表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/226

お嬢様 いろは坂 彩ちゃんの奮闘

 

 《紅の監視者》のマシンが危険な角度で迫る。通常ならクラッシュ必至の場面だが悠翔は身を盾にするようにバイクをねじ込み、その進路を変えさせた。


 無線が一瞬だけ混線し、彩の耳に届いた。

「彩、ここはお前たちじゃ……まだ」

 声が途切れる。

 だが、その断片だけで、悠翔が何かを知っていて、彩たちを守ろうとしていることは明らかだった。


「悠翔……あなた……」

 彩の喉が震える。


 《紅の監視者》と悠翔が紅葉の闇に消える一瞬、彼のヘルメットの隙間から漏れた声が再び届く。

「真実に触れるな……お前まで巻き込まれる」


 その言葉は、彩の胸に重く沈んだ。


 守っているのか、突き放しているのか。

 悠翔の意図はまだ掴めない。だが確かに彼は、アルテミスをただの敵として見てはいなかった。


 紅葉舞う峠に、再び轟音が響き渡る。

 戦いは続く。だが彩の心には、新たな疑念と希望が芽生え始めていた。


 濡れ落ち葉を踏み荒らすエンジンの咆哮。

 《紅の監視者》のバイクが鋭いカットインでアルテミスのラインを寸断しようとした、その瞬間だった。


 黒い閃光が割り込んだ。


 悠翔のマシンが、常識外れのタイミングでインに飛び込み、《紅の監視者》と彩の間に楔のように滑り込む。

 火花が散る。フロントカウル同士が一瞬触れたかと思うほどの距離。


「……邪魔をするか、裏切り者」

 《紅の監視者》の低い声が無線に漏れた。


 悠翔は応じない。ただひとつ、ヘルメット越しに振り向き、ほんのわずかに彩の目を射抜いた。

 その視線だけで彼が何を賭けているのか、彩には直感できた。


 次の瞬間、悠翔は《紅の監視者》の進路を意図的に塞ぎ、あえて自らのマシンを壁際に押し込む。


 彩にだけ伝わる意志を残す


 戦局を一気に動かす「見せ場」を作る


 通常では考えられない「自爆覚悟のブロック」。

 紅葉舞う峠に、金属がきしむ音が轟き渡った。


「彩……行け!」


 かすかに届いた声。

 それは幼い日の別荘で聞いた、あの真っ直ぐな声と同じ響きだった。


 彩の心臓が跳ね上がる。

 悠翔の行動により、一瞬だけ《紅の監視者》の動きが止まるアルテミスにとって決定的な突破口が生まれたのだ。


 金属が軋む音が消えた直後、峠道には一瞬の静寂が訪れた。

 《紅の監視者》の進路を悠翔が塞いだ、その隙間はほんの一呼吸。


「今しかない!」

 梓の声が無線に響く。


 雅が即座にハンドサインを掲げる。

 隊列再編。


 麗子が冷静に後続を抑え、宗子と琴音がインを広げるようにラインを描く。

 その動きは、悠翔がこじ開けた空白を、確実にアルテミスが「突破口」に変えていく布石だった。


 金属が軋む音が消えた直後、峠道には一瞬の静寂が訪れた。


 《紅の監視者》の進路を悠翔が塞いだ、その隙間は、ほんの一呼吸。



「彩ちゃん、行って!」

 あかねが後方から声を張り上げる。


 彩は喉が詰まりそうになるのを押し殺し、スロットルを一気に開いた。

 胸に響くのは、さっき届いた悠翔の声。

 彩、行け。


 涙が滲んだ視界の奥で、路面の光が一本の矢のように走る。

 前へ。迷わず。


「……うん!」


 次の瞬間、彩のKIDA-RE400Rは鋭いロータリーサウンドを響かせ、《紅の監視者》の隙間へと飛び込んだ。


 後続のメンバーはそれを守るようにシールドを組み、アルテミスの隊列は流れる矢のごとき攻撃布陣に変わる。


 悠翔が刻んだ一瞬の“犠牲”は、チーム全員の結束と彩の決意で、確実な「勝機」へと姿を変えていった。


 夜風が叫ぶように吹き抜け、紅葉の影が流れていく。

 アルテミスの隊列を割って前へ飛び出したのは彩。


「わたしは……もう、逃げない!」


 スロットルを捻る。

 ロータリーが咆哮を上げ、火花を散らすようにギアが噛み合う。


 《紅の監視者》のマシンが一瞬の遅れもなく応じた。

 二台のバイクが峠の闇を切り裂き、火花を散らしながらコーナーへ突っ込む。


 極限のブレーキング。

 インとアウトの奪い合い。

 タイヤが悲鳴を上げ、路面の限界を踏み越えた先で、二人のライダーは互いの存在だけを睨み続けていた。


(絶対に、譲らない……!)


