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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『臨界の月』

 官房長官執務室

 分厚い資料が山のように積まれた机の前に、彩はまっすぐ立っていた。 その瞳には、迷いも躊躇もなかった。


「お父様、あの工場を守らなければ……あの人たちは、大切なものを失ってしまいます」


 官房長官である父は、眼鏡を外し、静かにため息をついた。


「彩……これは単なる工場の話ではない。背後には外国企業、そして御厨がいる。証拠も不十分なまま政府が動けば、逆に攻撃の口実を与えるだけだ」


 それでも、彩は一歩も引かなかった。


「だからこそ、私たちが動きます。証拠は、必ず掴みます。……お父様、どうか、信じてください」


 父はしばし沈黙したまま娘を見つめ、やがて静かに頷いた。


「……お前も、もう子どもではないのだな。分かった。官房として表立って動けることは限られている。だが、必要な情報は渡そう」


 彩の目が潤む。父は書類を閉じ、再び官房長官の顔に戻った。


「行け。ただし、無茶はするな。それは国のためでもあり……私の娘のためでもある」


「でも、本当に、ほんと~~に、ムチャしちゃだめだぞ。そうなったら、お父さんは…お父さんは…うううう」


「もう~お父さんのバカ!」


 夜、アルテミス拠点

 梓のPCに浮かぶ赤い回線が、麗子の広げた金融フローチャートと重なっていく。 そこにエマの国際レポート、宗子の技術解析が次々と加わり、情報の海が形を成していく。


「資金の流れ、土地の動機、技術の価値、そして国際的な黒い繋がり……全部、揃ったわ」 麗子がコーヒーをすすりながら、静かに言った。


「……それ、冷めてるよ」 エマが小声で突っ込み、麗子は肩をすくめた。


 梓が最後のキーを叩くと、ディスプレイに御厨議員の名前が赤く浮かび上がる。


「これで確定。御厨と外国企業……黒は完全に繋がった」


 部屋の空気が一瞬で張り詰める。 彩は深く頷き、父の言葉を思い出した。


「証拠と理屈がなければ、正義は通らない。……これで、道は開ける」


「それでは、作戦名ムーンフォール、発動します」

 雅の声が静かに響いた。


 国会・衆議院予算委員会

 赤いランプが灯り、NHKの中継が始まる。 議員席の一角、御厨議員は落ち着かない様子でネクタイを直していた。


「御厨議員」

  保守系野党の女性議員が立ち上がり、鋭い声を響かせる。


「あなたが関与したとされる工場用地の乗っ取り事件について、いくつか質問します。中山精機工業は“外国企業からの圧力があった”と証言しています。これは事実ですか?」


 議場がざわつく。 御厨は慌ててマイクに顔を寄せた。


「い、いや、それは……私の知る限りでは……」


 その瞬間、背後のスクリーンに資料が映し出される。 地方銀行を経由した不自然な資金の流れ。御厨の関連団体への送金記録。 外国企業の代理人と、御厨の私設秘書とのメールのやり取り。


