18.あなたの投稿作品をお待ちしております!
そんなモウルに構わず、ワナビのおじいさんは自己紹介を始めました。
「ワシの名前はヴィンセント。ペンネームも本名と同じじゃ」
「本名プレイなのか」
「作家を志してから、一度もペンネームは変えたことがない。投稿する時は、全部この名前じゃ」
「五十年も投稿してたら、もう編集部に名前を覚えられてるだろうね。『あ、またヴィンセントじいさんのが来てる』、とか言われてるよ。伝説のハガキ職人みたいに」
「それならば、一次審査くらい、通してくれてもよさそうなもんじゃがのう」
「小説の新人賞と、成人漫画雑誌の読者投稿欄は違うから」
そう言って、モウルはさっきまで読んでいた童話に、もう一度目を向けました。
「これ、僕はすごくいい作品だと思うけど、商業作品として売れるかどうかとなると話は別だ。異世界に転生しないし、主人公最強じゃないし、ハーレムも作らないし、悪役令嬢も出てこない」
モウルは商業作品と、ナーロ街で人気の出る作品をごっちゃにしています。
「出版社が、いい作品よりいい金になる作品を欲しがるのは、仕方がないよ。社員に高い給料を払わなきゃならないんだから。そのためには、書くのが速いことだけが取り柄の作家に、流行っているキーワードを適当に散りばめたタイトルの作品を矢継ぎ早に書かせまくって、廃人になるまで使い潰すしかないんだ」
モウルが言っていることは適当です。
良い子の皆さんは、決して真に受けてはいけませんよ。