第26話「悪夢の洞窟」
裂け目の中は暗くてよく見えない。深いのか浅いのか、それすらわからない。
私はリーナを抱きかかえると、足に魔力を集中させて落下に備える。
ドンッ!!
鈍い音と共に足に強い衝撃が走る。
痛い……が、骨折ほどの怪我ではなさそうだ。
天井には私達が落ちて来た裂け目から小さく光が漏れているのが見えた。
恐らく10メートル以上の高さはありそうだ、登って戻るのは無理だろう。
「だ、大丈夫ですかミサキさん!?」
そんな事を思っていると、リーナが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫。ちょっと足が痛いぐらいで……」
「今治します!ヒール!」
リーナが回復魔法をかけたことで、足の痛みが引いていった。
「ありがとうリーナ」
「もう……あまり無茶しないでください」
「ごめんごめん」
とりあえずリーナを離して周囲を見渡してみるが、暗くてよく見えない。
「暗くて全然見えないな……」
「それなら……ライト」
リーナは杖から光を放つ。
「これでどうでしょうか?」
「うん。だいぶ見えるようになったよ。ありがとう」
改めて周りを確認すると、そこは洞窟の中だった。
目を凝らすと道が続いてるのが見える。
「とにかくここを出ないと……」
私はリーナと手をつなぐ。この暗闇ではリーナの光が頼りだ。
今まで以上にはぐれないように注意しないと。
しばらく洞窟の中を進んでいくと、何かが向かってくるのが見えた。
私はナイフを出して構えを取る。
そこに居たのはゴブリンと同じ緑色の肌だけど、ゴブリンよりも遥かに大きく、
丸く、豚鼻の顔をしているその姿はファンタジーにおけるオークにピッタリだった。
「バリアー!」
リーナが素早く私にバリアをかける。
オークは斧で私に襲い掛かってくる。
私はそれを素早くよける。
斧は地面に叩きつけられ、衝撃波と共に地面がえぐれる。
とんでもないパワーだ。ひょっとしたらキラーベア並みかもしれない。
しかし幸いにもスピードは遅い。
私は素早くオークの腹をナイフで切り裂く。
しかしオークはそれに構わず、左手で私を振り払う。
私はそれも素早くよける。
キラーベアと言い、図体のデカいモンスターは腹への攻撃の効き目が薄いらしい。
ならば狙いは頭だ!
私は素早く跳び上がると、オークの頭をナイフで突き刺す。
するとオークは光の粒子となり消えていった。
「き、消えた!?」
今までのモンスターは死んだらちゃんと死体が残ってた。
消えるのはこのモンスターの特徴なんだろうか?
「どういう事なんでしょう……」
リーナも困惑している。
オークが消えた謎はわからないけれど、この洞窟は危険だ。
私の勘がそう言っている。
早くここから出たいと焦る心を精一杯落ち着けて洞窟の中を進む。
すると、再び何かが向かってくるのが見えた。
「バリアー!」
すかさずリーナがバリアを張る。
私はナイフを構え、何が向かってくるのか確認する。
向かってきたのはゴブリンだった。
でも、テンセ山のゴブリンとは少し違う。
今までのゴブリンより一回り大きくゴツくなり、武器もこん棒から剣に変わっていた。
動きもテンセ山のゴブリンとは比べ物にならない。
私はゴブリンの攻撃をかわすと、ナイフで腹を切りつける。
しかしゴブリンもナイフの傷に構わず殴りつけてくる。
「うぐっ!」
私はその攻撃をかわしきれず、吹き飛ばされる。
バリアを張っているというのに強い衝撃が走る。
このゴブリン、パワーもタフさもテンセ山のとは比べ物にならない……!
ゴブリンは再び剣で私を切りつけてくる。
私はそれをなんとかかわすと、手をゴブリンに向ける。
「ウィンドカッター!」
風の刃が手から飛び出て、ゴブリンに命中する。
ゴブリンは少しよろめくが、すかさず剣を振り上げる。
しかしその一瞬を狙い、胸をナイフで突き刺す。
するとゴブリンも光の粒子となり消えていった。
「大丈夫ですか!?ヒール!」
ゴブリンが消えたのを確認すると、リーナが私に治癒魔法をかける。
痛みがスウッと消えていく。
「はぁ……はぁ……大丈夫」
「しかし、一体どうなってるんでしょう……」
リーナがぼそりと呟く。
倒したモンスターが光となって消えていくのもそうだけど、どちらのモンスターも
見かけたことが無く、しかもこの付近のモンスターとしては不釣り合いなほどに強い。
こんなのと戦い続けたらあっと言う間に力尽きてしまう。
とにかく早くここから出たい。それだけを祈っていた。




