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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 彩の葛藤と思わぬ中断

 

 紅葉に染まる山道に、黒いライダーの残した排気音がこだまする。

 その姿が闇に溶けて消える瞬間、彩の胸に、何かが突き刺さった。


「……あの声……」


 たった一言。

 ヘルメット越しの、かすれた声。

 それだけで、忘れようとしてきた幼い日の記憶が呼び覚まされる。


「彩、お前はきっと自由になれる」


 耳に残ったのは、かつて彩が憧れ続けた“自由”という言葉。

 あの頃、幼い心を震わせた響きが、まるで昨日のことのように甦る。


「まさか……そんなはず……」


 自分に言い聞かせるように呟く。

 だが、胸の奥底でざわめく感覚は止まらない。

 あれは間違いなく彩の初恋と重なる声だった。


 紅葉の下、彩は震える指先を見つめながら、心の奥で確信する。

 過去はまだ、終わっていない。


 雨に濡れた紅葉の坂道。

 激しい接戦の中、突如、森の奥から数頭の鹿が飛び出した。


「わっ!」

 梓が咄嗟にブレーキを握る。

 彩も雅も反射的にラインを外し、滑りやすい路面に神経を尖らせる。


 《紅の監視者》の一人が無理に突っ込み、マシンが一瞬傾く。

 仲間たちは互いに目配せし、接触を回避するためスピードを落とす。


 紅葉の葉が舞い、雨粒が火花のように反射する中で、全員が止まり、呼吸を整える。

 静寂の中、彩の耳に低く響いた声。


「……彩。まだ、自由を夢見ているか?」


 ヘルメット越しに聞こえたその声に、彩の胸が大きく揺れた。

 だが振り返ると、黒いライダーの姿はもう消えていた。


 極限のバトルは、自然の混乱によって、一時的に幕を下ろした。


 雨粒で濡れたマシンを押しながら、三チームは峠の小さな広場へと集まった。

 アルテミスもルナゴスペルも、ルナヴァイオレットも、互いに無事を確認し合いながら、呼吸を整える。


「ふぅ……やっと止まれたわね」

 雅が笑みを浮かべる。

「危なかったけど、みんな無事で何より」

 梓も微笑む。

 仲間たちは自然と緊張を解き、紅葉の美しさに目を向けた。


 だが、彩はその輪の中にいながら、心ここにあらずといった表情を浮かべていた。


 胸の奥が、黒いライダーの声でざわつく。

 あの声幼い頃の自由への憧れを呼び覚ました声。そして、初恋の面影と重なった。


「彩さん? 大丈夫?」

 エマの優しい声に、彩は咄嗟に笑みを作る。


「だ、大丈夫。ちょっと……疲れただけです」


 言えない。

 あの声を聞いたことも、初恋と重なる感覚を抱いたことも、誰にも。


 彩は缶コーヒーを両手で包み込み、湯気の向こうで揺れる紅葉を見つめる。

 仲間の笑い声が遠く感じられるほど、心の奥で秘密が波のように押し寄せる。


「……でも、どうして……」

 小さく呟く声も、雨音にかき消される。

 彩はまだ、誰にも打ち明けられない。


 心の中だけで、過去と現在の狭間に揺れる想いを抱き続けるのだ。


 紅葉が舞い散る広場で、仲間たちの温もりと、自分だけが抱える秘密の重さが、静かに交錯していた。


 紅葉が舞う広場で、仲間たちが談笑する中、彩は心の中のざわめきを押さえ込む。

 あの声、黒いライダーの声が、胸の奥で繰り返し響く。

 初恋の面影と結びつくその響きは、彩にとって甘くも痛い記憶だった。


 仲間たちは最初、些細な違和感に気づかない。

 しかし、彩の動きや反応の微妙な変化は、徐々にチーム全体に伝わっていく。


 雅は鋭く察する。

「彩さん、何か心配事があるみたですね……?」

 エマも視線を合わせ、軽く肩に手を置く。


 彩は胸の中で葛藤する。

(打ち明けるべきか)

(でも、今はまだ、誰にも言えない)


