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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 彩ちゃん 初恋の邂逅と自由への扉

 

 次の連続ヘアピン。

 《紅の監視者》は、もはや冷静さを失っていた。


「退けぇッ!」

 怒号とともに、一人が雅のインを強引に突く。

 ブレーキの火花、わずかに触れ合うカウル。

 一歩間違えば即転倒、そんな極限の距離。


 次の連続ヘアピン。

 《紅の監視者》は、もはや冷静さを失っていた。


「退けぇッ!」

 怒号とともに、一人が雅のインを強引に突く。

 ブレーキの火花、わずかに触れ合うカウル。

 一歩間違えば即転倒そんな極限の距離。


「くっ……!」

 雅は冷静にカウンターを当て、体勢を立て直す。

 だが、監視者の別の一人が背後から迫り、テールにほとんど接触するほど詰め寄った。


「こんなの、レースじゃない!」

 麗子が声を荒げる。

 だが、彼らに理屈は通じない。

「俺たちは負けられないんだ。どんな手を使っても!」


 雨上がりの路面に、タイヤの痕が黒く刻まれる。

 その瞬間、監視者の一人が、ハイサイド寸前のスリップを起こした。

 車体が大きく揺れ、周囲にぶつかりかける。


「危ないっ!」

 彩が咄嗟にバイクを傾け、間一髪でかわす。

 紅葉の葉が舞い散り、火花とともに夜空を切り裂いた。


 火花を散らし、スリップ寸前のマシンが辛うじて持ち直す。

 だが、そこで終わりではなかった。


「離すなッ! 食らいつけ!」

 《紅の監視者》のリーダーが怒鳴り、隊列がさらに速度を上げる。

 すでに制御の限界を超えているはずなのに、彼らはアクセルを緩めない。


 いろは坂の急勾配、連続するヘアピン。

 前照灯の光が紅葉を照らし、舞い散る葉が閃光のように乱舞する。


 アルテミスも負けてはいなかった。

 梓はモーターを駆使し、濡れた路面でも安定した立ち上がりを見せる。

 宗子のマシンはセラミックローターが火を噴き、ブレーキポイントを限界まで削って食らいつく。

 雅のライン取りは、《紅の監視者》のラフな突っ込みを受けても揺るがない。むしろ、わずかな隙を的確に突いて抜け出す。


「……強すぎる……!」

 監視者の一人が呻く。

 だが、その呻きさえ加速の叫びに変えて、さらに無理な突入を繰り返す。


 その瞬間、ルナゴスペルの美奈子が吼えた。

「だったらこっちも本気で行くわよッ!」

 彼女のマシンが唸りを上げ、《紅の監視者》の車列に斬り込む。

 千秋と沙耶香も後に続き、両側から圧をかける。


 三チームと監視者。

 紅葉の闇に散るのは、舞い落ちる葉か、それとも火花か。


 勝負は、今や極限の領域へ突入した。


 そのとき、突然。


 パラッ……パラララ……


 冷たい雫がフロントカウルを打った。

「……雨だと!?」梓が叫ぶ。


 霧のように細かい雨が急速に広がり、乾いていた路面が一瞬で濡れ始める。

 スリック寄りのタイヤを履いた《紅の監視者》の一人が、コーナー立ち上がりでリアを滑らせ、ガードレールすれすれに横流れする。

「くそッ、制御が効かない!」


 だが、混乱はそれだけではなかった。

 降り出した雨に驚いたのか、鹿の群れが、森の中から飛び出してきた。


「まじかよッ!?」

「動物っ!? 避けろぉおおッ!」


 数台が急制動を強いられ、火花を散らしながら蛇行する。

 ギリギリで避けたと思えば、今度は対向から一台の影。


 真っ黒なバイク。

 車体にチーム名もなく、ヘルメットも無地。

 だが走りは異様に鋭い。


「誰だ……あの人……?」

 雅の瞳が細められる。


 監視者も、アルテミスも、ルナゴスペルも一瞬気圧される。

 その“謎の影”は、鹿の群れを縫うように加速し、全員を置き去りにする勢いで走り去った。


「ちょっと待て……! あれ、《紅の監視者》じゃない……!」

 美奈子の叫びが響く。


 土砂降りと化した雨、鹿の群れ、混乱のいろは坂。

 その全てをかき消すように、黒いバイクが颯爽と走り抜けた。


 その瞬間、ライダーが短く吐き捨てた。



 雨の轟音を突き抜け、黒いライダーが低く吐き捨てた。


「風は、自由の味がする」


 その一言で、彩の胸が締めつけられた。