(この少女が――俺の進む道を阻むのか!)


 視線が交錯した瞬間、峠の闇が稲光のように裂けた。


 次の一手を決めるのは、彩か、それとも《紅の監視者》か。


 目の前にいるのは、黒いマシンに跨る《紅の監視者》。

 その存在感は、暗闇に溶け込む巨大な影のようで、ただ並ぶだけで胸を圧迫するほどの威圧感を放っていた。


「……来い」

 低く、重く、ヘルメットの奥から響いた声。


 その声に、彩の指先は震えた。けれど震えと同時に、幼い頃の憧れと自由への衝動が胸の奥を突き上げる。


 闇のいろは坂を裂く、二条の光。

 彩と《紅の監視者》は、互いに譲らぬまま、最終区間へと突き進んでいた。


 残されたコーナーは、あとひとつ。

 アウトから強引に被せようとする《紅の監視者》。

 だが、彩は恐怖を振り払い、視線を前だけに注いでいた。


「……自由は、誰かに奪われるものじゃない!」


 叫ぶようにスロットルを開け放つ。

 マシンは咆哮し、タイヤが赤い火花を散らした。


 《紅の監視者》のバイクがさらに内へ滑り込み、車体同士が接触寸前、

 その瞬間、彩はわずかにブレーキをかけ、減速した。


 ほんの一瞬の“間”。

 《紅の監視者》はオーバースピードで膨らみ、ラインを外す。


「なに……!?」


 黒いマシンがガードレールぎりぎりに揺さぶられたその隙を、

 彩のロータリーが切り裂くようにインへ飛び込む。


 そして、ゴールの直線。


 彩の背後で、《紅の監視者》のバイクが必死に追いすがる。

 だが差は縮まらない。

 むしろ、彼女の瞳に宿る光は、燃えるように強くなっていた。


「これが……わたしの走り!」


 その叫びと共に、彩は先頭でゴールを駆け抜けた。

 峠に轟いたのは、勝利のエンジン音そして、自由を掴んだ少女の心臓の鼓動だった。


 後方で減速する《紅の監視者》の姿。

 だが、そのヘルメットの奥から漏れた声は、敗北を噛みしめるようであり……どこか、彩を試すようでもあった。


「……面白い。やはり、お前が........」


 その続きを告げる前に、闇が二人の間を切り裂いていった。


 彩がゴールを切った瞬間、いろは坂の夜気を切り裂いて歓声が響いた。

 待機していたアルテミス、ルナゴスペル、ルナヴァイオレットのメンバーが、一斉に駆け寄ってくる。


 彩がゴールを切った瞬間、いろは坂に張りつめていた空気が弾けた。

 仲間たちが駆け寄り、彩のマシンを取り囲む。


 梓が駆け出して、真っ先に声を上げる。

「彩っ! 大丈夫!? 無茶しすぎよ!」


 宗子は彩のマシンを覗き込み、目を丸くする。

「タイヤ、完全に使い切ってます……! でも、よく持たせましたね……!」


 そこへ、静かに歩み出たのはアルテミス総長・三条雅。

 彩の前に立ち、ヘルメットを外した彼女は、凛とした眼差しで彩を見つめた。


「……彩さん。あなたの走り素晴らしかったわ」


 仲間たちの視線が一斉に雅に集まる。

 その中で、雅はふっと微笑み、彩の肩に手を置いた。


「あなたは、自由を掴もうとする意志を示した。

 だがアルテミスの戦いは、まだ始まったばかりですわ」


 その言葉に、彩の胸が熱くなる。

 雅の声は、まるで未来を指し示す羅針盤のように響いていた。


「……はい!」

 涙をこらえながら、彩は大きく頷いた。


 紅葉の下、雅の静かな宣言に、ルナゴスペルもルナヴァイオレットも頷く。

 アルテミスを中心とした姉妹チームの結束は、かつてないほど強く固まっていった。


 《紅の監視者》とは何者かその意図は・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