ね、街に行こうよ
「あのさ、街にいこうぜ。自転車で。」
亘理は帰り道で仲間に話した。
「でも、街に出るのは親が一緒じゃないと。」
「先生が言ってたよ。うちらだけじゃ怒られる。」
連坊と富沢が言い返した。この街は狭いから、学校帰りに先生が街で買い物してる時に出くわしたら大変だ。
「だからさ、今度の水曜日のお昼で終わる日に行くのさ。」
今度の水曜日は文化祭の準備で早く終わる。この日の先生たちは、夜まで学校にいる。
「絶対に見つからないよ。自転車なら30分くらいで行けるかも。」
自転車を乗り回しているのは近所しかしたことはないが、たぶんそんな感じなはずだ。
「ふつうどおり、遊びに行ってくるって言えばバレない。」
亘理が熱心に語る。何としても行きたいわけは
「アンドーチェーンの大恐竜展、日曜日に終わっちゃうだろ。」
「日曜日はおばあちゃんちに行くから、うちらで行くには水曜日しかないの。」
大恐竜展は話題になっていた。1週間しか開催しない割に、恐竜の骨が触れてタッチ証明書がもらえる。連坊も富沢も、そういえば行きたい。
「行き方は分かるのかよ。」と富沢が聞くと
「わかるよ。お母さんと車で行くときに道を覚えたもん。」と亘理が答える。
じゃあ決まりだ、水曜日決行!となった。亘理が熱心だから2人がつられたのだ。
富沢はどうせ行くなら、科学館も行きたいなあと思っていたのだが。
水曜日、給食が終わって帰りの会が済むと
「じゃ、おれんち集合ね!」と亘理が走って帰り、富沢と連坊もバラバラに帰って自転車に乗る。20分後には3人は出発していた。1番近いルートは谷に掛かる橋を渡ってお城を抜ける道だが、学校の前を通らないといけない。これはキケンだ。というわけで正反対の方向に坂道をおりてバイパスから街へ行く。この道は自転車専用のレーンが歩道の脇にあって安全だ、しかもアンドーチェーンの前につながる1本道だ。
友達だけで走ると、見慣れた道も違って見える。バイパスも1本道かと思ったら、何か所か分かれ道がある。信号で停まってるうちに
「たぶんこっち。」と選んでいたら知らないとこに着いてしまった。
「あれ?ここは番町アーケードじゃん。」
「アンドーチェーンはどこだっけ?」
あっさりと3人は、この街で迷子になってしまった。この街はアーケードがメインストリートで、自転車は通れないから、路地裏の目立たない所に停めて歩いて行くことにした。
何となく街の地図がアタマに入っている連坊が「こっちこっち」と言うのでついて行ったら全然違うとこに出てしまう。
「なんだよ、アンドーチェーンがあっちに見えるぞ。」と亘理はムッとし始めた。
「あのさ、あと1時間しかないよ。5時に家につかないとだから。」
亘理はアンドーチェーンの大恐竜展があきらめきれない。
「あ、あれ科学館じゃん。」富沢が言った。
「僕は科学館も行きたいなあ。」
亘理は大恐竜展に行きたいから、
「じゃ、オレはアンドーチェーンに行く。」
「お前らは科学館行けば。1時間後で自転車のとこに集合。」
と、二手に別れた。




