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教えてレヴィ先生


メキメキと全身から力が抜けて脱力する身体にムチをうつが、すぐに息切れを起こしてしまい、地面に這いつくばってはまたトレーニングを続けるという訓練をしている。

いつもはこれくらい余裕にこなしている基礎トレーニングでさえ、今の俺にはとてもキツい。



「本当に宜しいんですかぁ」



レヴィにお願いして、悪魔の力を完全に封印する首輪型のチョーカーを貰い、今はそれで訓練している。

本来こんなもので悪魔の力など抑えられないが半分しか持たない俺には丁度いい。

普段頼りがちな悪魔の力をシャットアウトし、純粋な人間の体力で勝負する。


普通これが当たり前の土俵なのだが、覚醒してからというもの、悪魔としての戦いばかりしていた為に人間としての部分を怠っていた。



「もうやめましょうよ〜無意味ですよ、こんなの」

「ハァ…ハァ…やめない」

「なんでイル様ぁ」

「聖女には悪魔の力は通用しなかったんだろ?ならさ、同じ純粋な人間の力でならどうなんだ?」

「っ…確かに言いたい事もわかりますが、それでも無謀ですぅ」

「俺は出来る事をしないで、勝てなかったのは仕方ないの一言で終わらせたくない。それに俺が半分しか覚醒しなかったのも何か意味があるのかもしれない」

「もうわかりましたから無茶だけはしないでくださいね。自己管理さえできないようでしたらその忌まわしい物は没収ですぅ〜」

「わかったよ、約束する」



ロベリアにも身体の事は忠告されたし、無理のない範囲で鍛えるつもりだ。

しかし、どうにも身体は思う通りに動いてくれない。初日はこんなものかもしれないが予想よりも全然息が上がってしまう。

普段の10分の1にすら満たない俺の体力の無さに失望した分だけ頑張ろうと気合いを入れる。



「ふぅ。基礎はこんなもんで、レヴィ手合わせもお願いする」

「ふええ…今の状態じゃ怪我しちゃいますよぉ」

「回復薬があるから大丈夫。ただ俺も慣れてないから、だいぶ手加減してね」

「しますけどぉ、ハラハラしますから怪我したらやっぱりチョーカー没収ですぅ」



なんだかんだ付き合いのいいレヴィは最後まで付き合ってくれ、俺はボロボロになったし、弱さを実感したがそれが目的だったので今日は良しとする。

悔しさをバネに毎日繰り返し訓練すれば何か見えてくるものがあるだろう。


次の日は激しい筋肉痛に襲われたので軽いストレッチとトレーニングだけで済ませて、魔法の感覚を研ぎ澄ます事にした。

それは学校で佐伯先生に教わり、いつもと技術とかは変わらないが普段とは魔力量が圧倒的に違う為、佐伯先生には節約しつつ魔力の循環を潤滑に行えるような特訓をお願いした。身体が虚弱体質設定を利用し、それを言い訳に身体に負担かけず効率よく行える魔法を、普段よりも重視した。

帰っても練習を行い、魔力切れを起こしたが魔力切れになってもレヴィがいるし聖女側もほぼ人間と変わらない今の俺を以前ほどバレる心配もない。こんな便利な物があるなら早く借りておけば良かったと思ったが、レヴィ曰く悪魔としての覚醒を妨げる為、長期間の使用はオススメしないらしい。


チョーカーを付けない日も設けてしっかりと休む日は休み、余裕があれば悪魔としての鍛錬も行った。

ただやっぱり使えば使うほどチートな力だと散々わかる。疲れにくいのもそうだが、外傷さえ聖気を帯びた物でないとつけられない。体力も魔力も底無しな感じがやはり人外だなと再確認した。



