第27話「洞窟からの脱出」
あれからどれだけ歩いただろうか。未だに出口に辿り着かない。
なにせこの洞窟はいくつも道が分かれていて、今どこに居るのかが分かり辛い。
おまけにあの後も何度かゴブリンやオークと戦って時間を取られていたので
一体どれだけの時間が経ったのか見当がつかない。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
リーナの体力ももう限界だ。息も絶え絶えで顔色も悪い。
「リーナ、疲れたでしょう。これ飲んで」
私はハイポーションをリーナに差し出す。
「そ……そんな、さっきから私ばっかり飲ませてもらって……
ミサキさんだって疲れてるでしょうに……」
「私は大丈夫だよ……さっきも一口飲んだし……」
この危険な洞窟の中では休憩する時間も惜しい為、ハイポーションを飲んで
無理やり体力を回復していた。
効果はてきめんで、一口飲むだけでもかなり体力と魔力を回復できた。
「でも……もう残りも少ないのに……」
しかし、これまでに何度か使ったため、
3本あったハイポーションはもう1口分しか残っていない。
「私は大丈夫だから……」
「でも……」
「いいから」
「は、はい……」
割と強引にリーナにハイポーションを飲ませる。
これでハイポーションの残りは無しだ。
これで脱出できなければ共倒れになる。
……覚悟を決めよう。
しばらく歩いていると、再び分かれ道に出た。
しかし片方からはゴブリンの集団が見える。
流石にこれ以上戦闘で体力と魔力を消耗するのは危険な為、ゴブリンの居ない
もう片方の道を選ぶ。
しかし背後からザッザッザッと複数の走る音が聞こえてくる。
ゴブリンの集団が私達を見つけて追いかけて来たのだ。
私はナイフを取り出し応戦する。
しかし多勢に無勢、ずっと洞窟を歩いた疲れもあってだんだんと押され始めて来た。
敵はまだ何匹も居る。ポーションが尽きた今、このまま戦い続けるのは危険だ。
これは賭けだ。
私はリーナの手を引っ張り一目散に逃げ出した。
ゴブリンも私達を追いかけるので、とにかく必死に走った。
「まだ……追いかけてくる……!」
何分走ったことだろうか、後ろを見ている余裕は無いけど、バタバタと言う足音から
まだゴブリンが私達を追いかけていることはわかった。
走っていると、道が横に分かれているのに気が付く。
ここに入ってやり過ごそう!
私達はその横道に飛び込んだ。
すると、目の前から待望の日の光が差し込んでいるのが見えた。
やった!出口だ!
私達は無我夢中でその光の元まで走った。
「はあっ……はあっ……やったぁ……出れたぁ!!!」
外には木が見える、森が見える、空が見える。
遂に、遂にあの悪夢の洞窟から外に出られたんだ……!
そう思うと、とにかく喜びで胸がいっぱいになり、涙があふれてくる。
「私達……あの洞窟から生きて出られたんですね……」
私は振り向くと、そこにあるのは一見すると普通の洞窟の入り口だった。
ゴブリンは追いかけてこないみたい。ここまで追いかけてきたらどうしようかと思った。
「さて……帰ろうか。もうクタクタだよ……」
「そうですね。早く帰ってゆっくり寝たいです」
そんな事を話ながら、私達は帰路についた。