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24.家族の絆
ワナビは妄想が大好きです。
万年一次落ちという過酷な現実から目を背け、おじいさんは今日も、「もし自分が新人賞を取って作家デビューしたら」、という妄想に耽っています。
「息子夫婦と孫を近所の本屋に連れて行き、レジの前の新刊コーナーに平積みされているワシの本を見せて、こう言うんじゃ。『やれやれ、ワシの才能に、ようやく時代の方が追いついたようじゃ』、とな」
おじいさんの妄想は、バリエーションが豊富です。
この前は、息子夫婦と孫がおじいさんの住居を訪ねて来て、「今までおじいさんのことをキチガイ扱いして、本当に申し訳ありませんでした」、と頭を下げるのを、おじいさんが笑って許すというバージョンでした。
どの妄想の裏にも、息子夫婦と孫への悲しいまでのこだわりが見え隠れしています。
そんなおじいさんの妄想に耳を傾けながら、モウルは人生の無常について考えていました。