「なぁ。レヴィ」

「なんでしょうか?」



休憩中、レヴィがお茶を入れてくれた。お菓子も焼いてくれたらしい。

アイスボックスクッキーらしくて市松模様が綺麗だ。昨日はスコーンも焼いてくれたし、紅茶も茶葉にこだわっているらしく美味しい。

すっかり小鳥遊家のキッチンに慣れた感がある。



「レヴィってレヴィアタンって言うんだな」

「そうですよぉ〜。ロベリア様から聞いたんですね。イル様は召喚魔法が使えないですが、いつか使える時が来るかもなのでワタクシの真名覚えておいてくださいねっ」

「悪魔の真名って安易に知られると不味くないのか?」

「本来ならそうなんですけど、ワタクシほど上級な悪魔は名前に縛られませんっ記号みたいなものですね」

「そんなんでいいのか…」



前世の世界じゃ七つの大罪だ。ビックネームすぎると思っていたが、この世界じゃ違うのか?ゲーム設定どうなってんのか知らないが、レヴィに嫉妬を司ったりする?って聞いても何の事かわからない感じで、この世界に七つの大罪という認識はないようだ。



「海とか得意だったりする?」

「あー、ワタクシ泳ぐのは得意ですねっワタクシの故郷の妖精森も湖の底にありますしぃ」

「そうなんだ」

「魔界に行ったら一番に連れて行ってあげますねっ」



レヴィアタンとえば海の怪物だ。だが、そんなイメージとは似ても似つかないレヴィだが、水中が得意なのはらしいといったららしい。

妖精森という名前なのに湖の底にあってサキュバスであるレヴィの故郷。

不釣合いな名前すぎかいかと思ったがそもそもサキュバスが肉体言語の拳系な戦い方する時点で色々可笑しいし、それが水の中に棲んでるのも変な光景だろうな。



「妖精森っていうからにはサキュバスって妖精の類いなの?」

「いえ。妖精なのは触手族の者だけですわ」

「触手族?」

「艶めかしい光沢と肉の柔らかさ、無数に伸びる腕の効率の良さとか。見た目は嫌われがちですがマッサージとかされますと誰もが骨抜きにされる…ワタクシ達サキュバスの虜で、つい故郷にしてしまったのですぅ」

「なんか凄く…えっちな感じする…」

「本で載っているような他種族との性交しませんですよ?むしろ皆メスですし、分裂して増やせますから性交する必要ありません」

「そういうものなのか」



触手が妖精っていうのも驚きだが、その触手をえっちな目で見ているのは人間の方な事に少し恥ずかしさを覚える。



「きゃはっイル様のへんたーい」

「やめろっ実物見た事もないししょうがないだろ」

「じゃあ、呼んでみます?」

「呼べるのか?」

「地獄に棲む者にしては温厚で人間界にも適応しやすい易い部類で、あと単純に強いので召喚魔法の練習にオススメですよぉ」

「悪魔のオススメって人間にはハードル高そうなもんだが…」

「妖精も呼べないんじゃ、悪魔なんて夢のまた夢ですし。さらに上級悪魔のワタクシなんて無理なんじゃないですかね?」

「今更だが、魔界のゲートを強引にこじ開けられるレヴィなら召喚魔法使わなくてもいいんじゃ…」

「まぁ、そうなんですけどぉ気分といいますか…必要とされているって実感するんですよぉ。乙女心っていうやつで…いやんっ」



もじもじといじらしく乙女心を主張してくるが悪魔的乙女心、難解すぎてわからない。



「デウスや他の悪魔よりも先にワタクシを一番に呼んでくださいねっ」

「その前に召喚魔法使えるようにならなきゃなぁ」

「みっちりご指導しますわっ」



召喚魔法とはそもそも失われた古代の秘術で、扱える者はこの世界でもごく僅か。

前提として古代語を理解し、術式としてそれを組むこと。

俺は魔法陣に描く前の段階だ。古代語を読み書きできるぐらいにマスターしないとそもそも召喚などできず、外国語を覚えるような感覚でまず始める。



「そもそも古代語って、なんなんだ」

「元は悪魔達が使う言語ですわ。記号のような単語に魔力を乗せたのが始まりで、相手を従える威圧、洗脳など精神的に支配する言霊のようなもの。勘のいいイル様はわかっちゃったかもしれませんが、なんと!魔法を作ったのは悪魔なんですっ」

