体誰なの?」

「そっか、ミサキさんは知らないんでしたね。

あの人達はセントラル騎士団。セントラル王都、いや、このユーロティア大陸の中でも屈指の

エリートの戦士達なんです」

「なるほど、騎士だったのか」


それならあの雰囲気にも納得できる。

同じ鎧と服を着ているのは、それが騎士団の制服のようなものなんだろう。


「はい。セントラル騎士団は強くて誠実で、私達の憧れなんです!

特に先頭に居たのはシュヴァルツ騎士団長と言って、

セントラル騎士団を纏め上げる凄腕の騎士で

このユーロティア大陸で1番強い戦士だと有名なんです。

私も本人を直接見たのはこれが初めてです……!」


リーナはまるで恋する乙女のように幸せに浸っていた。

……こんな表情、私と一緒の時には見せなかったから、なんだか悔しい。

でも、それも仕方ない。彼には地位も力もある。おまけにイケメンだ。

天の上の存在とも言っていいだろう。

それに比べて私には一体何があるんだろう……


「……大丈夫ですか?凄く顔色が悪いですよ」


どれだけ深く悩んでいたんだろうか……リーナが心配そうに声をかける。


「大丈夫……何でもない……」


とりあえずリーナにこんな弱音は吐けないな。

しっかり、しっかりしないと!


「……嘘ですね?今ミサキさん、凄く悩んでます」

「えっ」

「もうそれなりに長い付き合いだからわかりますよ。

遠慮しないで私に悩みを打ち明けてください!

それとも、私なんかじゃ相談相手にもなれませんか……?」


彼女は悲しそうに訴えてくる。

……どうしよう。リーナにもう嘘は通じ無さそうだ。

とは言え、あんな嫉妬剥き出しの悩みなんて本人に相談できるわけがない。


「……ちょっと自分に自信が無くなってきちゃって。

ダンジョンでの特訓で強くなったつもりだったけれど、

ジャンゴや騎士団長を見てたら、私なんて全然まだまだだよなぁ……と」


とりあえず当たり障りのないように答えた。

ただ、嘘はついていない。

実際ジャンゴも騎士団長も、私より強い魔力の持ち主であることは確認済みだ。


魔力と言うのは筋力や持久力と同じで、トレーニングや実践などで

魔法を使えば使うほど強くなっていくものだ。

そして、魔力が強くなればなるほど、より強い魔法も使えるようになっていく。

魔法が戦いで非常に重要な役割を持っているのはこの数ヵ月で十分に理解できていた。

つまり、魔力が強ければ強いほど、戦いも強いと言うことになる。

もちろん戦闘技術や経験の差で魔力の差をひっくり返すことはできる。

しかし、1人でダンジョンを攻略したジャンゴや、

セントラル騎士団を纏め上げるほどのシュヴァルツ騎士団長が

そこの部分を疎かにしてるとは思えなかった。


「ジャンゴさんはともかく、シュヴァルツ騎士団長と比べても仕方ないですよ。

シュヴァルツ騎士団長はユーロティア大陸で最強の戦士なんですから。

それに、攻略こそできませんでしたけど、ダンジョンを無事に探索できるぐらいに

強くなったじゃないですか!もっと自信を持ってください!」


リーナが一生懸命私を励ましてくれる。

その姿を見てると、ちょっとは心のモヤが晴れた気がする。


「ありがとう、私、負けないから!」

「?よくわかりませんが、頑張ってください!」


こうして私の目標にジャンゴと騎士団長の2人が追加されたのだった。

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