 幼い頃、遠くの別荘地で出会ったあの人が、

 無邪気に笑いながら語った「自由」という言葉。


 聖凰女学院の厳格な日々、官房長官の娘として歩んできたレール。

 すべてを守るために抑えてきた感情。

 けれど、その言葉が、今、心の奥底の願望を呼び覚ます。


「……あの人……まだ……」


 ハンドルを握る手が小刻みに震える。

 雨粒も、エンジンの轟音も、彩の胸の高鳴りにかき消される。

 彼女は、知らず知らずアクセルを深く踏み込み、自由を求める心と、再び交わる運命の走りに身を投じた。


「行くわよ、みんな!」

 彩の声に、雅も梓も美奈子も瞬間的に反応する。

 全員の目が揃った。もう迷わない、誰も置き去りにしない。


 コーナーを抜ける度に、仲間たちのマシンが連携する。

 彩が先導する形で、ラインを繋ぎ、雨に濡れた路面を正確に刻む。

 監視者の突進も、アルテミスとルナゴスペルの連携でかわしながら、逆に挟み込む。


「自由を奪うなんて、誰にもさせない!」

 彩の叫びが、雨音をも超えて響く。


 《紅の監視者》たちは驚愕する。

「……何だ、この連携……!」

 単独の猛攻を仕掛けても、三チームの固い結束に翻弄される。


 紅葉の舞う夜空に、火花が散る。

 雨粒が光を反射し、まるで星が瞬くように峠を彩る。

 彩の心もまた、長く閉ざされていた翼を取り戻したかのように、熱く自由を求めていた。


 そして、極限のバトルの中で、仲間と共に走ることこそ、

 彩にとっての本当の“自由”なのだと確信する。


 雨に濡れた紅葉のいろは坂。

 アルテミス、ルナゴスペル、ルナヴァイオレットの三チームが、一体となって《紅の監視者》に立ち向かう。

 だが、その脇を駆け抜ける謎のライダーの存在が、戦場の空気を歪ませる。


 彩はアクセルを握り締め、無意識に思い出していた。

 幼い夏の日、遠くの別荘地で笑いながら語った言葉、


「風は、自由の味がする」


 その声と、今目の前で低く響くライダーの言葉が重なった。

 雨粒の中、視界に映るシルエット。

 幼い日の面影が、確かにそのフォームに宿っている。


「……あの人……」


 胸が締めつけられる。

 怒りでも、恐怖でもなく、自由への憧れと懐かしさが混ざった感情が波のように押し寄せた。


 しかし、戦場は待ってくれない。

 黒いライダーは一瞬、彩を見つめ、次の瞬間には《紅の監視者》の隊列に突っ込む。

 その背中に、幼い頃の笑顔を思い浮かべながら、彩は決意する。


「……逃がさない!」

 過去の想いを力に変え、彩は仲間と共に加速する。

 紅葉の夜空に火花が散り、雨粒が光を反射して星屑のように輝く。


 過去の記憶。そして現在の戦い。

 二つの時間が重なり、彩の胸に熱く、自由を求める意志が燃え上がる。


 雨が叩きつけるいろは坂。

 ヘアピンを抜けるたびにマシンが悲鳴を上げ、火花が散る。

 アルテミス、ルナゴスペル、ルナヴァイオレットの三チームが一糸乱れぬ連携で《紅の監視者》の攻撃をかわす中、黒いライダーが突如アルテミスの隊列に接近した。


「彩、覚えているか?」


 低く響く声。

 その瞬間、彩の心臓が跳ねる。

 声だけで、幼い日の記憶が一気に甦る。

 別荘の庭先で交わした約束、あの夏の日の笑顔。


 黒いライダーは、わずかにマシンを並走させ、彩の目を覗き込む。

「俺は……お前に約束したんだ、自由を見せるって」


 彩は言葉を失う。

 理性では冷静を保とうとするが、胸の奥の自由への渇望が強く反応する。

「……あの頃のあなた……」

 その声に、ライダーは微かに笑みを浮かべた。


 接触は一瞬だった。

 次の瞬間、黒いライダーは監視者の隊列に再び飛び込み、戦場を攪乱する。

 だが彩の心には、幼い日の初恋と、今の戦いが重なる鮮烈な感情が刻まれた。


「……わかった。私、もう迷わない!」

 ハンドルを握る手に力が込められる。

 仲間たちと共に、彩は過去の影に背中を押されるように、再び極限のバトルへと飛び込む。


 紅葉が舞い、雨が光を反射して星屑のように輝く中、過去と現在が交錯する瞬間。彩の自由への想いが、仲間たちとの絆と一つになった。


 雨と紅葉の峠に響く轟音。

 黒い影の正体が明かされるその瞬間、彩の心は再び揺さぶられる。

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