「これは一体、どう説明なさるのですか?」


 御厨は額に汗をにじませ、書類をめくるが、答えは見つからない。


「わ、私は知らない! 部下が勝手にやったことだ!」


 声を荒げたが、議場には失笑が広がった。


 その瞬間、傍聴席の記者たちのスマートフォンが一斉に震える。 梓がリークしたネットニュースが、速報として流れ始めたのだ。


「御厨議員、外国企業との密約文書」


「地方銀行の裏帳簿を入手」


 SNSは怒りと驚きの声で埋め尽くされる。


「御厨議員、あなたは日本の技術を外国に売り渡し、その見返りに資金を受け取っていた。国民を裏切ったこの事実、否定できますか?」


 議場は静まり返る。 御厨の唇が震え、言葉が出ない。 その沈黙こそが、すべての答えだった。 


 その瞬間、議長席に一通の封筒が届く

「御厨議員に関し、警察庁組織犯罪対策部より緊急報告。本日午前、関連先への強制捜査が行われております」


 議場に衝撃が走る。


 都心・赤坂 御厨議員事務所

「ガサ入れだ!」


 刑事たちが事務所に突入し、キャビネットを封印。 記者たちがカメラを構え、フラッシュが乱れ打ちになる。


 議員会館の事務所では、現金の束と黒いファイルが押収される。


「これが裏金の証拠だ!」


 若い刑事の声に、報道陣のシャッター音が鳴り響く。


 地方銀行の本店では、真っ青な顔の頭取が連行されていた。


「反社との取引に加担した疑いで、事情を伺います」


 国会議場

 御厨は立ち上がろうとするが、足が震えて動けない。 野党議員が冷ややかに言い放つ。


「御厨先生、もう逃げ道はありませんよ」


 傍聴席の隅で、あかねがぽつりとつぶやいた。

「……祖父の部隊は、こういう時に一切の躊躇をしない」


 御厨は答弁台に突っ伏すように崩れ落ちた。 議場は怒号と歓声の渦に包まれていく。


 数時間後・霞が関 記者クラブ

 経済同友会・日経連の幹部たちが壇上に並ぶ。 その中には琴音の父、そして雅の祖父である三条グループ会長の姿もあった。


「一部の政治家の私腹のために、日本の技術が海外に流出するなど、断じて許されない」


「政治の信頼を取り戻すため、徹底した調査と責任追及を求める。それができないなら、今後一切、政府の要望には応じない」


 記者たちの質問が飛び交う中、琴音は中継を見つめながら、そっと拳を握った。


「……お父様、ありがとう。これで流れは決まったわ」


 翌日・都内ホテル 木田技術 緊急会見

 登壇したのは、社長である宗子の父。隣には専務として宗子の姿もあった。


「わが社は、某国との技術供与契約を即時停止し、現地工場からも今期中に撤退します」


 会場がざわめく中、父は続けた。


「日本の技術は、日本人の努力と誇りの結晶だ。利権のために利用されることは、決して許されない」


 宗子が前を見据え、はっきりと語る。


「木田技術は逃げません。日本の仲間たちと共に、正しい未来を選び取ります」


 SNSでは「#木田技術」「#日本の技術を守れ」がトレンド入りする。


 アルテミス拠点の一室。 中継を見届けた雅は、静かに頷いた。


「……これで決定的だ。御厨も、その後ろにいた連中も、もう逃げられない」


 彼女は手元のホットラインに目を落とし、受話器を取った。 その指先は、まるで迷いのない水流のように、番号を押していく。


「こちら雅。……最終段階に入るわ。例の件、お願い」


 電話の向こうから、低く落ち着いた声が返ってきた。


「了解。こちらも準備は整っている。あとは、君たちのタイミング次第だ」


 雅は受話器を置き、窓の外を見つめた。 冬の夜空に浮かぶ月が、静かに地上を照らしていた。


 彩の決意

 その頃、彩は一人、父の執務室の前に立っていた。

  扉をノックすると、父は書類から顔を上げ、微笑んだ。


「……来たか。どうやら、すべてが動き出したようだな」


「はい。あとは、私たちがやるべきことをやるだけです」


 父は一枚の封筒を差し出した。中には、極秘の情報が収められていた。


「これは、最後の切り札になるかもしれん。使いどころは、君に任せる」


 彩は深く頭を下げ、封筒を受け取った。


「ありがとう、お父様。……必ず、守ってみせます。この国の未来を」


「うむ」


「でも絶対、絶対だよ、彩~~無茶しちゃだめだからね、パパ泣くよ」


(もう、お父さん心配しすぎ。あれで次の総理大臣の本命って、はぁ~日本は大丈夫なんだろうか?)


 そして、夜が明ける

 アルテミス拠点では、メンバーたちがそれぞれの持ち場で最終確認をしていた。


 梓はサーバーの監視ログをチェックしながら、ふと呟いた。


「……徹夜明けのカップラーメンって、なんでこんなに美味しいんだろ」


「それ、毎回言ってるよ」 エマが笑いながら、コーヒーを差し出す。


「でも、今回は特別な味がする気がする」 梓はスープをすすりながら、にやりと笑った。


 宗子は静かに工具を片付けながら、ふと手を止めた。


「……私たち、ここまで来たんだね」


「うん。でも、まだ終わってない」 彩が背後から声をかける。


「最後まで、やりきろう。これは、私たちの戦いだから」


 メンバー全員が頷いた。 それぞれの想いが、ひとつの流れとなって、未来へと向かっていた。


 御厨の失脚から数日。政界と財界は静かに再編を始めていたが、彩たちは気を緩めなかった。 梓が解析していた通信記録の中に、御厨を操っていた“影の存在”の名が浮かび上がる。


「……この名前、見覚えある」宗子がつぶやく。


 それは、かつて父たちが警戒していた国際ロビー団体の幹部だった。


「御厨はただの駒。黒幕はまだ奥にいる」雅が低く言う。


 エマが苦笑する。「また嵐の予感ね。休暇はお預けか」


 彩は静かに頷いた。「でも、ここで止まれない。未来は、まだ守られていないから」


 作戦は、次の段階へと進もうとしていた。 

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