 その瞬間、黒いライダーの存在が、単なる過去の面影ではなく、チーム全体の戦いにも影を落とす要素になっていることを、彩自身が痛感する。


 紅葉の下、雨に濡れたマシンと仲間たちの輪の中で、彩はひとり小さく息をつきながら、心に決める。


「……絶対に、負けられない……」


 まだ誰にも明かせない秘密を抱えつつ、彩は仲間たちと共に、次の戦いへと心を整えていく。

 そして、この黒い影は、やがてチーム全体に、思わぬ波紋を広げることになる。


 紅葉が舞う広場で、三チームはマシンを押しながら雨に濡れた装備を確認する。

 仲間たちの笑顔や声に彩は混じるものの、心はざわついていた。

 あの声、黒いライダーの声頭の中で繰り返される。


「彩ちゃん、手袋大丈夫?」

 エマの優しい声に、彩はぎこちなく笑みを返す。


 雨に濡れたマシンを押しながら、三チームは広場で一息つく。

 紅葉の葉が舞い、冷たい風が頬をかすめる。


「そろそろ行こうか」

 雅の声に皆が頷き、再びマシンに跨る。


 彩もハンドルを握り、心の中で一度深呼吸。

 胸に引っかかる感覚、黒いライダーの声を振り払うように、アクセルに力を込めた。


 山道を進む途中、彩はふと、仲間たちと並走するタイミングで口を開く。


「……私、実は……」


 その声に、梓やエマ、雅が視線を向ける。

 彩は息を整え、続ける。


「さっきの、黒いライダー……幼い頃の私の初恋の人と関係があるかもしれないの」


 一瞬の沈黙。だがすぐに、仲間たちの顔に優しい理解が広がる。


「なるほど……だから、あんなに動揺してたのね」

 エマが微笑む。

「わかったわ、彩さん。私たち、あなたを支えるわよ」

 梓も力強く頷く。


 彩は肩の力がふっと抜けるのを感じた。

 打ち明けたことで、胸の重さは完全ではないにせよ、少しだけ軽くなった。

 仲間と共に、雨に濡れた紅葉の峠道を再び進む。


 そして彩の心には、決意が芽生えていた。黒いライダーと向き合い、仲間と共に立ち向かう。


 山道を下り、三チームは一旦安全な広場に停車した。

 彩が口を開いた直後の沈黙も、すぐに仲間たちの集中力へと変わる。


「なるほど、状況が少し見えてきたわね」

 雅がマシンを押しながら地面に描かれた落ち葉を踏み、指で作戦の流れを示す。


「黒いライダーは、彩に個人的な目的がある可能性が高い。接触や挑発の動きからも目が離せない」

 梓が手持ちのデバイスを取り出し、レーダーや走行データを確認する。


「私たちは三方向から情報を収集する。ルナゴスペルは先行偵察、ルナヴァイオレットは支援・補給、アルテミスは本隊で接触準備」

 雅の声に、皆が頷く。


「わかったわ。彩ちゃん、大丈夫? 無理はさせないから」

 エマの視線に彩は微笑み、頷いた。


「うん……やるしかない。みんなと一緒なら」


 作戦は簡潔で、かつ迅速に決まった。

 紅葉の下での静かな空気は、瞬く間に緊張感に変わり、全員の目に戦う覚悟が宿る。


「じゃあ、再出発よ。黒いライダー、待ってなさい」

 雅がアクセルを軽く開け、マシンのエンジン音が広場に響く。


 彩は仲間の間に入り込み、心の奥で決意を固めた。

 胸の中で黒いライダーへの恐怖と期待が入り混じる。

 だが、もう孤独ではない。仲間と共に、次の戦いの峠道へ踏み出した。


 雨に光る紅葉が、次の激闘の舞台を静かに照らす。


 紅葉の峠道に、雨粒とマシンの排気音が混ざる。

 胸の奥でざわめく緊張と、仲間との決意が交錯する中、

 黒い影は、すでに次の瞬間を待ち構えていた。


 運命の再遭遇まであとわずか。



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