「マジか」

「古代語を利用して作った魔法を原初魔法。その原初魔法を人間がアレンジして使いやすくしたのが今の魔法ですの」

「じゃあ召喚魔法って原初魔法だから古代語を使って式を組み立てないと発動しないのか?アレンジ不可能だった?」

「原初魔法がなんだかんだ一番威力を発揮しますし、効率がいいんですの。なのに人間は古代語が悪魔が使う悪しき言語だと排斥して、人間独自の魔法を行使する為に魔術回路を作って先祖代々受け継いでるんでしょう?」

「確かに魔術回路云々は御三家が頂点に君臨するのもそれが一つの要因なんだよな。そっくりそのまま魔術回路を生まれる前の子供に受け継がせる秘術を独占して、一部の者にしか公開しないし。一般人もたまに使える子供がいるのは先祖返りとか加護とかで全体的にみれば魔法使いは少ないけどな」



秘術を独占しなければもっとこの世界で魔法が発展したかもしれない。

ただ魔術回路を仕込むとなるとリスクもなくはなくて、技術と長年の知恵、それと適応する身体が必要である。それも長年の研究で培って来た御三家なら容易であるのも確かだ。積まれてきた屍の数だけ歴史がある。

一般人が同じような事するとどれだけ多くの血が流れるか。

適応しない身体での未熟な腕での移植は危険そのもので、適応する身体を一族で定着させるまでの期間は膨大なものであるはず。



「まぁ、人間が使う魔法も悪くはありません。魔法を行使するのに必要な手順を省いて行う魔法は戦いの場では確かに優位です。ただ、手順を省く工程で多くの魔力を消費します。消費する魔力量に対して威力の弱い魔法しか発動できません。魔力量が少ない人間でそれも非効率じゃあありませんか?

だからといって扱いの難しい原初魔法を人間が行使するのも難しいんですが」



難しいから人間独自の魔法の使い方が生まれたんだもんな。



「古代語をマスターして魔法陣をその通りに描き出す。それを行使する魔法事に組み立てて覚えて、頭の中に常に置いておく。行使する時に引き出せるようになれば無詠唱でも強力な魔法が即座にうてるようになりますわ」

「簡単に言うけどな〜」

「魔法陣を暗記すればいいってものではありませんし、仕組みを理解しなければ上手く魔力を巡らす事ができず発動しません。つまりは知識と知恵が試されるんですが、人間は考えるよりも感じろ派なので脳筋ですわよねぇ〜」



力技のレヴィに言われるのだから人類って本当に物事を簡略化したがる生き物だ。

便利な道具を作るのは得意だし、頭がいいのか面倒臭がりなのか。どっちもなんだろうけど。



「そう思うと悪魔になってすぐに召喚魔法が使えた、しかも上級悪魔を呼び出したロベリアって凄いんだな」




瞬時に頭の中に魔法陣を描き出し、狂いなき計算において作られたものでなければいけない。

本をよく読んでいたと言ってたロベリアは古代語に対して知識と知恵があったとしても経験がない。それなのに一発で成功させてしまう才能は魔王としての素質が嫌でもわかってしまう。

改めてそんな歴代魔王最強さの誇るロベリアでさえ敵わなかった聖女に魔王ひよっこな俺が勝てるのか。

悪魔が当たり前に扱える魔法一つすらこなせない俺はどうすれば追いつけるだろうか。


いや、そうじゃない。まずは俺に出来ることから始めようと決めたはずだ。

幸い、俺の、イルとしてのスペックは高い。古代語の本を読み解き、わからないところは逐一レヴィに聞いて理解を深めていく。

そうしていく事で古代語が少しずつだがわかってきた。


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